秋の室礼(収穫の頃)

お食事処「清渓」と料理茶屋「竹次郎」の秋の室礼です。

今年も黒部川扇状地では、香り高いコシヒカリの収穫が終わろうとしています。名水の里では秋野菜が瑞々しく育っています。黒部の山では、キノコが出ています。実りの秋、収穫の頃です。

母なる黒部川に感謝し、実り多き土地に感謝し、黒部の自然に感謝した室礼です。

雷乃収声(かみなり すなわちこえをおさむ)

<叢叢賛歌(再興第70回院展)>
令和記念特別展「田渕俊夫 至極の日本画」より

9月23日から二十四節気は「秋分」を迎える。「春分」と同様、昼と夜の長さが同じになり、この日を境に陽は弱く短くなる。季節は少しずつ冬へと向かう。

七十二侯は「雷乃収声(かみなり すなわちこえをおさむ)」で、二十四節気「秋分」の初侯にあたる。黙黙と力強く湧く入道雲は消え、夕立時に鳴り響いた雷が収まる頃という意味。これに対して七十二侯の「雷乃発声(かみなり すなわちこえはっす)」は、二十四節気「春分」の末侯で、今年は4月1日であった。

雷の多い年は、豊作だと言われるくらい、お米には雷が密接に関係している。恵みの雨をもたらすのが雷雲。その閃光を稲妻と表現するのも、稲作文化の象徴かもしれない。
黒部川扇状地に広がる平野は、すでに稲刈りが終わっている所もあるが、これから始まるところもある。

黒羽峡谷・セレネ美術館では、令和特別記念展として、至極の日本画・田渕俊夫展が開催されている。その出品作品の中に「叢叢賛歌(再興第70回院展)」という名作がある。長久手時代の作品である。様々な雑草の生きる姿を通して、生命の賛歌を描く。そして季節などは一切無視して、自由自在に田渕画伯の草むらを作り上げる。二十四節気が、すべて包み込まれた世界のようである。

玄鳥去(つばめ さる)

<セレネで上演された、青い鳥>

9月18日から七十二侯は「玄鳥去(つばめ さる)」で二十四節気の「白露」の末侯にあたる。春に日本にやってきた燕が暖かい南の国へ帰る頃という意味。

20日は秋彼岸の入り。暑さ寒さは彼岸までの言葉通り、燕の渡りが始まる。燕がやってくるのは七十二侯の「玄鳥至(つばめ きたる)」で、今年は4月5日だった。宇奈月温泉で飛び交う燕は、岩燕で尾羽が短くやや小型である。

岩燕が去る頃、温泉街では毎年、宇奈月モーツアルト音楽祭が行われる。今年は9月14日から16日の3日間行われ、温泉街がモーツアルトの調べに包まれた。豊かな自然に恵まれた、山あいの出湯ならではの情緒である。

8月23日から行われている、国際的な舞台芸術の祭典「第9回シアター・オリンピックス」はロシアとの共同開催で、9月23日まで行われる。今年から宇奈月国際会館「セレネ」は、鈴木忠志氏の粋な計らいによって会場の一つに加えられた。

セレネ美術館では田渕俊夫画伯の展覧が、10月14日まで開催されているので、質の高い芸術がまだまだ楽しめる。祭典が終わると、秋が深まり月影さやかな時季を迎える。

鶺鴒鳴(せきれい なく)

<お気に入りのセレネでの演奏会>

9月13日から七十二侯は「鶺鴒鳴(せきれい なく)」で二十四節気の「白露」の次侯にあたる。季節は中秋で、鶺鴒が鳴き始める頃という意味。9月13日は中秋の名月である。

鶺鴒は、宇奈月周辺で春から秋にかけての長い期間見られ、舗装された山道をチチッチチッと高い鳴き声を発して、長い尾をしきりに上下に振りながら小走りに動く。まるで道案内をしてくれるかのように。黒部の渓流沿いや、宇奈月谷などの水辺に棲む。

古くは、日本神話の国産みの神聖な鳥として日本書紀に登場する。白い鶺鴒の季語は秋。我が国では白というと雪を連想するが、中国では五行思想により、白は秋の色とされている。

宇奈月温泉では9月14日から9月16日まで宇奈月モーツアルト音楽祭が開催される。この間、宇奈月温泉はモーツアルトの音楽に包み込まれます。催し物として、無料のまちかどコンサートや、オペラ公演、オーケストラ公演などが行われる。なかでもお薦めは、9月14日の古澤巌のヴァイオリンソロで、トークとソナタが楽しめる企画である。

草露白(くさつゆ しろし)

<萌黄色の最も美しい季節をとらえた院展出品作品>

9月8日から二十四節気は「白露」となる。朝晩の気温差が大きくなると露が降りるようになる。暦便覧には「陰気ようやく重なり露凝って白し」と。夏の気配を残しつつも朝夕は涼しくなり、草花に朝露がつくようになるという意味。

七十二侯は「草露白(くさのつゆ しろし)」で、「白露」の初侯。草に降りた露が白く光って見える頃という意味。早朝に僧ヶ岳の登山道を行くと、草露に足下が濡れる。白露に濡れた紅紫色の秋桐や釣舟草が心に残る。

黒部峡谷・セレネ美術館では、10月14日まで令和記念特別展として田渕俊夫画伯の至極の日本画展を開催している。黒部川扇状地をとらえた屏風作品「大地」は、1998年の院展出品作。

残雪が未だ多い後立山連峰。新緑の美しい山の端。田圃に水が張られた田植え時期。5月末の黒部平野の風景である。黒部の生命の息吹が最も感じられる季節に、ヘリコプターを使って扇状地を取材した作品。黒部の水をテーマに創作された田渕作品の数々。芸術の秋にふさわしい展覧会である。

禾乃登(こくのもの すなわちみのる)

<夜が深まるにつれ艶やかになる>

9月3日から七十二侯は「禾乃登(こくのもの すなわちみのる)」で二十四節気の「処暑」の末侯にあたる。禾の文字は、植物の穂の形からできており豊かな実りを象徴する。

稲穂が膨らんで田圃が黄金色になる二百十日は、台風到来の時節である。風の厄日に風神鎮魂を願う踊り「おわら風の盆」が行われる。今日は9月3日で最終日である。舞台となる八尾は井田川と別荘川が作り出した河岸段丘に石垣を築いて拓いた坂の町である。三味と胡弓が奏でる叙情性あるおわらの旋律は、訪れる人々を魅了する。

新作おわらの代表作は小杉放庵が詠んだ「八尾四季」である。

ゆらぐつり橋手に手をとりて
 渡る井田川 オワラ 春の風
富山あたりかあの灯火は
 飛んでゆきたや オワラ 灯とり虫
八尾坂道わかれてくれば
 露か時雨か オワラ はらはらと
若しや来るかと窓押しあけて
 見れば立山 オワラ 雪ばかり

昭和3年に川崎順二に招かれて詠った歌である。 その行き帰りに必ず延楽で長逗留された。今でもその足跡は数多く残されている。