富山湾に冷たい北風が吹くようになると、真鱈が美味しくなります。新鮮な白子はポン酢で食すと格別な旨味があります。雲のように見えるので雲子と呼んでいます。身は昆布で〆て真子をまぶします。鱈の子付として地元では食されています。
季節の器は、「灰釉割山椒向付」です。灰釉(かいゆう)は植物の灰を加えた釉です。植物の灰にはアルカリ金属が含まれ、これが高温になると素地の中の長石を溶かしてガラス化します。色は黄緑色や白濁色になります。
2024年11月
色絵龍田川八寸皿
秋の雅膳の焼き物は、目鯛の西京焼きです。焼舞茸と唐墨を添えてあります。秋の深まりを味わってください。黒部の山々は極彩色に染まりました。
季節のうつわは「色絵龍田川八寸皿」です。器でも秋の深まりを味わえます。
寒椿蒔絵吸物椀
津合蟹(ズワイガニ)漁は、11月7日から解禁となりました。今年も延楽の活蟹料理を求めて、全国から沢山のお客様がお越しになります。 活蟹会席の吸物は蟹真丈です。極上の出汁と蟹の旨味を味わう至福の一時です。
季節の器は、「寒椿蒔絵吸物椀」で、寒椿をあしらったお椀です。初雪に寒椿が合います。雪化粧した枝の間から赤色の花があらわれます。
着彩柿葉皿
黒部峡谷は錦繍に輝くようになりました。延楽の対岸の稜線に7日未明、今年初めての雪化粧です。いよいよ黒部の三段染めがご覧いただけます。富山湾では秋魳(アキカマス)が水揚げされています。秋魳の磯部揚げです。
季節のうつわは、三代目澤村陶哉の「着彩柿葉皿」です。紅葉の季節に相応しい色鮮やかな器です。葉表は濃淡を生かした鮮やかな赤絵に緑釉が載せられ、葉脈もはっきりと彫り込んであります。
活蟹会席
津合蟹(ズワイガニ)漁は、11月6日から解禁となりました。今年も活蟹料理を求めて、全国から沢山のお客様がお越しになります。蟹を最もおいしく召し上がっていただくために、調理方法を長年研究してまいりました。
料理内容は、先ずは季節の前菜で始まり、時を見計らって特製出汁の吸い物で箸休め。次の料理は蟹の洗いです。透き通るような活蟹の身を、氷水にさらした蟹の洗い。とろけるような食感の中に濃い甘みが口いっぱいに広がります。
蟹味噌を甲羅焼きで召し上がっていただいてから、焼蟹の始まりです。板前がお客様の目の前で焼き上げます。焼き加減は、中身はあくまでジューシーになるように。続いて特製だしを張った蟹すき。その後はお肉を少し。ブランド牛として評判の氷見牛石焼です。そしてこの後もお料理が続きます。
黒部の山々が、うっすらと雪化粧をすると富山湾の津合蟹漁が最盛期を迎えます。
山茶始開(つばきはじめてひらく)
11月7日から二十四節気は「立冬」に入ります。暦の上では冬の到来ですが、宇奈月温泉周辺の紅葉が最も美しく映える頃です。
七十二侯は「山茶始開(つばきはじめてひらく)」で、二十四節気「立冬」の初侯となります。太陽の気配が弱くなり、木枯らし1号が吹くのもこの頃です。他の草花が枯れてしまう中、鮮やかな濃紅な山茶花が咲き始める頃です。
奥黒部の山々は新雪で白さを増し、宇奈月温泉の山々の稜線は薄っすらと雪化粧。黒部の三段染めを楽しめる頃を迎えます。延楽の総檜露天風呂「華の湯」の湯鏡に、錦繍の峡谷が色濃く映り込みます。山が紅に染まると北西からの強い風が吹くようになり、本格的な冬の到来です。
富山湾では冬の味覚、津合蟹(ズワイガニ)漁が6日から解禁となりました。漁はこれから年末にかけてピークとなり、雄が3月20日まで、雌は1月20日まで漁期となります。
湯量豊富で肌に優しいお湯と津合蟹は、冬の宇奈月温泉の最高の取り合わせです。
呉須赤絵福字皿
秋から冬にかけて旬となる目鯛は、脂が程よく乗って美味しくなります。伝統の西京漬は、焼き物として格別の味わいがあります。のど黒も脂がのり美味しくなります。
季節のうつわは「呉須赤絵福字皿」です。花の芯に金彩が使われているので、華やかで優しさがあります。永楽妙全の作品です。
紫式部(ムラサキシキブ) クマツヅラ科
紫式部(ムラサキシキブ)は、宇奈月の山野に生えるクマツヅラ科の落葉低木で、小枝は斜上します。
葉は単葉で、葉身は8cm前後の長楕円形で、縁には細鋸歯がありま。初夏、葉腋のやや上部から集散花序を出し、淡紫色の小花を多数つけます。降霜のころ、葉は虫食いの照葉になり石果は光沢のある濃紫色に熟します。落葉後も実は枝に残ります。
紫式部は、宇奈月の今年の最後の山野草で、シーズンの終わりを告げます。雪解けの早春から新たな山野草が宇奈月の山野に芽生えます。
黄瀬戸輪花向付
秋の深まりと共に、キノコや根菜類の秋野菜が旨みを増してきます。含め煮にした野菜に出汁のきいた葛餡を掛けて吉野仕立てにします。
季節のうつわは「黄瀬戸輪花向付」です。黄瀬戸は桃山時代に美濃で作られた黄色の焼物で、鉢や向付などの食器に優品が多く見られます。加藤唐九郎は、黄瀬戸を最も広く定義し、瓷器手、ぐい呑み手、菖蒲手、菊皿手の四種類に分類しました。
「黄瀬戸輪花向付」は、菖蒲手で油揚げ肌と呼ばれる失透明性の釉調の物です。装飾として胆礬(たんぱん)や鉄彩といった加飾の技法が用いられ、緑色や茶色とが彩となりますます。特に胆礬が器の表裏に現れるものを抜け胆礬と言って高く評価されます。秋の深まりを黄瀬戸で味わいください。
楓蔦黄(もみじつたきばむ)
11月2日から七十二侯は「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」で、二十四節気「霜降」の末侯となります。楓や蔦が黄色く色付き、紅葉が最も美しくなる頃という意味です。
宇奈月温泉周辺は黄色や赤に彩られ、日一日と色が濃くなります。黒部の谷では深紅がこれから鮮やかになります。黒部峡谷には楓の大樹が数多く自生し、なかでも赤く染まるのは、ハウチワカエデ、ウリハダカエデ、イロハモミジ、ヤマモミジ等があります。黄色く色づくものは、イタヤカエデ、ヒトツバカエデ等があり、針葉樹や常緑樹の緑と流れる水の青さなどが入り混じり、峡谷は極彩色に彩られます。
黒部峡谷・セレネ美術館の所蔵作品の中に、塩出英雄氏の「遠山初雪」があります。11月初旬、画伯を黒部峡谷鉄道の終点である欅平から工事用の立坑エレベーターを使い、展望台へとご案内しました。そこには初冠雪を戴いた白馬連山が神々しく輝いていました。左手の欅平側の名剣山は紅葉真っ盛りで、山々が赤と黄色に染まっていました。画伯は、黒部の渓谷は、宗教的な荘厳な輝きを帯びていると感嘆の声をあげられたのが印象に残っています。まさに極彩色を帯びた黒部奥山の秋です。