令和記念特別展「田渕俊夫・至極の日本画」

<黒部川扇状地>

今回のポスターに使用された作品「大地(黒部川扇状地)」は、洪水の繰り返しで形成された大地で、水は人間にとって両刃の刃であることを物語っている。治水という名のもとに治めた黒部川であるが、俯瞰して見ると河道には幾筋にもうねりがあり、四十八ヶ瀬を作り出した暴れ川の力が潜んでいるようにも見える。

画伯は、黒部の自然をテーマにした、数々の作品を発表された。黒部の水の作品が多い。人が大自然の中に造った横坑。厳冬期には、その傷を癒すかの如く清水がゆっくりと染み出て落ちて「氷筍」となっていく。水の優しさである。「黒部ダム」によって湛水された水が電気を生み出す、水の力強さ。氾濫を引き起こす水のうごめくエネルギーが伝わる「大地(黒部川扇状地)」。黒部の急流が作り出した「S字峡」と「十字峡」等の名品が展示された。その名品からは、人と自然との共生の大切さが伝わってくる。

湯鏡に映る紅葉

宇奈月温泉周辺の紅葉の見ごろは、11月7日前後と予測します。その頃の総檜風呂「華の湯」に映り込む、紅葉の湯鏡です。昨年撮影したものです。

連日、寒い日が続くと、紅も色鮮やかになります。峡谷に水鳥が飛来し、川の流れに乗って遊ぶ時が見頃となります。

山々が初冠雪で白く輝き、空の青、峡谷の淵の玉露色、川原の白い石と自然色の美しさが堪能できるのも、黒部の魅力の一つです。これに紅葉が加わると黒部の三段染め、五段染めになります。

令和記念特別展「田渕俊夫・至極の日本画」

<1993年院展出品作「刻」>
令和記念特別展「田渕俊夫 至極の日本画」より

田渕俊夫画伯の令和記念特別展も、いよいよ終盤を迎える。今回の秀作の中でもとりわけ目を引くのが、1993年院展出品作「刻」で、冬の函館山から、街の明かりが徐々にともり、日が暮れようとしている刻を捉えた名作である。

そこには、街の建物が詳細に配置され、無数の明かりが描かれている。函館山を包む、北の大地の冷え切った空気感も伝わってくる。画伯は昼から山に登り、寒さに耐えながら、明かりが少しずつ点灯していく様を捉えられた。

会期は10月14日迄。