玄鳥去(つばめ さる)

<セレネで上演された、青い鳥>

9月18日から七十二侯は「玄鳥去(つばめ さる)」で二十四節気の「白露」の末侯にあたる。春に日本にやってきた燕が暖かい南の国へ帰る頃という意味。

20日は秋彼岸の入り。暑さ寒さは彼岸までの言葉通り、燕の渡りが始まる。燕がやってくるのは七十二侯の「玄鳥至(つばめ きたる)」で、今年は4月5日だった。宇奈月温泉で飛び交う燕は、岩燕で尾羽が短くやや小型。

岩燕が去る頃、温泉街では毎年、宇奈月モーツアルト音楽祭が行われる。今年は9月14日から16日の3日間行われ、温泉街がモーツアルトの調べに包まれた。豊かな自然に恵まれた、山あいの出湯ならではの情緒である。

8月23日から行われている、国際的な舞台芸術の祭典「第9回シアター・オリンピックス」はロシアとの共同開催で、9月23日まで行われる。今年から宇奈月国際会館「セレネ」は、鈴木忠志氏の粋な計らいによって会場の一つに加えられた。

セレネでは田渕俊夫画伯の展覧も10月14日まで開催されているので、質の高い芸術がまだまだ楽しめる。祭典が終わると、秋が深まり月影さやかな時季を迎える。

鶺鴒鳴(せきれい なく)

<お気に入りのセレネでの演奏会>

9月13日から七十二侯は「鶺鴒鳴(せきれい なく)」で二十四節気の「白露」の次侯にあたる。季節は中秋で、鶺鴒が鳴き始める頃という意味。9月13日は中秋の名月である。

鶺鴒は、宇奈月周辺で春から秋にかけての長い期間見られ、舗装された山道をチチッチチッと高い鳴き声を発して、長い尾をしきりに上下に振りながら小走りに動く。まるで道案内をしてくれるかのように。黒部の渓流沿いや、宇奈月谷などの水辺に棲む。

古くは、日本神話の国産みの神聖な鳥として日本書紀に登場する。白い鶺鴒の季語は秋。我が国では白というと雪を連想するが、中国では五行思想により、白は秋の色とされている。

宇奈月温泉では9月14日から9月16日まで宇奈月モーツアルト音楽祭が開催される。この間、宇奈月温泉はモーツアルトの音楽に包み込まれます。催し物として、無料のまちかどコンサートや、オペラ公演、オーケストラ公演などが行われる。なかでもお薦めは、9月14日の古澤巌のヴァイオリンソロで、トークとソナタが楽しめる企画である。

草露白(くさつゆ しろし)

<萌黄色の最も美しい季節をとらえた院展出品作品>

9月8日から二十四節気は「白露」となる。朝晩の気温差が大きくなると露が降りるようになる。暦便覧には「陰気ようやく重なり露凝って白し」と。夏の気配を残しつつも朝夕は涼しくなり、草花に朝露がつくようになるという意味。

七十二侯は「草露白(くさのつゆ しろし)」で、「白露」の初侯。草に降りた露が白く光って見える頃という意味。早朝に僧ヶ岳の登山道を行くと、草露に足下が濡れる。白露に濡れた紅紫色の秋桐や釣舟草が心に残る。

黒部峡谷・セレネ美術館では、10月14日まで令和記念特別展として田渕俊夫画伯の至極の日本画展を開催している。黒部川扇状地をとらえた屏風作品「大地」は、1988年の院展の出品作。

残雪が未だ多い後立山連峰。新緑の美しい山の端。田圃に水が張られた田植え時期。5月末の黒部平野の風景である。黒部の生命の息吹が最も感じられる季節に、ヘリコプターを使って扇状地を取材した作品。黒部の水をテーマに創作された田渕作品の数々。芸術の秋にふさわしい展覧会である。

禾乃登(こくのもの すなわちみのる)

<夜が深まるにつれ艶やかになる>

9月3日から七十二侯は「禾乃登(こくのもの すなわちみのる)」で二十四節気の「処暑」の末侯にあたる。禾の文字は、植物の穂の形からできており豊かな実りを象徴する。

稲穂が膨らんで田圃が黄金色になる二百十日は、台風到来の時節である。風の厄日に風神鎮魂を願う踊り「おわら風の盆」が行われる。今日は9月3日で最終日である。舞台となる八尾は井田川と別荘川が作り出した河岸段丘に石垣を築いて拓いた坂の町である。三味と胡弓が奏でる叙情性あるおわらの旋律は、訪れる人々を魅了する。

新作おわらの代表作は小杉放庵が詠んだ「八尾四季」である。

ゆらぐつり橋手に手をとりて
 渡る井田川 オワラ 春の風
富山あたりかあの灯火は
 飛んでゆきたや オワラ 灯とり虫
八尾坂道わかれてくれば
 露か時雨か オワラ はらはらと
若しや来るかと窓押しあけて
 見れば立山 オワラ 雪ばかり

昭和3年に川崎順二に招かれて詠った歌である。 その行き帰りに必ず延楽で長逗留された。今でもその足跡は数多く残されている。

天地始粛(てんち はじめてさむし)

<上新町・御座敷踊り>

8月28日から七十二侯は、「天地始粛(てんち はじめてさむし)」で、二十四節気「処暑」の次侯にあたる。

粛には、鎮まるとか弱まるとか縮むという意味あり、ようやく暑さが鎮まる頃という意味。立春から数えて二百十日は9月1日にあたる。台風の多い時期でもある。実った稲穂を強風から守るために、風を鎮める祈りの踊りが行われる。越中八尾の「風の盆」である。

