備前手付小向付

<ふぐの白子塩焼き>

冬型の気圧配置が強まり、宇奈月は大雪なります。滞在のお客様が多いこの時期、ふぐは欠かせません。津和井蟹、寒鰤、のど黒の料理にふぐが加わります。先付は、白子塩焼きです。やはり熱々のふぐの白子は格別です。

季節の器は、「備前手付小向付」です。備前焼は岡山県伊部を中心に、平安末期から連綿と焼き上げられている焼き締めの陶器で、伊部焼とも呼ばれています。中世六古窯の一つで、江戸初期以前の物は古備前と呼ばれています。釉薬を一切使わず酸化焔焼成によって固く焼しめられ、窯変によって生み出される模様が面白い。

色絵祥瑞梅樹文皿

<見込は市松模様と松竹梅>

のど黒会席の一皿は、のど黒の塩焼きです。大形ののど黒は、数が少なく希少価値があります。うま味のある脂がのり、しゃぶしゃぶや塩焼きに最適です。あしらいに珍味の干口子を添えます。口直しに黒豆を。

季節の器は、「色絵祥瑞梅樹文皿」で、三代須田菁華の作品です。祥瑞は、明代末期の嵩禎年間(1628~44)頃に、日本の茶人の注文によって景徳鎮で焼造された染付磁器です。文様構成に赤、緑、黄で色絵をつけたものが色絵祥瑞です。梅樹文皿の見込みは、下半分を梅樹文、上半分を市松に区画し、その中を幾何学模様で埋め、蘭と梅の花を白抜きで表しています。皿の縁は幾何学模様と松竹梅を描いています。本歌は、出光美術館等が所蔵する「色絵祥瑞輪花絵替向付」です。

染付梅中皿

<落ち着いた色合いの染付>

雅膳の滞在料理の一皿です。宇奈月温泉は、山間ながら富山湾まで車で30分の距離なので、新鮮な魚介類が料理に使われます。滞在料理はお客様の希望で鰻の棒寿司です。

季節のうつわは「染付梅中皿」で、永楽妙全の作品です。たっぷりと呉須を使って見込みに梅が描かれています。落ち着いた色合の染付で、妙全らしさが出た美しく優しい仕上がりです。

仁清写色絵七宝紋蓋向

<鰆の煮つけ>

立春の末候ともなれば日足も少しづつ長くなります。確実に春の兆しが感じられるようになりました。北陸ではこれから鰆が旬を迎えます。料理法も多彩でお造り、西京漬け、塩焼き、棒寿司など脂がのって美味しくいただけます。漁獲量をみても北陸が全国でもトップクラスで、特に福井県、石川県の漁獲量が多くなっています。

季節の器は、「仁清写色絵七宝紋蓋向」です。七宝紋とは一つの円に対して四方から円を組み合わせ、それぞれ四分の一の円が重なり合わないようにした輪違い文です。七宝は仏教の七つの宝のことで金、銀、瑠璃、珊瑚、瑪瑙、真珠をさします。磁器では、江戸時代以降に使われるようになりました。

赤絵玉堂佳器向付

<玉堂佳器>

寒さが厳しくなると根菜類の甘みが増してきます。冬の根菜類は出汁を効かせて含め煮にします。雪景色の中では赤絵の器が似合います。

季節の器は、「赤絵玉堂佳器向付」です。玉堂佳器とは、明時代の啓徳鎮の作品などにみられる銘です。立派な建物に佳い器を意味する吉祥句で、古伊万里などに見られます。

魚上氷(うおこおりをいずる)

<黒部川にそそぐ琴音の滝>

2月14日から七十二侯は、「魚上氷(うおこおりをいずる)」で、二十四節気「立春」の末侯になります。春の兆しを感じて魚が動き始め、割れた氷の間から飛び出す頃という意味です。

宇奈月温泉は、冷え込む夜半に雪が舞い稜線は薄っすらと雪化粧。黒部川は凍らずに渓流となって流れています。宿の対岸に、良い形の釜を備えた滝があります。宿の創業者が親しかった中川一政画伯のお気に入りの滝で、「琴音の滝」と名付けました。滝釜から黒部川に流れ落ちる清流の岩陰に、山女魚の稚魚が春めく時を待っています。その内の降海型の山女魚が1年川で過ごして海へ落ちます。さらにはシベリア近くまで行き、やがて大きな桜鱒となって戻ってきます。

織部入隅角蓋物

<はちめ煮付け>

富山湾に柳鉢目が水揚げされるようになりました。2月から4月にかけ漁が最盛期を迎えます。くせのない白身で、焼き物、煮物、揚げ物などの美味しい肴になります。地酒は「千代鶴・純米吟醸」のぬる燗がおすすめです。季節の器は、「織部入隅角蓋物」です。

織部焼は、慶長年間から寛永年間に美濃で焼かれた、斬新奇抜な加飾陶器の総称で、その技法によって分類されます。緑釉を総掛けしたものは「総織部」、緑釉と鉄絵の組み合わせたものは「絵織部」、赤土上に鉄絵、白土上に緑釉を施したものは「鳴海織部」、赤土上に白泥鉄絵を組み合わせたものは「赤織部」、志野風の絵付けのものは「志野織部」と分類されます。これに形が取り入れられますので、多種の織部の器が生まれます。

鉄釉着彩福字六寸皿

<旨味凝縮の唐揚げ>

雪景色が美しいこの時期は、連泊されるお客様が多くなります。滞在料理は料理の内容は勿論の事、器もすべて変えます。その中の一品の揚げ物は「ふくの唐揚げ」です。

季節の器は、「鉄釉着彩福字六寸皿」で、魯山人写しです。福福で楽しくなります。

仁清色絵梅絵六寸皿

<紅梅開花の便りが届く>

富山県内では内山邸の梅が最も早く開花します。今年も立春の日に開花しました。早咲きの「八重寒紅」です。器でも梅を愛でたいものです。

季節の器は、「仁清色絵梅絵六寸皿」です。紅梅と白梅がバランスよく配してあります。

黄鶯睍睆(うぐいすなく)

<安田靫彦「春到」>

2月9日から七十二侯は「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」で、二十四節気「立春」の次侯になります。山里に春を告げる鶯が鳴く頃と言う意味です。宇奈月温泉周辺では3月初旬から中旬になりそうです。睍睆とは声の美しい様子を表す畳韻の擬態語で、畳韻とは韻が同じ漢字2文字を重ねることとあります。

今年は年初から大雪で、宇奈月温泉スキー場には十分に雪があります。今日から大陸からの寒気団が再び南下し、数日寒い日が続くようですが長続きはしません。明け方の雪は、山一面に雪の花を咲かせ稜線が幻想的に見えます。山水画のような景色を眺めながら露天風呂に浸かると、まさに至福のひと時です。

ギャラリーでは、安田靫彦の「春到」が展示されています。まだまだ寒き中、においを漂わせるのが白梅です。画伯は、ご自宅の庭の花をつけた梅ケ枝を、多く描かれました。富山気象台から開花宣言が出されるのはもうすぐです。