草木萌動(そうもくめばえいずる)

<ホタルイカの釜揚げ>

2月28日から七十二侯は、「草木萌動(そうもくめばえいずる)」で、二十四節気の「雨水」の末侯になります。柔らかな春の陽射しを受け、潤った土や木々から萌葱色の新芽が芽吹く頃という意味です。

3月1日から富山湾ではホタルイカ漁の解禁となります。ホタルイカは、昼は深い海底に潜み、深夜から明け方にかけて浅いところへと移動して産卵します。その習性をとらえて行われるのが、富山湾の春の風物詩「ホタルイカ漁」です。ホタルイカが放つ独特の青白い光は幻想的で、まさに富山湾の神秘といわれる所以です。ほのかな甘みのお造りは、絶品で地酒とよく合います。熱々のホタルイカの釜揚は、オレンジ色の内臓もたっぷりと味わえて、これがまた地酒によくあいます。

一方、黒部川では3月1日から渓流釣りの解禁となります。黒部川の河原に、まだ雪が残っています。釣り人が山女魚や岩魚を狙って早春の渓流に挑みます。

霞始靆(かすみはじめてたなびく)

<雪を纏った後立山連峰(白馬連山)>

2月23日から七十二侯は、「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」で、二十四節気「雨水」の次侯となります。靆(たなびく)とは、霞や雲が薄く層をなして横引きに漂うことです。雨水や雪融け水によって湿った大地に、日が差すことによって水蒸気が起こり霞が棚引く頃という意味です。春霞で野山がぼんやりとかすんで見える頃となります。

霞は気象用語で靄(もや)のことで、春の女神の衣に見立てられます。霞とは春に出る霧の事で、霧はそれぞれ情景により朝霧、夕霧、薄霧、八重霧などと美しく表現されます。朧月夜に詠われる夜の霧は、朧(おぼろ)として使い分けられます。

春霞は、偏西風に乗って大陸から飛来する黄砂によるもので、万葉集にも詠われています。これから多く見られる現象です。これからは雪を纏った黒部の山々が、霧や靄で美しく豊かな景色を見せてくれ日が多くなります。北陸新幹線、かがやき、はくたかの車窓からもご覧いただけます。

土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)

<吹雪の後の黒部川>

2月18日から二十四節気は「雨水」に入ります。空から降る冷たい雪が雨に変わり、野山の雪がゆっくりと融け始めます。この頃の雨は「木の芽起こし」といって、植物の芽吹きを助ける大切な雨となります。この時期に吹く強い南風が春一番です。

七十二侯は、「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」で、二十四節気「雨水」の初侯にあたります。凍てついた大地が潤いをとり戻す頃で、昔から農耕の準備を始める目安とされていました。

16日から冬型の気圧配置が強まり、富山県内は今日まで大雪となり冬に逆戻りです。たびたび二十四節気「雨水」の初候のおきる気象現象です。一時、強風も伴って吹雪となり猛スピードで雪が横に飛ばされています。この風も長続きはせずに、19日から天気は徐々に回復してきます。これからは日一日と日足も長くなり、三寒四温を繰り返しながら季節は春に向かっています。

魚上氷(うおこおりをいずる)

<黒部川にそそぐ琴音の滝>

2月13日から七十二侯は、「魚上氷(うおこおりをいずる)」で、二十四節気「立春」の末侯にあたります。春の兆しを感じて魚が動き始め、割れた氷の間から飛び出す頃という意味です。

宇奈月温泉は、冷え込む夜半に雪が舞い稜線は薄っすらと雪化粧。黒部川は凍らずに渓流となって流れています。宿の対岸に、良い形の釜を備えた滝があります。宿の創業者が親しかった中川一政画伯のお気に入りの滝で、「琴音の滝」と名付けました。滝釜から黒部川に流れ落ちる清流の岩陰に、山女魚の稚魚が春めく時を待っています。やがてその一握りが桜鱒となって戻ってきます。

黄鶯睍睆(うぐいすなく)

<安田靫彦「春到」>

2月8日から七十二侯は「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」で、二十四節気「立春」の次侯になります。山里に春を告げる鶯が鳴く頃と言う意味です。宇奈月温泉周辺では3月初旬から中旬になりそうです。睍睆とは声の美しい様子を表す畳韻の擬態語で、畳韻とは韻が同じ漢字2文字を重ねることとあります。

今年は年初から大雪で、宇奈月温泉スキー場には十分に雪があります。今日から大陸からの寒気団が再び南下し、数日寒い日が続くようですが長続きはしません。明け方の雪は、山一面に雪の花を咲かせ稜線が幻想的に見えます。山水画のような景色を眺めながら露天風呂に浸かると、まさに至福のひと時です。

ギャラリーでは、安田靫彦の「春到」が展示されています。まだまだ寒き中、においを漂わせる白梅。画伯の庭の花をつけた梅が枝を描かれました。富山気象台から開花宣言が出されるのはもうすぐです。

東風解氷(はるかぜこおりをとく)