9月1日から9月3日までの三日三晩、哀愁を帯びた鼓弓の音色に乗って街流しが行われる。踊りは、農作業の所作で組み立てられ、八尾、上新町では町内の通りを使って大輪踊りが行われる。地元の踊り手の後ろについて所作を学のも、おわらを知る方法の一つでもある。

8月20日から8月30日までの毎日、11の町内が各自持ち回りで前夜祭を行う。今年の初日は天満町で、一足早く担当の町内の街流しや輪踊りが鑑賞できて、本番とは違った情緒を味わうことができるので、お勧めである。

綿柎開(わたのはなしべ ひらく)

<羯諦羯諦の一場面>
画像:北日本新聞WEBより

8月23日から二十四節気は「処暑」となる。処とは止まる、留まるという意味で、夏の暑さが収まるとされる。七十二侯は「綿柎開(わたのはなしべ ひらく)」で「処暑」の初侯にあたる。綿を包む柎(はなしべ)が開き、中から綿毛が出てくる頃という意味。

23日に、国際的な舞台芸術の祭典「第9回シアターオリンピクス」が開幕し、南砺市利賀村と宇奈月国際会館セレネでオ-プニング公演が行われた。主催者は、劇団「SCOT」の主宰者で演出家の鈴木忠志さん。利賀村に拠点を構えてから43年目。今回は、利賀村6会場の他に新たに黒部市のYKKゲストハウスに設けられた「前沢野外ステージ」と宇奈月国際会館「セレネ」が加わり、8会場で上演される。

宇奈月国際会館「セレネ」で行われた「羯諦羯諦(ぎゃていやてい)」は、真言声明の会の僧侶6人が唱える澄み切った声明と、打楽器奏者の高田みどりさんが奏でる銅鑼、太鼓、マリンバなどの音色が神秘な世界を作り出す。会場は般若心経の世界に包まれた。

蒙霧升降(ふかききり まとう)

<炸裂音凄まじい宇奈月温泉花火大会>

8月18日から七十二侯は「蒙霧升降(ふかききり まとう)」で二十四節気「立秋」の末侯にあたる。

蒙霧とは立ちこめる深い霧のことで、朝晩の冷え込みで濃い霧が発生しやすい頃という意味。俳句では霧は秋の季語で、これから山や川、湖などに霧が発生しやすくなる。

8月18日は宇奈月温泉花火大会。光の大輪が峡谷の夜空を華やかに彩る。宇奈月温泉は四方を山に囲まれているため、花火の炸裂音が峡谷中に響き渡る。

宇奈月の山野では、秋茜が飛び交い山萩や薄や田村草など、秋を彩る花々が咲きだす。

寒蝉鳴(ひぐらし なく)

<昭和天皇陛下 御製>

8月13日から七十二侯は、「寒蝉鳴(ひぐらし  なく)」で二十四節気「立秋」の次侯にあたる。

寒蝉(かんぜみ、かんせん)とは、立秋に鳴く蝉で、蜩(ひぐらし)、つくつく法師をさす。七十二侯ではひぐらしの事。終わり行く夏を惜しむかのように、夕暮れ時に「カナカナカナ」と鳴く寒蝉の声。宇奈月温泉は四方を山に取り囲まれている地形故、もの悲しい声が多方向から聞こえてくる。

少し前までは、河鹿の鳴き声が黒部の川から「コロコロコロ」と、川風に乗って心地よく聞こえていたのだが、立秋にはいると寒蝉と入れ替わる。河鹿は清流に住む蛙で、文人墨客の宇奈月で詠んだ歌や詩の中に、度々登場するが寒蝉は出てこない。

宇奈月公園には幾つかの歌碑が建っている。 真夏の蝉時雨から余韻を残す寒蝉に変わり、季節の移行のシグナルを肌で感じながら歌碑を辿るのも宇奈月温泉での過ごし方の一つだ。

涼風至(すずかぜ いたる)

<甘い香りを漂わせる葛の花>

8月8日から二十四節気は「立秋」。猛暑日が続くが、暦の上では秋を迎える。

宇奈月は、日中まだまだ厳しい暑さが続くが、朝に涼やかな川風の気配が感じられるようになる。立秋以降の暑さを残暑といい、手紙の時候の挨拶は「残暑見舞い」となるが、今年はまだまだ酷暑日が続く。

七十二侯は「涼風至(すずかぜ、いたる)」で、二十四節気「立秋」の初侯にあたる。季節は少しずつ秋に向かい、涼しげな風が吹く頃という意味。

山では雨不足により焼けた葉を纏う木々が見られる。葛は様々な樹木に絡みつき、赤紫の花を開花させ、甘い香りを周辺に漂わせている。とにかく暑さに強い植物である。そんな葛の葉の陰から、集く虫の音が聞けるのも間近である。

大雨時行(たいう ときどきにふる)

<雪解け水が流れ込むうなづき湖>

8月2日から七十二侯は、「大雨時行(たいう ときどきにふる)」で二十四節季「大暑」の末侯。

梅雨が明けてからも、 山にはまだ薄暗い雨雲が立ち込め、今にも激しい雨が襲ってくるようだ。 入道雲が湧き上がるようになれば夕立の合図。 大雨が大地を洗い流し、しばし夕暮れの涼を与えてくれる。

黒部峡谷は、涼を求めるお客様で賑わう。トロッコ電車は、ゆっくりと宇奈月駅を出発する。先ず目に入るのがエメラルドグリーンの「うなづき湖」。 2001年に完成した宇奈月ダムによって湛水されてできた湖である。

黒部峡谷は八千八谷と呼ばれ、谷や沢が多い。 湖には急峻な山から流れ出た雪解け水が、満面に湛えられている。峡谷がもたらす川風は、冷を含み爽やかである。