西王母(せいおうぼ)

初冬の椿

宇奈月の野山に初雪が降りて山野草の終りを告げる頃、心を和ましてくれるのは椿です。西王母は、ツバキ科の早咲きの常緑高木で、11月から春にかけて咲きます。

西王母は、金沢に古くから伝わる名花で、加賀侘助の自然実生と推定されます。桃色紅ぼかしの一重で、中ふくらみの筒咲きの形や、蕾のふっくらとした丸さも茶人に愛されてきました。

椿は、茶花として古くから愛用されてきましたが、昔は藪椿を主体に薄色椿と呼ばれるものが古書に登場します。これは特定の品種を指すものでなく、淡い桃色や特に白色を含めて呼ばれていた品種群を指しています。薄色が愛用されたのには、当時の茶室の明るさとも関係があったのかもしれません。

茶花として用いられる品種は、白玉、初嵐、曙、加茂本阿弥、乙女、太郎庵、西王母、有楽、侘助、太神楽、角倉、妙蓮寺、紅唐子、黒椿、散椿、袖隠、臘月、羽衣等があります。

紫式部(ムラサキシキブ) クマツヅラ科

<落葉後も枝に残る>

紫式部(ムラサキシキブ)は、宇奈月の山野に生えるクマツヅラ科の落葉低木で、小枝は斜上します。

葉は単葉で、葉身は8cm前後の長楕円形で、縁には細鋸歯がありま。初夏、葉腋のやや上部から集散花序を出し、淡紫色の小花を多数つけます。降霜のころ、葉は虫食いの照葉になり石果は光沢のある濃紫色に熟します。落葉後も実は枝に残ります。

紫式部は、宇奈月の今年の最後の山野草で、シーズンの終わりを告げます。雪解けの早春から新たな山野草が宇奈月の山野に芽生えます。

吊花(ツリバナ) ニシキギ科

<色鮮やかな蒴果>

吊花(ツリバナ)は、宇奈月の山地の樹林内に生える、ニシキギ科の大形の落葉低木です。

全株無毛で、樹皮は灰色になり、本年枝は丸く細くて緑柴色です。葉は短柄で単葉で対生し、長楕円形で縁には細かい鋸歯があります。

5~6月、葉腋に柄のある集散花序をつけ、十数個の小花をまばらに下垂して開きます。花は淡緑色で5数性です。10月、球形の蒴果は紅色に熟し5裂します。

洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ) ヤマゴボウ科

<大形の多年草で帰化植物>

洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)は、宇奈月の路傍の生える、ヤマゴボウ科の大形の多年草で、北米産の帰化植物です。

明治年間に日本に入り、各地に繁殖しています。茎は直立して高さ1~2mとなり、丈夫で分岐し、茎は紅紫色を呈します。葉は互生して、長楕円状披針形で鋸歯はありません。7~9月、柄のある総状花序をだし、白色の小さい花を咲かせます。

10月、花穂は垂れ、果実は葡萄の房状になり、艶のある黒色になります。

蔓苦草(ツルニガクサ) シソ科

<道端のやや湿った土地に生える>

蔓苦草(ツルニガクサ)は、宇奈月の山野の林縁などに生えるシソ科の多年草です。

根茎は細長く地中を這います。茎は高さ20~80cmでシソ科特有の四角形で細かい毛があります。葉は対生し、長い柄があり長卵形で先は尖り、基部は細くなり縁には粗い鋸歯があります。

8~10月、上部の葉腋から総状花序を出し、小さな唇形花を多数つけます。

水玉草(ミズタマソウ) アカバナ科

<小さな可憐な花をつける>

水玉草(ミズタマソウ)は、宇奈月の山の木陰に生える、アカバナ科の多年草です。

茎は直立し、高さ20~60cmぐらいになります。葉は対生し小さな葉柄があり、葉身は広披針形でまばらに低い鋸歯があり、先はとがっています。
9月から10月頃、茎の先や上部の葉腋に、総状花序を出し小さな白色を帯びた花をつけます。

水玉のように小さな可憐な花なので、見過ごしてしまいます。

薬師草(ヤクシソウ) キク科

<花は鮮やかな黄色で固まって咲く>

薬師草(ヤクシソウ)は、宇奈月の日当たりのよい山野の路傍や草地に生える、キク科の多年草です。

茎はよく分枝して高さ30cm~120cmになります。初期には根出葉がありますが、花時には無くなり、茎葉だけになります。茎葉は互生し倒卵形で縁に浅い鋸歯があり、基部は後方に丸く張り出し、茎を抱きます。

夏から秋にかけて、枝先や上部の葉腋に、黄色の頭花を数個ずつ付けます。

背高泡立草(セイタカアワダチソウ) キク科

<群生する外来種>

背高泡立草(セイタカアワダチソウ)は、宇奈月の荒れ地や堤などで大群生する、北米原産のキク科の大型多年草です。

茎は高さ2m位にもなり、葉は披針形で互生しています。秋になると茎頂が分岐して、大型の円錐花序になり黄色の小頭花を多数つけます。

日本へは蜜源植物として導入されました。

犬塔花(イヌトウバナ) シソ科

<小花をたくさんつける>

犬塔花(イヌトウバナ)は、宇奈月の山の木陰や路傍に生える、シソ科の多年草です。

茎は、シソ科特有の方形で長さが30cm前後です。葉は、狭卵型でやや薄く、縁には鋸歯があり対生しています。夏から秋にかけて茎の先に花穂を作り、輪生状に淡紅紫色を帯びた小花を付けます。萼は筒状で、先は2唇に分かれ、上唇は3裂、下唇は細く2裂になります。

雌待宵草(メマツヨイグサ) アカバナ科

<帰化植物の一種>

雌待宵草(メマツヨイグサ)は、宇奈月の日当たりの良い草地に生える、アカバナ科の北米原産の帰化植物です。

根出葉は細長く鋸歯があり、茎上の葉はやや小さく広披針形です。葉腋に単生し、花弁は4個で黄色で変異が大きです。花弁と花弁の間に隙間があるものがアレチマツヨイグサで、隙間のないものはメマツグサです。