雷乃発生(かみなりすなわちこえをはっす)

<雪解けが進み、琴音の滝の水量が増えてきます>

3月30日から七十二侯は「雷乃発生(かみなりすなわちこえをはっす)」で、二十四節気「春分」の末侯となります。不安定な春の空に雷が鳴り始める頃と言う意味です。かつては春の雷は、恵みの雨を呼ぶ兆しとして人々が待ち望んだようです。

延楽は、朝の露天風呂から残雪が少し残る稜線を望むことができます。風呂に浸かりながらの山々の対峙は、至福のひと時です。宇奈月温泉の入り口を滝のように流れ落ちる渓流は、宇奈月谷です。谷を流れる雪融け水は、これから日一日と勢いを増してきます。

谷沿いの雪が消えた落葉樹林の中に分け入ると、様々な山野草の芽が出ています。まもなく可憐な花のキクザキイチゲ(菊咲一華)が現れます。雪融けの大地に一番早く開花させる花です。

染付山水七寸皿

<のど黒煮付け>

富山湾が春めいてくると、形の良い、のど黒があがります。脂ものって最高級です。お造り、しゃぶしゃぶと料理も多彩です。今回は煮付けがお勧めです。甘く焚いて脂ものって。地酒がすすみます。

季節のうつわは「染付山水七寸皿」で、初代三浦竹泉の作品です。酸化コバルトの濃淡で山水を描いています。染付は中国や朝鮮では青花と呼ばれています。

姫踊子草(ヒメオドリコソウ) シソ科

<群生する姫踊子草>

姫踊子草は、宇奈月温泉街の道ばたに群生し、普通に見られる越年草で帰化植物です。

茎は、シソ科の特徴である方形で直立し、短い毛があります。葉は対生し、茎の下部では長い柄があって円心形です。上部は卵円形で葉柄が短く密に詰まり、赤紫色になることが多いです。花冠は、淡紅色で唇の先が2裂する二唇系で、葉の脇から放射線状に外側に向かって開きます。

これとよく似ているシソ科のホトケノザは、葉の形が半円形で蓮台のようになっていますので、容易に見分けがつきます。

色絵桜透向付

<春野菜の焚き合わせ>

富山湾でホタルイカ漁が最盛期を迎えると、宇奈月の山では、雪解けの大地から山菜が顔を出します。早春の恵みです。春野菜の焚き合わせの中にウルイ、ウド、筍等などの山菜が加わります。春の香りをお楽しみください。

季節のうつわは「色絵桜透向付」で、江戸後期の京焼の名工である仁阿弥道八の「色絵桜樹図透鉢」の写しです。匠に配された透かしは絶妙に満開の桜の空間を作り出します。
道八も乾山焼に倣っています。器でも桜の季節が味わえます。

深山寒菅(ミヤマカンスゲ) カヤツリグサ科

<林の斜面に多く見られる>

深山寒菅(ミヤマカンスゲ)は、宇奈月の山地の樹林内に生えるカヤツリグサ科の多年草です。根茎はやや伸長して叢生します。 宇奈月のような多雪地では、伸長した根茎が数年分残り放射線状に株が繋がります。

葉の基部の葉鞘は、紫褐色で光沢があります。葉は幅5ミリ前後の線形で、やや柔らかく光沢のある濃緑色で縁はわずかにざらつきます。開花時期は4月から6月ごろ、小穂を直立させて上部に雄花を沢山つけます。

色絵枝垂桜蓋物

<ほたるいかのお造り>

桜が開花すると、富山湾では白海老漁やホタルイカ漁で賑わいます。ホタルイカは、お造りや釜揚げが最も美味しくなる頃です。

ホタルイカは可憐な生き物で、青白く発光するので見る人を魅了する。 体型が優美な流線形で、体色が透き通った薄茶色のホタルイカの造りは独特の甘みがある。ゲソだけを刺身にした「竜宮素麺」も絶品です。スッキリとした地酒「勝駒・純米吟醸」が合います。

季節のうつわは「色絵枝垂桜蓋物」です。蓋の部分に桜が繊細に書き込まれ、雅膳に相応しいうつわとなっています。。

仁清色絵雪月花七寸皿

<鮑香煎揚>

鮑の美味しい季節になりました。お薦めは鮑香煎揚です。雅膳の一皿です。柔らか煮とは一味違う旨味が味わえます。今が旬のアスパラの素揚げを添えて、お召し上がりください。

季節のうつわは「仁清色絵雪月花七寸皿」です。金彩で雪輪、赤絵で桜、皿全体を月に見立て雪月花を表しています。縁に金彩の雲をかけてありますので、落ち着いた気品のある七寸皿になっています。

乾山写桜絵向付

<桜鯛の炊合せ>

3月26日から七十二侯は、桜始開(さくらはじめてひらく)です。今年の開花は例年より早く地域によってはピークを過ぎているところもあるようです。

富山湾ではホタルイカ、サヨリ、アイナメ等が旬を迎えます。なかでも桜の季節は何といっても、桜鯛が美味しくなります。雅膳の一皿は、桜鯛の炊合せです。添える新牛蒡も春の香です。

季節のうつわは「乾山写桜絵向付」です。器の外側も見込みも桜が満開です。

桜始開(さくらはじめてひらく)

<ロビーの桜の室礼>

3月26日から七十二侯は「桜始開(さくらはじめてひらく)」で、二十四節気「春分」の次侯になります。富山市の桜の名勝松川縁は、今が見ごろとなりました。

宇奈月温泉は、山々から吹き下ろす風はまだ肌寒く、桜の蕾はまだ堅しです。ギャラリーの日本画の展示作品の題材は桜です。

松岡映丘の「東海の図」では、彼方の海原に朝日が昇り、春霞棚引く山々と手前に松と桜の大樹を配し、波の穏やかな漁村風景を題材にした作品です。児玉希望の「芳埜」は、吉野の山々の桜を気品ある色合いで優雅に描いた大作です。同じく児玉希望の「浅春」は、岩を喰む急流と春の訪れが遅い峡谷を描いた作品で、黒部峡谷を思わせる景です。

その他、東京藝術大学で松岡映丘の指導を受けた山口蓬春の「山佐久良」は春の香りを漂わせてくれます。春霞と遠山の取り合わせが美しくなる頃となります。

染付桔梗千筋七寸皿

<手書きの妙、千筋の平皿>

早春の割鮮は、細魚、アオリイカ、あら、鮪、甘えびと春の香りを伝えます。ホタルイカも美味しい季節です。染付の千筋の平皿に盛ると映えます。

季節の器は、「染付桔梗千筋七寸皿」です。桔梗の形を何重にも線だけで表現しています。まさに職人技です。季節は秋の花ですが、通年使いたくなる器です。