款冬華(ふきのはなさく)

<蕗の薹>

1月20日から二十四節気は「大寒」に入る。

冬の最後の節気で寒さは一段と厳しくなる。冬至を過ぎてから太陽の光は少しずつ力強さを増してくるとはいうものの、宇奈月ではこれから寒気が停滞する。

七十二侯は、「款冬華(ふきのはなさく)」で二十四節気「大寒」の初侯。款冬(カントウ)とは蕗のことで、今年は宇奈月では積雪が全くなく黒部川扇状地の土手では、蕗の薹が顔を出す。雪の下の蕗の薹は苦みが柔らかく、天婦羅やふき味噌で早春の香りを味わう。

一方、富山湾では雌の香箱蟹が資源保護のため1月20日から禁漁となる。雄の津合井蟹漁は、これから最盛期を迎える。富山湾は、浅瀬から深海に至るまで多種多様な魚が生息するので天然の生簀と呼ばれ、豊富な旬魚を提供してくれる恵の海である。

雉始雊(きじはじめてなく)

<昨年の宇奈月温泉雪のカーニバル・左義長>

1月16日から七十二侯は、「雉始雊(きじはじめてなく)」で、二十四節気「小寒」の末侯。雉子の求愛が始まる頃という意味。

雉の雄は雌を呼び込むために甲高い声で鳴く。宇奈月は今年は暖冬で、温泉街には雪が全くない。下流の黒部川扇状地では雉の求愛行動が活発化する。昨日は、松の内の終わりの日。松の内が終わるのは地域によって異なるが、延楽は、1月15日。正月飾りを取り外して左義長の日まで大切に保管する。

2月1日は、宇奈月温泉雪カーニバルが行われ、花火の点火に先駆けて宇奈月公園で左義長が行われる。炎が勢いよく空に舞い上がり、歳神様もその炎に乗って天に帰るとされる。竹の炸裂音から、どんど焼きとも言う。

水泉動(しみずあたたかをふくむ)

<水鳥が飛来する黒部川>

1月11日から七十二侯は、「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」で、二十四節気「小寒」の次侯。冬至から甦った陽光によって、地面が少しづつ温められる。「水泉」とは、湧き出でる泉の意味で、地中で凍っていた泉水が、ゆるやかながら動きだす頃と言う意味。

元となった中国の宣明暦では「鵲始巣」で、鵲(かささぎ)が巣を作り始める頃という意味。宣明暦は平安時代初期に中国から輸入された暦で、唐の徐昴によって作られた。その後、江戸時代に大統歴、貞享歴と変わり、宝暦4年(1754年)、渋川春海によって日本初の宝暦歴に改められた。併せて七十二候も日本の気候風土に合うように改定された。

11日は鏡開き。鏡餅の割れが多いとその年は豊作になると言われる。小寒に入ると雪の降る日が続くのだが今年は穏やかな日が続く。部屋から眺める黒部川では水鳥が水の流れに乗って移動していくのが見える。本格的な寒さは、これからである。

芹乃榮(せりすなわちさかう)

<正月飾り>

1月6日から二十四節気は「小寒」に入る。この日から節分までを「寒の内」。節分の翌日は立春で「寒の明け」を迎える。それまでは厳しい寒さが続き、「小寒の氷、大寒に解く」と言う故事があるほど、寒さは一層厳しくなる。地元の酒造会社では新酒の仕込みが最盛期を迎える。杜氏や蔵人が朝早くから作業に精を出す。

七十二侯は、「芹乃榮(せり、すなわちさかう)」で二十四節気「小寒」の初侯。厳しい寒さが続くが田んぼや水辺では、芹が生え始める頃という意味。芹は春の七草の一つで、正月7日に七草粥を食べると一年の邪気を祓うとされる。

玄関の正月飾りは、地酒の菰樽に鏡餅を飾りその上に伊勢海老を頂くという創業時からの形である。歳神様をお迎えする際の、目印となる特大の門松も飾り付ける。

新春の延楽ギャラリーは、横山大観「旭日」、安田靫彦「春刻」、小林古径「竹林」。これからも受け継がれるお正月の室礼である。 本年は、1月4日に黒部市消防団の出初式が行われた。今年こそは、自然災害のない平穏な年であることを願う。

雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)

<大きな門松>

1月1日から七十二侯は「雪下出麦(ゆきわたりて、むぎのびる)」で二十四節気「冬至」の末侯にあたる。降り積もった雪の下で麦が芽を出し始める頃という意味。

正月は歳神をお迎えして、もてなしお見送りする行事でもある。門松は歳神様が降りてくる際の目印となるので、太くて長い竹と大松で大きく飾り付けをする。歳神様を祀る期間は「松の内」で1月1日から1月7日まで。

初詣は、宇奈月神社で。延楽から徒歩で6分、セレネ美術館の隣に位置する。昭和2年の創建で、地元の有志と黒部川電源開発を手がけていた日本電力の支援によるものである。

ご祭神は、天照大神、大山祇神、大山久比神である。山の開発には大山祇神は欠かせない。手水鉢は、黒部川支流の尾の沼谷で産出した緑色の巨岩をくり貫いたものである。そこに注がれる水は、黒部の名水で甘露である。

正月飾り・門松

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昨年は、北陸新幹線の開業により多くのお客様にご来館いただきましたことに感謝し、本年も飛躍の年であるように願って今年も門松を立てました。

門松の竹の先端部の形状は、斜めに切った「そぎ」と、真横に切った「寸胴(ずんどう)」の2種類がありますが、弊館では長年「そぎ」を使っています。

松の内の1月15日まで飾り、その後門松を片付けて松納めを行います。

麋角解(さわしかのつのおつる)

