春紫菀(ハルジオン) キク科

<日当たりのよい荒れ地に群生している>

春紫菀(ハルジオン)は、宇奈月の道端や空き地等の窒素分の多い場所に群生するキク科の多年草です。
北アメリカ原産の帰化植物で、全国各地で雑草化しています。

茎の高さは30cmから80cmぐらいで、あまり分岐せずに直立しています。
根元には篦型の根出葉があり、花の時期にも残ります。
茎葉の基部は耳状に張り出して茎を抱きます。
頭花は舌状花は白色あるいは淡紅色で、筒状花は黄色で長径2㎝ぐらいです。
蕾の時は、花序全体が下向きです。

よく似たヒメジオンは、茎がより高く茎は空洞になっていません。
蕾は下向きにならないです。

山吹(ヤマブキ) バラ科

<黄金色の山吹は周りを華やかにする>

山吹(ヤマブキ)は、宇奈月谷沿いに群生するバラ科の落葉低木です。
幹は叢生し広がっていきます。

葉は、2列に互生して卵形で二重鋸歯があります。
花弁は黄金色で5個から8個あり平開します。
山吹は、どんな花とも相性がよく、生けやすい花です。

付近には棘のある紅葉苺も自生しています。
どちらもバラ科なので枝や葉がよく似ています。

金瘡小草(キランソウ) シソ科

<地面に張り付くようにロゼット状に葉を広げる>

金瘡小草(キランソウ)は、宇奈月の山道の道端に多く見られるシソ科の多年草です。

根出葉はロゼット状で、 茎はシソ科の中では珍しく円形で、地上を這って四方に伸びます。節の葉腋に碧青色の唇形花を数花付けます。上唇は短く2裂し下唇は平らに大きく発達して3裂し、中央が切れこんだようになって浅く2裂します。

開花期の全草は、筋骨草という生薬として知られています。

大立坪菫(オオタチツボスミレ) スミレ科

<林縁にひっそりと咲く菫>

大立坪菫(オオタチツボスミレ)は、宇奈月の山の木陰や林内に生えるスミレ科の多年草です。

豪雪地帯に多く見られるスミレで、茎は地下茎から多数出て長さ20cmから40cmぐらいになります。 葉は、円心形で大きくて先が尖らないのでタチツボスミレと区別ができます。 花は地上茎の葉腋からでて長い柄があり、淡紫色で可憐に開花します。

花が終わる初夏には小さな蕾のように見える閉鎖花を出し、果実を作ります 。

一人静(ヒトリシズカ) センリョウ科

<樹林内でひっそりと咲く一人静>

一人静(ヒトリシズカ)は、宇奈月の山林内に生えるセンリョウ科の多年草で、日本固有種です。
根茎から地上に出る茎は直立し、その先に1本の穂状花序を出します。
小さな白い花糸からなる姿が名前の由来です。
頂部の 輪生しているかのように見える4個の葉は、対生する2組の葉からなり、縁には鋸歯があり光沢があります。

「万葉集」や「古事記」には「次嶺(つぎね)」と表記されています。
幾つもの山を越えたところにある事に由来しているようです。
穂状花序が2本の二人静(フタリシズカ)はこの後、咲き始めます 。

木通(アケビ) アケビ科

<新緑の若葉と薄紫の花が美しい>

木通(アケビ)は、宇奈月の山中で見られるアケビ科の落葉性木本です。 アケビのように地上部が多年にわたって繰り返し開花、結実し、茎が木化し肥大成長した物を木本(もくほん)といいます。これに対して地上の茎の木部があまり発達せず、1年から数年で枯れる植物を草本(そうほん)と言います。

蔓は左巻きに他の木に絡み成長します。 花は短枝から総状花序を下垂し淡紫色の小花を開かせます。 葉は五個の掌状複葉で、まれに七葉のアケビも見られます。 三葉の物は三葉木通(ミツバアケビ)で、紫褐色の花はお茶花として好まれています。

春虎の尾(ハルトラノオ) タデ科

<樹林内に可憐な花をつける春虎の尾>

春虎の尾(ハルトラノオ)は、宇奈月の落葉樹林内に自生するタデ科の多年草です。
花は、高さ10cm位の花茎の先に密な花穂をつくり、白色でわずかに淡紅色をおびています。
和名は、 花穂を虎の尾に見立て春早く咲くところに由来します。
地下茎は、横に這って所々膨らみ、根出葉は長楕円形で長い柄があります。
花茎の基部の葉はやや心形型です。
宇奈月の樹林内で、かたくりの群落の中にまとまって咲いているのをよく見かけます。
この山野草も初夏には姿を消してしまうスプリング・エフェメラルの一種です。

三葉躑躅(ミツバツツジ) ツツジ科

<黒部峡谷の断崖に咲く三葉躑躅>

三葉躑躅(ミツバツツジ)は、黒部峡谷の岩場や痩せた尾根に自生するツツジ科の落葉低木です。

4月から5月にかけて峡谷や山の岩場を美しく彩ります。
枝は車状に出て、枝先の混芽から2、3個の紅赤色の花を付け、葉は後にでます。
花冠は、深く5裂し雄蕊は5個なのに対して、一般の躑躅は10本なので見分けがつきやすいです。
花が終ると枝先に3枚の葉が輪生するところからこの名が付きました。

早朝ウォークのコースの中で、山彦鉄橋を渡りきると岩場の上部で花を見かけます。
新緑の中に紅をさす色合いは、春ならではの光景です。

紫華鬘(ムラサキケマン) ケシ科

<儚く消える花です>

紫華蔓(ムラサキケマン)は、宇奈月の林道沿いの林縁や藪陰に多く見られるケシ科の越年草です。茎は柔らかく多汁質で紅色をおびています。 葉は根生し、2回3出複葉で柔らかくて先端には鋸歯があります。 瑞々しい薄い葉は、裏から光を当てると美しく萌葱色に浮かびます。

落葉樹の葉が成長し、その葉で陽光が遮られるとすぐに消えていく儚い春の植物で、スプリング・エフェメラルです。根にしっかりと栄養を蓄えますので、来春も美しい花をを咲かせます。 美しい花ですが、全草にプロトピンというアルカロイドを含む有害植物なので注意が必要です。

山延胡索(ヤマエンゴサク) ケシ科

<春の妖精のような花>

山延胡索(ヤマエンゴサク)は、宇奈月の落葉樹林や林縁の適湿地に開花するケシ科キケマン属の多年草です。

全体に毛が無く10cm前後の繊細な山野草です。葉は、2個互生し3出羽状複葉で柔らかく、切れ込みが入り緑色が最も美しい葉です。花は茎の上部に総状花序につき、淡い青紫色や濃い赤紫色まで様々な色のものがあります。花の長さは2cm位で、筒状で先が唇形に開きます。

 淡い色と姿から「水色の妖精」とも呼ばれています。 宇奈月温泉の原野では、菊咲一華の隣で咲いているのが見られます。 春の山野草をめでる季節の到来です。