腐草為蛍(くされたるくさ ほたるとなる)

<小雨にそぼ濡れるホタルブクロ>

6月11日から七十二侯は「腐草為蛍(くされたるくさ ほたるとなる)」で「芒種」の次侯にあたる。草が枯れ、腐って蛍になるという意味。出典は中国古典の菜根譚や江戸時代の歳時記である改正月令博物筌(かいせいげつれいはくぶつせん)。

蛍は土の中でサナギになり地上で羽化するので、草が朽ちて蛍になると考えられた。蛍の異名として「朽草(クチクサ)」とも呼ばれる。梅雨を迎える頃、宇奈月公園ではゲンジボタルが飛び交う頃である。

宇奈月の山道では、小雨に濡れた清楚な白花の蛍袋が下向きに開花する。虫の雨宿りには格好の場所。宇奈月周辺では白花が多く見られるが、山を越えた信州では淡紅紫色になる。蛍袋はキキョウ化の多年草で英語ではベルフラワー、鐘の花。形から納得できる。花の中に蛍を閉じ込めるとその灯りが外へ透けて見える。まさに火垂(ほたる)の所以である。

二輪草(ニリンソウ) キンポウゲ科

<二輪草の群生>

二輪草は、雪解けの宇奈月の落葉樹林内で群落を作るキンポウゲ科の多年草です。

根茎は太くて短く、葉の形状は心状円形で3小葉に分かれ、小葉は3裂して切り込みが複雑なキンポウゲ科の特徴がでています。総苞片は3個で茎の先につき、無柄で3裂します。

総苞片の中心から花柄を2本出して先端に白花を単生します。二輪咲かせるのでなめの由来となっています。

麒麟草(キリンソウ) ベンケイソウ科

<岩場に咲く黄金色の麒麟草>

麒麟草(キリンソウ)は、宇奈月の山地の岩場などに自生するベンケイソウ科の多年草です。

葉は肉厚の倒卵形でまばらに鋸歯があり、基部はややクサビ形で葉柄は無く、互生しています。茎は円柱状で太く、茎頂に黄色の5弁花の小花の密な集散花序を出します。

花の後にできる実は袋果で、熟すと種が岩場に放出され、新たな芽を出します。

笹百合(ササユリ) ユリ科

<容姿端麗で芳香もある笹百合>

笹百合(ササユリ)は、宇奈月の山路の法面や高地の草叢に生えるユリ科の多年草です。

葉は、披針形で細く笹の葉に似ているところが、和名の由来となっています。短い花柄を持った葉を互生し、基部は楔形になっています。

淡桃色の漏斗状鐘形の花を横向きにつけて開花します。笹百合は芳香のある美しい百合です。笹百合の開花場所に近づくと独特の芳香が漂うので、すぐに見つけることができます

蟷螂生(かまきり しょうず)

<雨上がりの鳥足升麻>

6月6日から二十四節気は「芒種」に入る。芒(ボウ)とは、稲や麦などのイネ科の小穂を構成する頴(えい)の先端にある針状の突起のこと。芒種とは、芒を持つ植物の種を蒔く時期と言う意味。

七十二侯は「螳螂生(かまきり しょうず)」で二十四節気「芒種」の初侯にあたる。昨年の秋に草の茎や小枝に生み付けられた螳螂の卵囊が、孵化して幼虫になる頃という意味。この頃から梅の実が黄色く熟してくる。

宇奈月も梅雨入りで、昨年より2日早く本日(6月7日)梅雨入りが発表された。少し雨が上がると黒部の山々の中腹から麓にかけて、薄い雲が棚引き幻想的な風景が生まれる。宇奈月の山路には蛍袋や鳥足升麻が咲き始める。小雨に濡れた山野草は格別な美しさがある。

蛍袋(ホタルブクロ) キキョウ科

<下向きに咲く蛍袋>

蛍袋(ホタルブクロ)は、宇奈月の山路沿いの草叢に自生するキキョウ科の多年草です。

全体に毛が生えていて、根茎は短いですが、長い匍匐枝を横に出して増えていきます。茎は分岐することなく伸びて、茎葉は長卵形で互生し、縁に不揃いな鋸歯があります。

梅雨の時期に、茎頂と上部葉腋に白色の大型鐘状花で下向きに開くので、虫達がよく雨宿りします。花の内面に紫斑があり、先が5裂で、緑色の蕚も5裂ですが、その上部だけが反り返ります。

宇奈月ではほとんどが白花ですが、山を越えた長野県では赤紫色の山蛍袋(ヤマホタルブクロ)が多く、蕚の上部は反り返りません。

田虫葉(タムシバ) モクレン科

<葉よりも早く花が咲きます>

田虫葉(タムシバ)は、宇奈月の高い山に生えるモクレン科の落葉小高木です。春山の僧ケ岳登山道の標高1200m地点で、よく見かけます。その純白の花は、残雪を纏った黒部の山々と青い空によく映え、まさに北国の春です。日本海側に多く分布します。

葉は広披針形で薄い用紙質となり、下面は紛白色です。噛むと甘く芳香があるところが和名の由来となっています。コブシの近縁で、葉よりも早く花が咲きます。

矢車草(ヤグルマソウ) ユキノシタ科

<ひときわ目立つ大形の花、矢車草>

矢車草(ヤグルマソウ)は、宇奈月温泉の深山に自生するユキノシタ科の大形の多年草です。 高さが1m近くになるので目立ちます。

根出葉は50cmぐらいの葉柄があり、5枚の小葉からなる掌状複葉です。この葉の形が矢車に似ていることから、名前の由来となっています。

花は小さく花弁が無く、蕚片が白色長卵形で長く伸びた基部に集散円錐花序をつけます。その甘い香りで多くの虫たちを集めます。

大根草(ダイコンソウ) バラ科

<草叢に群生する大根草>

大根草は宇奈月の山道沿いに自生するバラ科の多年草です。

冬期間、根生葉がロゼット状に地表に広がり、大根の葉の形に似ています。 大根はアブラナ科なので科が違い、全く異質です。 茎はまばらに分岐して枝先に五角錐の蕾を1個つけ、上部から順次黄色に開花します。

5個の萼裂片は花時には反曲し、5枚の花弁はほぼ円形で、雌しべ雄しべともに多数あります。 白い花の岡虎の尾や蛍袋によく合います。

赤升麻(アカショウマ) ユキノシタ科

<甘い香りで昆虫たちを集める>

赤升麻は、宇奈月の山路の法面や林縁に自生するユキノシタ科チダケサシ属の多年草です。

茎は鳥足升麻より小型で30cmから80cmで、基部には褐色の鱗片状の毛が多くつき、その色から和名が付けられています。葉は、3回3出複葉で光沢が無く重鋸歯です。小葉は卵型で先端が尖っています。

5月の末から茎頂に複総状花序を出して白色の小花が密に並んで付きます。葉の柔らかな緑色が白い花を一層引き立たせます。花序の側枝は分岐しないため花序全体がまばらに見えます。花は小柄を持ち5弁花を沢山つけます。鳥足升麻より早く花をつけます。