白山菊(シラヤマギク)は、宇奈月の山地の道傍や林縁などに生える、キク科の多年草です。
野菊の中でも茎の高さは高く、約1.5mぐらいになります。葉は洋紙質の三角形で互生します。頭花は茎頂に散房状につき、周囲の舌状花は白色で、数が少なく中心の筒状花は、黄色で多くあります。
別名「婿菜(ムコナ)」で草姿が大形なので、「嫁菜(ヨメナ)」に対しての名前です。
2024年9月
仁清色絵月薄絵皿
今年の中秋の名月は、9月17日でした。この時期は秋雨前線が日本列島にかかるため、月を愛でる日が少なくなります。中秋の名月に次いで風情のある十三夜は、10月14日前後になります。
富山湾では鬼鮋(オニカサゴ)や甘鯛などの底物が美味しくなる時期です。雅膳の一皿は、甘鯛味噌幽庵焼きです。
季節のうつわは「仁清色絵月薄絵皿」です。金彩、銀彩、緑釉を使い分けて名月と芒を描いています。床の間のお軸も月に秋草と秋の虫。秋分に入ると虫の音が、草叢から聞こえてきます。
深山秋の麒麟草(ミヤマアキノキリンソウ) キク科
深山秋の麒麟草(ミヤマアキキリンソウ)は、宇奈月の深山に生えるキク科の多年草です。
茎は太く直立し、高さ20~60cmぐらいで、秋の麒麟草の高山型です。葉は長楕円形で、互生します。頭花は黄色で、枝の先に密集して開きます。別名、黄金菊とも言います。
亜高山帯の山道の縁に多く見られ、一段と秋の深まりが感じられます。
蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)
9月28日から七十二侯は「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」で二十四節気「秋分」の次侯となります。集く虫たちが土の中にもぐり始める頃という意味で、虫たちの冬支度です。秋分の日を境に日一日と陽は弱く、昼が短くなります。
七十二侯に、真逆の「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」があります。半年前の七十二候で冬眠していた生き物が、春の日差しの元に出てくる頃という意味です。蟄虫(ちっちゅう)とは地中にこもって越冬する虫のことです。季節は確実に廻っています。
宇奈月温泉では、黒部の川風で幾分か肌寒さを感じるようになりました。この時期は、早めに宿に入り露天風呂で旅の疲れをいやすのが一番です。705号室の露天風呂は、黒部川の渕の色にも似た玉露色の陶器の浴槽です。その色調は、峡谷の木々の色合いにしっかりと融け込んでいます。源泉がほとばしる緑釉の吐水口は、信楽焼の陶芸家渾身の作品です。
花蓼(ハナタデ) タデ科
花蓼(ハナタデ)は、宇奈月の山野の林内や、林道沿いに多く見られるタデ科の一年草です。
タデ科の中では、桜蓼(サクラタデ)と共に花が最も可憐で、美しい野草です。 茎の下部は地を這い、分岐が旺盛で草叢を作ります。
葉は互生し、長卵形で先は細くなり尾状に尖っています。花序は細長く伸び、淡紅色の小さな花をつけます。
普段見慣れている風景の中にも、自然の魅力が多く隠されています。
仁清色絵紅葉紋平蓋向
富山湾に肌寒い風が吹くようになると、真鯛は脂が乗り甘みが強くなります。季節の松茸を添えて酒蒸しです。ポン酢で美味しく召し上がれます。
季節の器は、「仁清色絵紅葉紋平蓋向」です。紅葉は季語として使われますが、色付く段階で初紅葉、薄紅葉、黄葉、照葉、照紅葉と季語としての様々な表現があります。
犬蓼(イヌタデ) タデ科
犬蓼(イヌタデ)は、宇奈月の山道の縁や原野などに普通に見られるタデ科の一年草です。花や蕾が赤飯のように見えるところから、別名アカマンマで親しまれています。
茎の基部は、横に這って多く枝分けれして草叢を作ります。茎の先はやや立ち、紅紫色を帯びます。葉は互生し、披針形で葉の両端がとがり、葉先に向かってだんだん細くなります。
春から秋までの長い期間、茎の先から長さ1~5cmの花穂を出し、紅紫色の小さな花被を、密につけます。花の蕚と花冠との区別が形式的にない場合、両者を合わせて花被といいます。
「蓼食う虫も好き好き」の諺にある蓼は、河原に見られる柳蓼のことで、葉に辛味があります。犬蓼は辛味がありません。
大蟹蝙蝠(オオカニコウモリ) キク科
大蟹蝙蝠(オオカニコウモリ)は、宇奈月の山地のやや湿り気のある落葉樹林の林床、林縁に自生するキク科の多年草です。
茎は紫色になり、稲妻形に屈折しているものが多く、花期は8月から10月で地味で目立たない花です。茎頂にやや散房状に白色の細長い花頭をつけます。
コウモリソウの仲間で、葉の形が蟹の甲羅に似ているので蟹蝙蝠と呼ばれています。大蟹蝙蝠は蟹蝙蝠より葉が大きくて厚味があり、長い葉柄を持って茎に互生しています。蟹蝙蝠は花のつき方が下向きに対し、大蟹蝙蝠は上向きが多いようです。
山野草の和名は、葉の形に由来するものが数多くあります。
染付葡萄文皿
富山湾の底物の真鯛が美味しくなります。器を変えると料理の表情も変わります。雅膳の強肴は、真鯛の昆布締めです。富山県は昆布の消費量は日本一で、様々な料理に使用します。新鮮な魚を昆布で〆る事は、一般家庭で普通に行われていました。
季節のうつわは「染付葡萄文皿」です。葡萄文は葡萄の実や葉、蔓を意匠化したもので古くは奈良時代に登場します。実が多いことから多産の象徴とされ、吉祥文として好まれました。近世の葡萄文には栗鼠を加えて描かれることが多くなります。
陶磁器においては、鼠志野や志野織部に葡萄文が見られ、伊万里焼にも葡萄文や葡萄栗鼠文が多く見られます。柿右衛門様式の色絵にも葡萄栗鼠文が見られます。実りの秋は、器も多彩です。
姫紫蘇(ヒメジソ) シソ科
姫紫蘇(ヒメジソ)は、宇奈月の山道の縁に生える、シソ科の一年草です。
茎はシソ科の特有の四稜があり、節に白毛があります。葉は柄を持ち対生し、菱形状卵型で、縁に粗い鋸歯があります。
枝先に白色の小さな唇形花を多数穂状につけます。目立たない小さな花です。