魚上氷(うおこおりをいずる)

<黒部川にそそぐ琴音の滝>

2月13日から七十二侯は「魚上氷(うおこおりをいずる)」で、二十四節気「立春」の末侯になります。春の兆しを感じて魚が動き始め、割れた氷の間から飛び出す頃という意味です。

宇奈月温泉は、近年にない豪雪で黒部川の河原には雪が多く残っています。その中を渓流が流れています。宿の対岸に小さな滝があり、長い年月をかけてほど良い大きさの滝釜となっています。

延楽の創業者の友人である洋画家の中川一政画伯のお気に入りの滝で、「琴音の滝」と名付けました。滝から黒部川に流れ落ちる清流の岩陰に、山女魚の稚魚が春めく時を待っています。

群れている稚魚の中に降海型の山女魚(ヤマメ)がいます。1年川で過ごした後、海へ落ちてカムチャッカ半島近あたりまで行き、3年後に大きな桜鱒となって戻ってきます。母なる黒部川で毎年見られる晩秋の風物詩です。