玄鳥去(つばめさる)

<田渕俊夫:令和2年院展出品作>
9月17日から七十二侯は「玄鳥去(つばめさる)」で、二十四節気の「白露」の末侯にあたる。春に日本にやってきた燕が暖かい南の国へ帰る頃という意味。 19日は秋彼岸の入り。暑さ寒さは彼岸までの言葉通り、燕の渡りが始まる。燕がやってくるのは七十二侯の「玄鳥至(つばめきたる)」で、今年は4月4日だった。宇奈月温泉で飛び交う燕は、岩燕で尾羽が短くやや小型である。 

岩燕が去る頃、温泉街では毎年、宇奈月モーツアルト音楽祭が行われる。昨年は9月14日から16日の3日間行われ、温泉街がモーツアルトの調べに包まれた。豊かな自然に恵まれた、山あいの出湯ならではの情緒である。今年は残念ながらコロナ禍により中止となる。

 セレネ美術館では昨年、田渕俊夫画伯の展覧が、10月14日まで開催された。田渕画伯は、昨年の「大嘗祭の大饗の儀」で披露された悠紀地方風俗歌屏風・春夏・秋冬を描かれ、今最も注目されている画家である。日本美術院理事長の要職に在り、研ぎ澄まされた感性で宮中にふさわしい貴賓ある風景画を制作された。今年の院展出品作は、その奉納作品の構図である。雄大な滝と桜が押し寄せてきます。

今年の展覧会は、昨年明治神宮の内陣に収められた屏風を制作された手塚雄二展を企画していたのだが、これもコロナ禍で中止となる。来年はぜひ実現し、質の高い芸術作品に触れていただきたいと願っている。これからは徐々に秋が深まり、月影さやかな好季を迎える。