織部沓形筒向附

<冬野菜焚合>

冬の根菜類は甘みを増し美味しくなる頃です。蓮根、人参、山芋をそれぞれ含め煮にし、とり合わせます。葛餡をかけても美味しくいただけ、体の芯から温まりますす。

季節のうつわは「織部沓形筒向附」です。沓形とは楕円形の器形を示し、特に茶碗の一形状の沓茶碗に用いられる呼称です。

沓とは、宮中や神社などで用いられ木沓(きぐつ)の形をなし、前後が丸みを帯びていることから、楕円状を指す言葉として用いられたようです。

染付網目蓋付汲出皿

<器全体が染付の網目で覆わる>

冬の富山湾は、食材の宝庫です。寒鰤、津合蟹、紅津合蟹、毛蟹、のどぐろ、平目、梅貝甘海老、富山海老、真鱈など沢山の種類の魚が水揚げされます。

中でも、冬の真鱈は美味しく、その料理は多彩です。特に白子は美味で、色が白く雲のような見た目なので雲子と呼ばれています。雅膳の一品は、雲子玉地蒸しです。

季節のうつわは「染付網目蓋付汲出皿」で、矢口永寿の作品です。

矢口永寿は、1904年に自宅である山中温泉の湯宿に、京都より永楽保全の門下である滝口加全らの陶工を招き開窯しました。1906年には清水六兵衛の門人・戸山寒山を招き染付磁器を中心に料理の器を多く製作しました。陶芸の他に書画や料理にも秀で、北大路魯山人とも親交があり、すぐれた作品を残しています。

仁清色絵椿絵皿

<平目天婦羅>

黒部漁港では、平目が多く水揚げされます。料理は多彩で、薄造り、昆布締め、煮付け、しゃぶしゃぶ、フライ、天麩羅などで美味しくいただけます。

平目は、鰈とともに異体類に属し、体は扁平で眼が片側に偏って並んでいます。見分け方は、眼のある表の腹部を手前にし、頭が左にくれば平目、右にくれば鰈です。鰈類に左に頭がくる種類があります。平目でも、稀に右に頭が来るのもあります。確実なのは大きな口で鋭い歯が生えているのが平目で、おちょぼ口が鰈です。これは捕獲するえさの違いからきています。

季節のうつわは「仁清色絵椿絵皿」です。紅白と緑釉の色合いが料理を引き立ててくれます。

金彩赤絵向付

<寒鰤の造り>

11月末に起きる雷を伴った荒天を地元では、御満座荒れと呼んでいます。寒鰤の豊漁の前触れで、昔から鰤お越しと呼ばれています。

御満座とは、浄土真宗の開祖親鸞の命日「御正忌」のことで、11月28日です。この時期は、北西の季節風が吹きだし、よく雷鳴がとどろきます。熱心な真宗の信者である漁師達は、この荒天を御満座荒れと呼んだ事に由来します。

寒鰤の美味しい時期となりました。脂の乘った刺身は大根おろしを添えて食します。お薦めの地酒は、千代鶴酒造の純米生原酒「恵田」です。

季節のうつわは「金彩赤絵向付」で永楽和全の作品です。

和全は、幕末から明治期にかけて活躍した京焼の12代善五郎です。44歳で隠居した後、大聖寺藩に招かれて九谷焼の指導を行い、再興九谷の発展に尽くします。

金襴手、呉須赤絵、染付、万暦赤絵、安南など写し物に優れた才を発揮し、九谷焼に影響を与えます。

焼締片口皿

<土肌を感じる器>

北陸では、11月末から「冬期雷」といって雷鳴がよく発生します。富山湾に地響きのような激しい雷鳴が轟き渡ると強風が吹き荒れ、沖合では大シケが続きます。鰤が富山湾に入ってくる合図の「鰤起こし」です。

