三葉躑躅(ミツバツツジ) ツツジ科

<黒部峡谷の断崖に咲く三葉躑躅>

三葉躑躅(ミツバツツジ)は、黒部峡谷の岩場や痩せた尾根に自生するツツジ科の落葉低木です。

4月から5月にかけて峡谷や山の岩場を美しく彩ります。 枝は車状に出て、枝先の混芽から2、3個の紅赤色の花を付け、葉は後にでます。花冠は、深く5裂し雄蕊は5個なのに対して、一般の躑躅は10本なので見分けがつきやすいです。 花が終ると枝先に3枚の葉が輪生するところからこの名が付きました。

早朝ウォークのコースの中で、山彦鉄橋を渡りきると岩場の上部で花を見かけます。新緑の中に紅をさす色合いは、春ならではの光景です。

緑彩八ツ橋向付

<春の彩と香り>

雅膳の一皿は、氷見牛の炙りです。柔らかくて旨味のある氷見牛は、宇奈月ビールと合います。宇奈月周辺の山野には山菜が芽吹いています。山菜の柔らかな新芽と、爽やかな苦みを併せてお楽しみください。

季節のうつわは、「緑彩八ツ橋向付」です。萌黄色の緑彩は、新緑の黒部の山々を表しています。黒部峡谷鉄道で新緑と残雪の山々の景色がご覧いただけます。

牡丹華(ぼたんはなさく)

<牡丹:松尾敏男>

4月30日から七十二侯は「牡丹華(ぼたんはなさく)」で二十四節気「穀雨」の末侯となります。百花の王である牡丹が大輪の花を咲かせる頃という意味です。牡丹は、俳句では夏の季語で、春の終わりを惜しむように咲き、夏への橋渡しをしてくれます。宇奈月温泉は牡丹の開花にはまだ少し早いようです。

延楽は日本画壇の先生達がよく逗留される宿でした。日本美術院の堅山南風先生も常連で、そのお弟子さん達の作品も多く残っています。とりわけ松尾敏男画伯の「牡丹」は気品があり展示すると周りが華やかになります。本日からロビーに展示されます。

宇奈月温泉は山から吹き下ろす朝風は、まだ肌寒く雪が残った山肌と麓の新緑が、目に優しいコントラストを作り出します。雪が消えた原野には片栗(カタクリ)や黄華鬘(キケマン)の群生が現れ、春の陽光を浴びて一斉に花開します。時折、鶯の鳴き声が心地よく響きます。5月2日は、立春から数えて88日目となります。「夏も近づく八十八夜」です、夏がすぐそこまでやってきています。

一人静(ヒトリシズカ) センリョウ科

<樹林内でひっそりと咲く一人静>

一人静(ヒトリシズカ)は、宇奈月の山林内に生えるセンリョウ科の多年草で、日本固有種です。根茎から地上に出る茎は直立し、その先に1本の穂状花序を出します。小さな白い花糸からなる姿が名前の由来です。

頂部の 輪生しているかのように見える4個の葉は、対生する2組の葉からなり、縁には鋸歯があり光沢があります。「万葉集」や「古事記」には「次嶺(つぎね)」と表記されています。幾つもの山を越えたところにある事に由来しているようです。 穂状花序が2本の二人静(フタリシズカ)はこの後、咲き始めます 。

木通(アケビ) アケビ科

<新緑の若葉と薄紫の花が美しい>

木通(アケビ)は、宇奈月の山中で見られるアケビ科の落葉性木本です。 アケビのように地上部が多年にわたって繰り返し開花、結実し、茎が木化し肥大成長した物を木本(もくほん)といいます。これに対して地上の茎の木部があまり発達せず、1年から数年で枯れる植物を草本(そうほん)と言います。

蔓は左巻きに他の木に絡み成長します。 花は短枝から総状花序を下垂し淡紫色の小花を開かせます。 葉は五個の掌状複葉で、まれに七葉のアケビも見られます。 三葉の物は三葉木通(ミツバアケビ)で、紫褐色の花はお茶花として好まれています。

高麗色絵八ツ橋蓋向

<のどぐろと春野菜の炊合>

富山湾の生地沖で獲れるのど黒は、形が大きくて脂がのっているので人気があります。 刺し網で丁寧に水揚げするので味は格別です。のど黒と春野菜の焚合せは 「延楽・のど黒会席」の一品です。

季節のうつわは「高麗色絵八つ橋蓋向」です。菖蒲が金彩の縁取りで、華麗に描かれています。明治初期にアメリカ人のフェノロサーやビゲロー等を魅了してやまなかった京焼です。

春虎の尾(ハルトラノオ) タデ科

<樹林内に可憐な花をつける春虎の尾>

春虎の尾(ハルトラノオ)は、宇奈月の湿った落葉樹林内に自生するタデ科の多年草です。

花は、高さ10cm位の花茎の先に密な花穂をつくり、白色でわずかに淡紅色をおびています。和名は、 花穂を虎の尾に見立て春早く咲くところに由来します。 地下茎は、横に這って所々膨らみ、根出葉は長楕円形で長い柄があります。花茎の基部の葉はやや心形型です。

宇奈月の樹林内で、かたくりの群落の中にまとまって咲いているのをよく見かけます。この山野草も初夏には姿を消してしまうスプリング・エフェメラルの一種です。

渕赤七宝紋皿

<山菜とホタルイカの天婦羅>

宇奈月の野山は、山菜取りの季節になりました。残雪が融けだすとワラビやウド、コゴミゼンマイ、タラノメ、ススタケ、ウルイなどが現れます。山菜の苦みは、油で揚げることによって食べやすくなります。ホタルイカのワタは油で揚げると格別のうまみが出ます。春の香りを天婦羅でお楽しみください。

季節の器は、「渕赤七宝紋皿」です。白磁に赤の彩色が映えます。

仁清色絵桜向付

<春の香り>

ホタルイカの釜揚げは、格別の味わいがあります。特に大形のものは内臓がたっぷりで濃厚な味わいがあります。辛子味噌でさっぱりと味わってください。

季節のうつわは「仁清色絵桜向付」です。富山湾の春の香りが味わえます。