鷹乃学習(たか すなわちわざをならう)

<黒部奥山の空に鷹が舞う日は間近>

7月18日から七十二侯は、「鷹乃学習(たか すなわちわざをならう)」で二十四節気「小暑」の末侯にあたる。

春に生まれた鷹の幼鳥が、飛び方を覚える時期で、巣立ちの準備をする頃という意味で、鷹は、古くから獲物を捕るための道具として大切にされてきた猛禽類である。鷹狩りは、四千年前に中央アジアの平原で始まり、日本へは四世紀半ばに、朝鮮半島を経て伝わって来たと言われ、とりわけ徳川家康が鷹狩りを好み、鷹術は一種の礼法と見なされた。

家康が好んだ「祢津流」は全国の武家の間に広まった。加賀藩、富山藩にはこの流れを汲む「依田家」が鷹匠として抱えられ、文武二道を旨とする前田家で鷹匠文化として継承されていった。武家にとって鷹狩りは、領内視察のほか軍事演習の意味合いもあったので、武芸奨励として受け継がれた。

黒部奥山は、加賀藩の直轄地で、黒部奥山廻役が定期的に調査に入っていた。この時は鷹や犬鷲の飛ぶ様子で、位置確認や気象予測の参考にしたと言われる。宇奈月の梅雨明けは例年よりも遅れているが、梅雨が明けると黒部奥山の空に鷹が高く舞う盛夏の訪れである。

蓮始開(はす はじめてひらく)

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7月13日から七十二侯は、「蓮始開(はす はじめてひらく)」で二十四節気「小暑」の次侯にあたる。

池の水面に蓮の花が開き始める頃という意味。泥を俗世に見立て、泥より出でて泥に染まらぬ優雅で貴賓高き蓮の花は、仏教の悟りの境地に例えられる。加えてその崇高な清らかな花に極楽浄土を見るのである。修行僧のかぶり物は若い蓮の葉を形取ってあり、未熟者であることを表す。仏教徒にとっては聖なる花である。

蓮が咲く頃は、梅雨明け間近なのだが、今年の宇奈月はまだまだ先になりそうだ。最近の雨量は、少量で黒部川の流れは透明さを増し、水量も落ち着いてきている。河鹿蛙の鳴き声も、川風に乗って心地よく聞こえる。

温風至(あつかぜ いたる)

<聴衆を魅了する「澤カルテット」>

7月7日から二十四節気は「小暑」。例年この時期は、長く続いた梅雨が終わりを告げ夏本番となる頃である。七十二侯は、「温風至(あつかぜ いたる)」で、二十四節気「小暑」の初侯にあたる。温風とは南風のことで、温風が吹いて蒸し暑い日が増えてくる頃という意味。沖縄から順に梅雨明けが始まるのもこの時期である。

今年は、日本列島に梅雨前線の停滞が続き、日照時間が短い日が続く。今日は残念ながら天の川が見られないが、東京芸術大学学長の澤和樹さん率いる弦楽四重奏団「澤クワルテット&蓼沼恵美子」七夕コンサートが宇奈月国際会館セレネで開催さる。結成30年を迎えてますます円熟味が溢れる。

第一部はモーツァルトの弦楽四重奏曲17番「狩」とべートーベンの弦楽四重奏曲第4番。第2部はシューマンのピアノ五重奏曲変ホ長調を演奏。第一ヴァイオリンは澤和樹、ヴィオラは市坪俊彦、第二ヴァイオリンは大関博明、チェロは林俊明、ピアノは蓼沼恵美子さんです。レンガ積みのセレネホールは、室内楽の演奏会にあっている。

半夏生(はんげ しょうず)

<宇奈月ダムの排砂ゲートから土砂が出される>

7月2日から七十二侯は、「半夏生(はんげ しょうず)」で二十四節気「夏至」の末侯。半夏という薬草が生える頃という意味。

半夏は烏柄杓(からすびしゃく)で、サトイモ科の多年草。花茎の頂きに仏炎包をつけ、中に肉穂花序を付ける独特な形をしている。宇奈月の山で見かける座禅草、水芭蕉、蝮草なども仏炎包を有し肉穗花序を付けている。仏炎包とは仏像の光背の炎形に似ているため。

この頃に降る雨は、半夏雨(はんげあめ)と言われ、大雨になることが多い。梅雨前線が日本列島に停滞するこの時期に、宇奈月ダムでは増水を利用して堆積した土砂を吐き出す排砂が行われるが、今年は1回目が6月16日から6月18日まで、2回目が7月1日から7月2日に行われた。上流のダムと連携排砂される。

7月1日は北アルプス・立山の夏山開き。みくりが池周辺では高山植物の見頃を迎える。夏山のシーズン到来である。

菖蒲華(あやめ はなさく)

<「田渕俊夫:放水」とカッシーナ>

6月27日から七十二侯は、「菖蒲華(あやめ はなさく)」で、二十四節気「夏至」の次侯にあたる。 菖蒲の花が咲く頃という意味。 菖蒲は「あやめ」とも「しょうぶ」とも読める。あやめ(菖蒲)は梅雨の到来を告げる花として親しまれている。 外花被のつけ根にある網目模様は、ハナショウブとカキツバタとの判別方法になる。