<ひっそりと静まり返った、うなづき湖>

12月27日から七十二侯は「麋角解(さわしかのつのおつる)」で二十四節気「冬至」の次侯にあたる。牡鹿は、繁殖期が過ぎると角が根元から抜け落ち春になると新しい角が生え代わる。麋(さわしか)の角が抜ける頃という意味。

麋(さわしか)とはオオジカのことで、かつて中国に生息していた麋鹿(びろく)とも言われている。別名「四不像」とも呼ばれ、中国の「蹄は牛に似て牛にあらず、頭は馬に似て馬にあらず、角は鹿に似て鹿にあらず、身は驢馬に似て驢馬にあらず」という伝承からきている。

宇奈月温泉ではカモシカの生息数が年々増えている。冬は冬眠せずに餌を求めて、自分の縄張り内をゆっくりと移動する。樹木の葉が落ちて、山の斜面が雪で覆われた今頃が一番見つけやすい。温泉街から徒歩30分程で「うなづき湖」に至る。雪を纏った黒部の山々が、湖面に写り込む美しい湖である。2001年竣工の宇奈月ダムによってできた山あいの人造湖である。湖畔の雪の斜面を、カモシカが移動するのがよく観察できる場所でもあり、野生の猿もよく観察できる所でもある。

乃東生(なつかれくさ しょうず)

<乃東(なつかれくさ)の花>

12月22日から二十四節気は「冬至」に入る。1年で最も昼が短い日である。「冬至、冬中冬初め」といわれるように冬至は、冬の真ん中で真冬の始まりでもあり、この日を境に太陽が復活を始める。故に冬至を「一陽来復」と言い、物事が良い方向に向かうとされる。

七十二侯は、「乃東生(なつかれくさしょうず)」で、二十四節気「冬至」の初侯に当たる。乃東(なつかれくさ)は、冬に芽を出して夏に枯れる夏枯草(かごそう)のことで、この芽がでる頃という意味。

夏枯草(かごそう)とは、宇奈月の山野に自生するシソ科の多年草の靫草(うつぼぐさ)で、花は紫色で直立した茎の先端の密な円柱状の花穂につく。この枯れた花穂が夏枯草で、古くから漢方薬として用いられている。冬至の初侯「乃東生(なつかれくさしょうず)」は、夏至の初侯「乃東枯(なつかれくさかるる)」と対になっている。

12月22日は、「宇奈月温泉スノーパーク」のスキー場開きだが、今年は雪が全く無い。スキー場の大地には、乃東(なつかれくさ)の芽が出ようとしている。

鱖魚群(さけのうお  むらがる)

<黒部川支流で産卵するサクラマス・婚姻色が美しい>

12月17日から七十二侯は「鱖魚群(さけのうお むらがる)」で、二十四節気「大雪」の末侯にあたる。鮭の群が、産卵のため自分の生まれた川に遡上する頃という意味。宇奈月温泉を流れる黒部川の鮭の遡上は11月で終わる。

黒部川の河口から宇奈月温泉までの間に、サケが遡上するために越えなければならない堰堤がある。それは愛本堰堤である。愛本周辺は黒部川扇状地の扇頂部で、江戸時代に刎橋が懸けられたところである。黒部川下流域の最も狭い地点である。

現在の愛本堰堤は、昭和44年に流されて同48年に築造された。ここに魚道が設けられている。黒部川は急流河川で流出土砂も多い。その土砂で魚道が度々埋まり、今年も機能しなかった。故に鮭は宇奈月温泉の周辺で見ることができなかった。

ところが桜鱒は、年々数が減少しているものの、支流で確認できる。桜鱒は鱒ずしの鱒である。桜鱒は春に遡上する。春の黒部川は、雪解けで水が増水し、急流となって川幅一杯に堰堤を乗り越えて流れるので、桜鱒は遡上が可能になる。そして夏の期間は、深い淵に潜んでいる。

今年は、山の稜線が色づく10月中旬から11月初旬にかけて支流で産卵のために遡上した婚姻色が美しいサクラマスを見ることができた。この時期の黒部川は透明度が増して、水量が少ないので容易に発見できる。今年は数が多く、カワガラスが鳴き始めると産卵が始まる。

孵化した稚魚は、降海型と河川残留型に分かれ、降海型は3年かけて桜鱒となって黒部川に戻ってくる。河川残留型は山女魚となる。黒部川ではその稚魚を守るため2月の末まで禁漁となる。

閉塞成冬(そらさむく ふゆとなる)

<雪化粧が美しい延楽対岸の山々>

12月7日から二十四節気は「大雪」に入る。木々の葉はすっかり散り終え、雪の日が多くなる。

七十二侯は「閉塞成冬(そらさむく ふゆとなる)」で「大雪」の初侯にあたる。天も地も寒さで塞がれ、本格的な冬到来の頃という意味。宇奈月温泉を取り巻く山々は雪化粧。黒部川の水面近くの名残の紅葉が、季節の移ろいを感じさせる。季節は日一日と真冬へと向かってゆく。

これからの雪景色は、最も宇奈月温泉らしい風情を醸し出す。その雪景色と湯量豊富な温泉と富山湾の海の幸は、芸術家達を魅了した。延楽にゆかりのある川合玉堂、中川一政、小杉放庵、堅山南風、榊原紫峰等の巨匠の作品が館内に展示されている。峡谷に面した館は、雪を愛でるのに最も適したところである。