黒部峡谷の気象

黒部峡谷の降水量は、本当に日本一なのですか?

日本一の多降水(雪、雨)地域
 宇奈月町史には、当町域の水は「日本一冷たい水」として記載されていて、また、三重県尾鷲地域と、一、ニを争う日本有数の多降水地域でもあります。それは、当町域も尾鷲と同じく背後に高峻な山岳を持つことが原因であると考えられます。尾鷲の降水量は1954年〜1963年の平均が4,118mm(昭和65年理科年表)あり、黒部ダムの降水量は1954年〜1963年の平均4,926mm もある。(「黒部川」笠原和夫、藤原彬文1966)
 
黒部川流域の年間平均降水量
観測地点 降水量
黒部ダム 4,926mm
黒四〜仙人谷 5,055mm(剣沢の影響)
仙人谷〜小屋平 4,940mm
小屋平〜柳河原 4,596mm
柳河原〜愛本 3,785mm
愛本までの全域 4,785mm
黒部川扇状地 2,991mm
黒部川全域 4,518mm
剣沢 7,902mm
 
上の図によると東部山地では山が高くなるにしたがい雨量が急激に増加しています。黒部峡谷鉄道の小屋平駅(標高535m)や、常願寺川上流の真川(標高1,100m)では3,905mmで、富山市の2.5倍になっている。浄土山頂(標高2,836)では、通年の資料はないが7.8.9月資料では富山市の2.5倍以上である。立山の雷鳥沢から天狗平一帯では年間5,00mm〜6,000mmと推定されます。



冬季の気温と風

 山と谷は一体であり、3,000m級の立山連峰が冬の季節風をさえぎるため、黒部峡谷は冬の季節風に直接さらされないことになります。このため暖温帯性のツガ林が峡谷の岸壁に植生しており、上流部の奥地ではカラマツ、トウヒ、チョウセンゴヨウなどの内陸的な植物も生息しています。冬の季節風は、平野部では南西風ですが、上層部では強い北西風が吹いています。この北西風が立山連峰や後立山連峰に吹きつけると、風衝斜面や稜線部では雪が吹き払われ、むき出した地面が寒風にさらされることになり、このため土壌が凍結し、構造土が発達する厳しい環境となります。積雪のある風衝地では、雪上に出たハイマツやオオシラビソなどは、風のあたる面が生理的乾燥をおこして枯死し、風背部の幹や枝が風下に伸びるという、吹流し型や旗型の変形樹をみせています。

 しかし一方、黒部峡谷に入ると、源流部のどのハイマツも正常に伸びています。いびつな変形樹形は、全く見られなくなり、上流部のオオシラビソ林も同様で、どの木もまっすぐに伸びています。本流と東沢出会いの針葉樹林では、オオシラビソ、トウヒ、コメツガなどが120m以上にも成長し、実にゆったりとした群落を展開しています。立山連峰のオオシラビソ林は、積雪の移動などで発達は不充分で、落葉広葉樹を交えた疎開林ですが、黒部峡谷では見事な森林をつくっています。林内では、倒木したトウヒの大きな幹の上で稚樹が育つという倒木更新も行われています。それほど、黒部峡谷では林が安定しているのです。これが黒部峡谷の植生のひとつの特徴としてあげられ、両岸の立山連峰などの峰々と黒部峡谷の谷底の標高差は、実に1,500m以上にも及び、峡谷はいわば垂直に立てられた二枚の衝立の内側にあるようなもので峡谷内は冬の季節風に直接さらされないためです。



黒部の水(水温)
 
最高になる8月、9月でさえ、13.5℃にすぎず、7月に愛本地点(黒部川扇状地の扇頂部)では11.2℃で、全国河川中最低の温度です。黒部川の水が日本一冷たい理由は北アルプスの万年雪の雪解け水であり、そのうえ谷が深く狭いため、夏でも谷底への日照時間が著しく短いこと、また、発電のための送水用トンネル内を水が通過していること、それに急勾配であることが昇温を妨げるているのです。

 <黒部川の水の色

 水道の蛇口から出る水の色は無色透明なのに、なぜ清流の色は美しいエメラルドグリーンなのか疑問を持つ人が多いのではないでしょうか。

 人間が光を色として感じることができるのは虹の七色、それを可視光線といって、波長の長い順に、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫とならびます。

 日光が水の中に入ると、光の一部分が水の分子(物の元になる一番小さな粒)や小さな混ざり物にぶつかってはね返り、また空気中に戻ってきます。波長が短いほどはね返りが多いので、赤に近い色が消えて青っぽい色だけが目うつります。

 水中の混ざり物が少し大きいものになると、跳ね返る光は必ずしも波長が短いところだけでなくて、もう少し長い波長の色でも空気中に戻り、違う色となりますが、黒部の水は混ざり物も少ないため、青に近い美しい色になっているのです。

 また水は鏡のように空の青、樹々の緑などを映し、花崗岩が多くを占める白い河床の黒部川では、これらがあいまって、時々に違う美しい色を見せてくれるのです。