<春めく黒部の山>

2月3日から二十節気は「立春」を迎えます。立春は冬が極まり春の気配が立ち始める日とされ、1年の始まりの節気でもあります。旧暦の元旦は立春に近い新月の日で、正月を新春、初春と呼ぶのはこの名残です。この日から立夏の前日(5月4日までが春となります。

立春は、あらゆる節日の基準日となります。おわら風の盆に謡われる二百十日は、立春から数えると9月1日になります。八十八夜も同様で暦に記して農作業の目安としました。七十二侯の始まりは、「東風解氷(はるかぜこおりをとく)」で二十四節気「立春」の初侯。東風とは春風のことで、東から温かい風が吹き、張り詰めていた氷を解かし始める頃という意味です。今日から日足が伸び木々も次第に芽吹き始め、春の兆しが少しずつ現れ始める頃です。禅寺では早朝に立春大吉と書いた厄除けの紙札を貼って、邪気を払います。

鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)

<小泉智英:春きざし>

1月30日から七十二侯は、「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」で二十四節気「大寒」の末侯。鶏が春の気を感じ、卵を産み始める頃という意味です。

「大寒」は、冬の最後の節気であり一年で最も寒い時期です。厳しい寒さはまだまだ続くが、太陽は少しずつ力強さを増しています。生き物たちは敏感に春の気配を感じ、目覚めの準備をしています。この頃、梅の名所から白梅紅梅の開花状況が届くようになります。宇奈月は未だ蕾硬し。

ロビーでは、梅を題材にした絵画を展示しています。小泉智英先生の「春きざし」は、静寂な竹林を背景に、古木から延びる梅ヶ枝。小泉氏は福島県小川町の出身で、身近にある風景を、独特の視線や緻密な筆遣いで精神性の高い作品に仕上げています。自然が生み出す四季折々の風情を、凛と張り詰めた空間の中に表現しています。

ギャラリーでは、安田靫彦「春到」、横山大観「旭日」、金島佳華「雪の寒椿」等も展示しています。

水沢腹堅(さわみずこおりつめる)

<冷たさを増す黒部川>

1月25日から七十二侯は、「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」で二十四節気「大寒」の次侯となります。沢に氷が厚く張りつめるほど寒い頃と言う意味です。水はいよいよ冷たさを増し、1年の内で最も寒い時期となります。この頃は大陸からの強い寒気が入りやすく、記録的な大雪や最低気温をもたらすのですが、今年は、1月7日からの大雪で、今は寒気が一段落です。週末から寒気が再び張り出してきます。

寒の内に汲んだ水は、「寒の水」と呼ばれ細菌少ないのでお酒を仕込むのには最適です。寒仕込みの酒は、きめ細やかですっきりとした味わいに仕上がります。大吟醸はこの時期を選んで仕込まれ、3か月を経て出荷されます。日本酒の仕込みが、最盛期を迎える時期でもあります。

款冬華(ふきのはなさく)

<蕗の薹>

1月20日から二十四節気は、冬の最後の節気「大寒」に入ります。一年で最も寒い時期で、最低気温を観測するのはこの頃です。寒の内に汲んだ水は、寒の水と呼ばれ雑菌が少ないので、酒、味噌、醤油などの発酵食品を仕込むのに適しています。寒仕込みです。寒さは一段と厳しくなる一方、太陽の光は少しずつ力強さを増してきています。

七十二侯は、「款冬華(ふきのはなさく)」で二十四節気「大寒」の初侯となります。款冬(かんとう)とは蕗のことです。一番早く芽を出す黒部川扇状地の土手は、大雪のため雪に覆われ、蕗の薹が顔を出すに至っていません。雪下の蕗の薹は、苦みが少なく蕗味噌や天婦羅で早春の香りを味わえます。

富山湾では雌の香箱蟹が資源保護のため1月10日から禁漁となりましたが、雄の津合井蟹漁は最盛期を迎えています。浅瀬から深海に至るまで多種多様な魚が生息する富山湾。天然の生簀と呼ばれる所以です。宇奈月温泉は、海の幸、山の幸に恵まれた処です。

雉始雊(きじはじめてなく)

<雪に覆われた黒部川扇状地>

1月15日から七十二侯は「雉始雊(きじはじめてなく)」で、二十四節気「小寒」の末侯となります。雉子の求愛が始まる頃という意味です。

雉の雄は、雌を呼び込むために甲高い声で鳴きます。富山県内は35年ぶりの大雪で、温泉街の雪捨て場に雪が高く積み上げられています。黒部川下流の黒部川扇状地では、雉の求愛行動が活発化する時期ですが、大地がまだ雪に覆われているため、今年は遅れそうです。今日は、延楽・松の内の終わりで、松飾りを取り外し、左義長で見送ります。

左義長は、毎年2月の第一土曜日の宇奈月温泉雪カーニバルの日に宇奈月公園で行われます。左義長に点火されると、炎が夜空に勢いよく舞い上がり、歳神様もその炎に乗って天に帰るとされています。竹の炸裂音から、地域によっては、どんど焼きともいいます。今年は残念ながらコロナ禍で、左義長は中止となり雪上花火だけが打ち上げられます。早く感染拡大が収まって欲しいです。