宇奈月公園では、6月の初めに開花し今は結実となり、 冷たい清水が流れる沢に源氏蛍が乱舞している。

立山黒部アルペンルートにある黒部ダムで6月26日から夏の行楽シーズンの到来を告げる観光放水が始まった。 黒部ダムは、河床からの高さが高さ186mと日本一の壁面を誇るアーチ式キダムで、二箇所の放水口から毎秒7.5トンずつ合計15トンを放水、10月15日まで毎日実施される。 豪音と共に噴出する水に日がさして虹が架かる。

セレネ美術館では、田渕俊夫画伯の黒部ダムの放水を捉えた院展出品作品が展示されている。大自然の中で水が放つエネルギーを巧みにとらえた名品である。   

乃東草(なつかれくさ かるる) 

<少なくなりつつある夏枯草(靭草)>

6月22日から二十四節気は「夏至」。1年の内で最も昼が長くなる頃。これから盛夏に向けて日に日に暑さが増すが、梅雨のまっただ中なので、雨の日がしばらく続く。

七十二侯は「乃草枯(なつかれくさ かるる)」で「夏至」の初侯。乃東(なつかれくさ)とは、漢方薬に用いられる夏枯草の古名で、宇奈月の草地に生えるシソ科の靫草(ウツボグサ)のことである。

花穗だけが枯れて黒ずんだ色になり、夏枯草の名の由来となる。半年前の「冬至」の初侯は「乃東生(なつかれくさ しょうず)」で、生まれて枯れる、季節は正確に巡ってくる。

梅子黄(うめのみ きばむ)

<白身魚と相性のいい煎り酒>

6月16日から七十二侯は「梅子黄(うめのみ きばむ)」で二十四節気「芒種」の末侯にあたる。梅の実が熟して黄ばむ頃という意味。梅が黄ばんでくると梅干を作るための収穫となる。いよいよ梅雨本番。

延楽の人気商品に「煎り酒」がある。梅干しの塩梅と特製出汁を併せてつくる。地元の富山湾で獲れる真鯛、平目、のど黒、細魚(サヨリ)、太刀魚などの白身魚の刺身に合う。おろし山葵を少々付けて食すと、白身魚の繊細な味わいが口に中に広がる。

江戸時代に醤油が登場する以前に刺身ダレとして使われた。地酒との相性も良い。延楽自家製「煎り酒」は、刺身以外にもドレッシングや鍋物等にも幅広く使える。延楽の秘伝の味でもある。

腐草為蛍(くされたるくさ ほたるとなる)

<小雨にそぼ濡れるホタルブクロ>

6月11日から七十二侯は「腐草為蛍(くされたるくさ ほたるとなる)」で「芒種」の次侯にあたる。草が枯れ、腐って蛍になるという意味。出典は中国古典の菜根譚や江戸時代の歳時記である改正月令博物筌(かいせいげつれいはくぶつせん)。

蛍は土の中でサナギになり地上で羽化するので、草が朽ちて蛍になると考えられた。蛍の異名として「朽草(クチクサ)」とも呼ばれる。梅雨を迎える頃、宇奈月公園ではゲンジボタルが飛び交う頃である。

宇奈月の山道では、小雨に濡れた清楚な白花の蛍袋が下向きに開花する。虫の雨宿りには格好の場所。宇奈月周辺では白花が多く見られるが、山を越えた信州では淡紅紫色になる。蛍袋はキキョウ化の多年草で英語ではベルフラワー、鐘の花。形から納得できる。花の中に蛍を閉じ込めるとその灯りが外へ透けて見える。まさに火垂(ほたる)の所以である。

蟷螂生(かまきり しょうず)

<雨上がりの鳥足升麻>

6月6日から二十四節気は「芒種」に入る。芒(ボウ)とは、稲や麦などのイネ科の小穂を構成する頴(えい)の先端にある針状の突起のこと。芒種とは、芒を持つ植物の種を蒔く時期と言う意味。

七十二侯は「螳螂生(かまきり しょうず)」で二十四節気「芒種」の初侯にあたる。昨年の秋に草の茎や小枝に生み付けられた螳螂の卵囊が、孵化して幼虫になる頃という意味。この頃から梅の実が黄色く熟してくる。

宇奈月も梅雨入りで、昨年より2日早く本日(6月7日)梅雨入りが発表された。少し雨が上がると黒部の山々の中腹から麓にかけて、薄い雲が棚引き幻想的な風景が生まれる。宇奈月の山路には蛍袋や鳥足升麻が咲き始める。小雨に濡れた山野草は格別な美しさがある。

麦秋至(むぎのとき いたる)

<黒部川扇状地の麦の収穫の頃>

6月1日から七十二侯は「麦秋至(むぎのとき いたる)」で二十四節気「小満」の末侯。黄金色に色づいた麦の穂が実る頃という意味。

黒部川扇状地の田んぼでは満面の水が湛えられ、苗が整然と植えられている。一部の田んぼでは麦の穂が実り、収穫の頃となる。麦の実りの季節を「麦秋」と呼ぶ。麦秋は梅雨入り前の一瞬の輝きである。この地で栽培される麦は、二条大麦で上品な酵母の香り高い宇奈月ビールの原料となる。

一方黒部の山々の次第に色味を増す緑は、濃淡のグラデーションを見せてくれる。この時期の雨も翠雨、緑雨、青雨などと色で表現される。6月1日は衣替え。旅館の室礼もいよいよ夏へと近づく。