花乳茸挿(ハナチダケサシ) ユキノシタ科

<赤升麻よりも小型>

花乳茸刺(ハナチダケサシ)は、宇奈月の深山の樹林の縁に生えるユキノシタ科の多年草です。

本州の中部地方の山地や亜高山の樹林内に分布する日本固有種です。分類上は赤升麻(アカショウマ)の変種とされ、茎が赤いという赤升麻の特徴が良く出ています。葉は、赤升麻同様互生し3回3出複葉で、小葉は卵型で縁には重鋸歯があります。茎先によく枝分かれした円錐花序を出し、白色の小花を数多くつけます。その甘い臭いに誘われて多くの虫達が群がります。

チダケとは茸のことで、傷をつけると白い乳液が出るので乳茸とよばれています。和名は、茸を本種の茎にさして持ち帰ったことが由来となっています。

桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)

<桐の花が実を結ぶ頃>

7月23日から二十四節気は「大暑」となります。暑さが最高潮を迎えるころで、いにしえ人は、軒先に風鈴を下げて音で涼を感じとりました。また窓には葦簀をかけて日差しを避け、路地には打ち水をして、川には川床を設え、夜には船を浮かべて川風に当たるなど、豊かな感性で自然の中に涼を求めました。先人たちの知恵で生まれた納涼文化は大切にしたいものです。

今年は例年より早く梅雨が明けました。七十二侯は、「桐始花結(きり はじめて はなを むすぶ)」で、二十四節気「大暑」の初侯にあたります。春に開花した桐の花が大暑に入り、実を結ぶ頃という意味です。

桐は、キリ科の落葉広葉樹で宇奈谷沿いや宇奈月温泉上流のうなづき湖の湖畔に多く見られ、五月中旬には薄紫の筒状の花が開花します。大暑に入ると卵形で茶色の実を付けます。高木は枝を大きく伸ばし、広卵形の大きな葉を多く付けるので、涼しげな木陰を提供してくれます。

桐は、古くから鳳凰の止まる木として神聖視されてきました。花札の桐と鳳凰の図柄もこの伝説からきています。桐紋は菊の御紋に次ぐ高貴な紋章として皇室で受け継がれ、日本国政府の紋章として使用されています。

糊空木(ノリウツギ) ユキノシタ科

<両性花に虫たちが集まる>

糊空木(ノリウツギ)は、宇奈月の山野に生えるユキノシタ科、アジサイ属の落葉低木です。

樹高は2~7mくらいになり、よく分枝しますます。葉は、大きく卵形で葉柄があり対生し、縁は鋸歯状になります。7月、新梢の先に白色の小さな両性花が多数つく円錐花序を付けます。その中に花弁4枚の大きな装飾花が混ざります。

和名は、樹液を和紙を漉く際の糊に利用したのと、枝が空木に似ていることに由来しています。別名ノリノキとも言います。宇奈月の登山道でよく見かけ、雨に濡れた白い装飾花がひときわ目立ちます。 小さな両性花に、ハナカミキリやハナムグリ等の訪花性の昆虫が多く集まります。