11月28日は親鸞聖人の命日です。昔から天候がよく荒れるので、真宗門徒の多い富山では、「御満座(ごまんざ)荒れ」と呼んでいます。

いよいよ寒鰤のシーズンの到来で市場では大物が並び、活況を呈します。延楽では脂の乗った寒鰤と、湯量豊富な温泉が味わえる好季節を迎えます。

季節のうつわは「焼締片口皿」で、荒木義隆さんの作品です。荒木さんといえば焼締めです。土の風合いをストレートに伝える焼締の作品に、寒鰤の造りを添えました。

乾山写寿見込向付

<赤絵に映える香箱蟹>

冬の富山湾の代表的な食材は「香箱蟹」です。津合蟹の雌で資源保護の観点から漁の期間は短く、11月6日から1月10日までと定められています。冬の海に隠された赤い宝石と呼ばれ、寒鰤とともに人気の冬の味覚です。

特に、甲羅の中の赤い内子や、お腹の外側にある外子は絶品で地酒と合います。活蟹会席の一皿で格別の旨味が味わえます。濃厚な蟹味噌もお勧めです。

季節のうつわは「乾山写寿見込向付」です。赤絵の器に赤い香箱が美しく映えて、絶妙の取り合わせです。

輪島塗・牡丹蒔絵吸物椀

<蟹真丈吸物>

活蟹会席の吸物は、蟹真丈の吸物です。津和井蟹の旨味を含んだ真丈は、一番出汁で上質な味わいとなります。

この後の料理は蟹の洗い、焼蟹と続きます。最初のお酒は、千代鶴酒造の恵田(2年間低温熟成)で始めて、その後は勝駒純米吟醸と進めます。勝駒純米吟醸は、冷酒でもぬる燗でも料理に合います。

器は、「輪島塗・牡丹蒔絵吸物椀」です。修復が終わって新しく蘇ったお椀です。牡丹の季節は春から初夏にかけてですが、真新しくなったので使ってみました。

緑釉透亀甲紋向附

<脂ののった寒鰤のお造り>

冬型の気圧配置が強まると、寒ブリの群れが富山湾に仕掛けられた定置網に入ります。寒鰤のシーズン到来を告げる「寒ブリ宣言」は、もう間もなくです。

地響を伴った激しい雷鳴が轟き渡るのは、11月末から1月の間にかけて。北陸特有の冬期雷です。富山湾に強風が吹き荒れ、沖合では大シケが続き閃光が走ります。鰤の豊漁を告げる「鰤起こし」と呼ばれる気象現象です。

寒鰤のお造りは、上質な脂がのっていて絶品です。富山の地酒「勝駒純米大吟醸」、林酒造の「大吟醸黒部峡」が合います。

季節のうつわは「緑釉透亀甲紋向附」です。亀甲紋の透かしを大胆に取り入れた作品です。

祥瑞丸文蓋物

<祥瑞ラビリンス>

氷見漁協より「寒ぶり宣言」が出されると、富山湾の鰤漁が本格化します。氷見寒鰤の登録判定基準は、今年から7kg以上で定置網でとれた物に限ります。寒鰤の脂は、生臭みが全くないので、薄味で焚く蕪との取り合わせは、味の妙です。一般的には鰤と大根を濃味で焚く鰤大根が、郷土料理として親しまれています。

季節のうつわは「祥瑞丸文蓋物」です。藍青色の染付は、寒鰤の腹身の部位を美しく見せてくれます。見込みの細かな瓔珞紋様は器を引き立たせ、丁寧な筆の運びは見る人を和ませます。永楽妙全の作です。



金箔散六寸皿

<今が旬の香箱蟹>

香箱蟹(こうばこがに)は、津和井蟹の雌で雄と比べるとかなり小ぶりです。活蟹会席の一皿です。サイズが小さいので、丁寧に身を抜き甲羅に盛り付けます。つぶつぶの茶色の卵は外子で特別の食感が味わえます。旨みが凝縮された味噌とオレンジ色の内子は濃厚な味で格別の旨みがあります。

季節のうつわは「金箔散六寸皿」です。黄金の輝きに中に、香箱の赤色が映えます。