木五倍子(キブシ) キブシ科

<早春の宇奈月谷で開花するキブシ>

木五倍子(キブシ)は、早春の宇奈月谷でよく見かけるキブシ科の雌雄異株の大形落葉低木です。藤のような花序に黄花が付くので黄藤(キフジ)ともいいます。

前年の秋に枝の葉腋から総状花序をたらし、出葉前の4月ごろに一面に開花します。花は鐘形で雄花は淡黄色で雌花はやや緑色を帯びています。和名は、秋に熟す緑黄色の果実を染料の原料である五倍子(フシ)の代用として使ったことに由来します。朝山歩きをすると自然の息吹が感じられます。

雷乃発生(かみなりすなわちこえをはっす)

<雪解けの落葉樹林内に咲く菊咲一華>

3月30日から七十二侯は「雷乃発生(かみなりすなわちこえをはっす)」で、二十四節気「春分」の末侯にあたります。不安定な春の空に雷が鳴り始める頃と言う意味です。かつては春の雷は、恵みの雨を呼ぶ兆しとして人々が待ち望んだようです。

宇奈月温泉街は、コロナウイルスの影響で静寂さそのものです。朝の露天風呂から、残雪の多い稜線を望むことができます。風呂に浸かりながらの山々の対峙は、至福のひと時です。宇奈月温泉の入り口を滝のように流れ落ちる渓流は、宇奈月谷です。谷を流れる雪融け水は、これから日一日と勢いを増します。谷沿いの雪が消えた落葉樹林の中に分け入ると、可憐な水色の花が咲き誇っています。キクザキイチゲ(菊咲一華)です。雪融けの大地に一番早く開花させる花です。

岩団扇(イワウチワ) イワウメ科

<雪が解けた岩場に咲く岩団扇>

岩団扇(イワウチワ)は、宇奈月の深山の岩場や落葉樹林下のやや湿ったところで見られるイワウメ科の多年草です。

雪が解ける頃、葉脈から花茎が伸びて一輪の薄紅色の花をつけます。葉は円形で端は小さな鋸状で、基部が深くはハート型となっています。春山登山で岩場の上部から岩団扇の花が回転しながら落下するのを目にすることがあります。

和名の由来は、岩場に生え葉は革質で厚く光沢があり、形が団扇に似ていることによります。宇奈月温泉では町の花として親しまれ、宇奈月音頭や宇奈月小唄にも歌われています。



菊咲一華(キクザキイチゲ) キンポウゲ科

<赤みがかった葉で、白花の菊咲一華>

宇奈月の原野の雪が融け始めると、先ず開花するのは菊咲一華(キクザキイチゲ)で、キンポウゲ科の多年草です。宇奈月では白や淡紫色の花が多く、まれに淡紅色も見られます。

暖かくなると花が開き、夜や雨の時は気温が下がるので花を閉じます。上部に三枚の苞葉が輪生し、深く切れ込んだ葉はキンポウゲ科の特徴が出ています。多雪地の山地で普通に見られる可憐な花です。落葉樹林内でもよく見かけます。菊に似た花を一輪つけることが和名の由来となっています。

鼠志野草紋高台皿

<厚い胎土で大ぶりな器>

早春の山菜の苦みは、揚げることによって和らぎます。タラの芽は甘みが出てきます。天ぷらで春の香りを味わいます。

季節の器は、「鼠志野草紋高台皿」です。土の柔らかさと優しさが感じられる、厚みのある高台皿です。掻き落とした箇所が白く残っています。

志野は桃山時代に美濃で焼かれた長石釉を掛けた焼き物です。茶陶としての志野は、技法によって無地志野、絵志野、紅志野、赤志野、鼠志野、練り上志野に分類されます。

桜始開(さくらはじめてひらく)

<桜、桜、桜の室礼>

3月25日から七十二侯は「桜始開(さくらはじめてひらく)」で、二十四節気「春分」の次侯にあたります。宇奈月温泉では、山々から吹き下ろす風はまだ肌寒く、桜の蕾はまだ堅しです。延楽のロビーでは桜一色の室礼で、ギャラリーの日本画の展示作品も、題材は桜です。

松岡映丘の「東海の図」では、彼方の海原に朝日が昇り、春霞棚引く山々と手前に松と桜の大樹を配し、波の穏やかな漁村風景を題材にした作品である。児玉希望の「芳埜」は、吉野の山々の桜を気品ある色合いで優雅に描いた大作です。児玉希望の「浅春」は、岩を喰む急流と訪れの遅い峡谷の春を表した作品で、黒部峡谷を思わせる景です。その他、東京藝術大学で松岡映丘の指導を受けた山口蓬春の「山佐久良」、同じく杉山寧の「春靄」の作品は、春の香りを漂わせてくれます。いよいよ春霞と、遠山桜の取り合わせが美しく映える季節となります。

色絵綾文皿

<蛍烏賊と白海老>

宇奈月温泉の早春の調べは、蛍烏賊と白海老によって運ばれます。どちらも今が旬で生姜醤油でお召し上り下さい。宇奈月周辺の山々では山菜の芽吹きが始まります。

季節の器は「色絵綾文皿」です。春は爽やかな萌黄色です。須田菁華の作品です。現在は四代目です。

乾山写桜絵向付

<桜鯛の炊合せ>

3月25日から七十二侯は、桜始開(さくらはじめてひらく)です。巷では、桜の開花が話題になり、桜餅が菓子舗の店先に並ぶ頃でもあります。

富山湾ではホタルイカ、サヨリ、アイナメ等が旬を迎えます。なかでも桜の季節は何といっても、桜鯛が美味しくなります。雅膳の一皿は、桜鯛の炊合せです。添える新牛蒡も春の香です。

季節の器は、「乾山写桜絵向付」です。器の外側も見込みも桜が満開です。

染付桔梗千筋七寸皿

<手書きの妙、千筋の平皿>

早春の割鮮は、細魚、アオリイカ、あら、鮪、甘えびと春の香りを伝えます。ホタルイカも美味しい季節です。染付の千筋の平皿に盛ると映えます。

季節の器は、「染付桔梗千筋七寸皿」です。桔梗の形を何重にも線だけで表現しています。まさに職人技です。季節は秋の花ですが、通年使いたくなる器です。

ホタルイカ釜揚げ

<熱々の内臓が旨い>

富山湾の春の風物詩であるホタルイカは、優美な流線型で透き通った薄茶色の可憐な姿をしています。漁は、底引網漁と違って資源に優しい定置網漁業で水揚げされます。網を上げるときに一斉に青白く光るところが名前の所以です。

お造り、酢味噌和え、天婦羅、多彩な料理法がありますが、特にお薦めなのが釜揚げす。アツアツの脂ののったオレンジ色の内臓が格別です。富山の地酒が一段と味を引き立ててくれます。