地始凍(ちはじめてこおる)

<深まりゆく黒部の秋>

11月12日から七十二侯は「地始凍(ちはじめてこおる)」で、二十四節気の「立冬」の次侯となります。陽気が弱まって日ごとに冷え込みが増し、大地が凍り始める頃という意味です。

冷たい時雨が降ったりやんだりを繰り返し、ひと雨毎に冬へと近づいていきます。黒部峡谷の紅葉はまだまだ見ごろで、色濃い黄金色と深紅の照り葉が美しく輝いています。

宇奈月温泉散策コースの一つである「やまびこ遊歩道」は、様々な木々の落ち葉が折り重ねっているので気持ちよく歩けます。柑橘系の香りを漂わせるクスノキ科の壇香梅や、大葉黒文字の落ち葉は黄金色に輝いています。春にはいち早く花を咲かせる樹木達です。

黒部の三段染め

<黒部の算段染めと、サクラマスの産卵>

宇奈月ダム周辺は、紅葉が見ごろを迎えています。後ろには雪化粧をした駒ヶ岳を望むことができ、黒部の三段染めとなります。
先日まで黒部川支流にサクラマスが産卵のために遡上してきていたのですが、すでに卵を産み終えたのか姿が見えません。産卵を促すかのように鳴くカワガラスの姿も見えなくなりました。
サクラマスは橋の上から見ると石とよく似た保護色なので、分かりずらい。産卵を始めるとき、場所を確保するため川底に堆積した砂利を胸鰭で掘り起こします。その時、体の角度が変わるので一瞬銀色に輝きます。それを見つけると巨大魚の姿が容易に掴むことができます。
孵化した稚魚はすべてヤマメです。ヤマメの稚魚の中に降海型のDNAを持った個体がいます。これが1年ほど川で過ごし、富山湾に落ちて北へと旅立ちます。カムチャッカ半島あたりまで行って、再びふるさとの川に戻り産卵をします。
これがサクラマスの習性です。
産卵が終わると、黒部の紅葉が最盛期を迎えます。