宮廻正明展:(無極)

<宮廻正明:「道の空(薮田小学校)」>

10月13日から七十二侯は「菊花開(きくのはな、ひらく)」で、二十四節気の寒露の次侯にあたる。菊が咲き乱れる頃という意味。各地で菊祭りが開かれる頃である。

芸術の秋、黒部峡谷セレネ美術館では開館25周年を記念して「宮廻正明展:(無極)」が開催されている。宮廻正明画伯は、近年では最新の科学技術と芸術を結び付けたクローン文化財のリーダとして脚光を浴びている。

最初の部屋に展示されている大作が「道の空」、富山県氷見市の薮田小学校である。取材時にはすでに廃校になっていて、解体される運命にあった。平成5年、ブリお越しの取材に行く途中、薮田小学校の前を通過したとき校庭にはいくつもの水たまりがあり空と雲が映りこんでいた。宮廻画伯は直ぐにスケッチを始める。

薮田というと浅野コンツェルンを一代で築き上げた浅野総一郎の故郷である。京浜工業地帯の生みの親でもある。このプロジェクトに昭和2年から加わるのが、宇奈月温泉の生みの親の山田胖である。浅野は、山田胖の電気事業に対する優れた見識と卓越した経営手腕を高く評価し、系列会社へ役員として迎え入れる。

宮廻画伯の作品は二人の結びつきを物語っているかのようでもある。山田胖氏のお孫さんが東京芸術大学で、宮廻画伯の後輩であるというのも不思議な縁である。

展覧会の会期は10月13日から11月25日まで。