丁子菊(チョウジギク) キク科

<渓流の岩場を好む丁子菊>

丁子菊(チョウジギク)は、宇奈月の深山の湿地に自生するキク科の多年草です。 地下茎を伸ばし、40cm前後の丈を持つ茎を叢生させます。

葉は、長楕円状披針形で先は次第に細くなり対生し、縁には浅くて鋭い鋸歯があります。茎頂の葉腋から花柄を伸ばし頭状花を散房状につけます。花柄には母子草のように白い毛が密生し、黄色の管状花をつけます。

黒部峡谷・下の廊下の沢沿いでもよく見られます。

小金鈴花(コキンレイカ) オミナエシ科

<亜高山の岩場に生える小金鈴花>

小金鈴花(コキンレイカ)は、宇奈月の亜高山の岩場に生える、オミナエシ科の多年草です。

地下茎は横にはい、匍匐枝(ホフクシ)を出して増えます。匍匐枝とは、地上近くを這って細長く伸び、そのさきに芽を付ける茎のことで、その節から新しい茎が伸び増えていきます。葉は対生し、裂片には大きな欠刻と鋸歯があります。茎頂には黄金色の小花を散状花序に多くつけます。

黒部峡谷・下の廊下の岩場でもよく見かけ、別名、白山女郎花(ハクサンオミナエシ)ともよばれています。紅葉の下の廊下を歩いていると、オミナエシ科の独特のに匂いがします。和名は、白山に多く見られることに由来します。温泉街周辺では女郎花(オミナエシ)の白花の男郎花(オトコエシ)が咲いています。

雌宝香(メタカラコウ) キク科

<深山の湿地に自生する>

雌宝香(メタカラコウ)は、雪解け水が流れている沢沿いに自生するキク科の多年草です。 蕗のような大きな葉が特徴で、冷たい水が流れている湿地を好みます。大形のオタカラコウと同じ環境で生育します。

根茎は太く、茎は直立して高さは60~100cm位になります。根出葉は長柄のある心臓状三角形で、茎葉は3個あり上のものほど小さくなり、縁に鋭い鋸歯があります。

茎の上部に頭花を総状につけ、黄色の頭花は1~3個の舌状花と6~7個の両性花から成り立っています。頭花は下部から上向きに咲き上がります。和名はオタカラコウより小形で草姿が優しいことに由来します。

高嶺松虫草(タカネマツムシソウ) マツムシソウ科

<高山蝶の好む花です>

高嶺松虫草(タカネマツムシソウ)は、宇奈月の高山に生えるマツムシソウ科の越年草です。マツムシソウの高山変種で、基本種と比べると、茎の長さは短く頭花は大きくなります。別名、深山松虫草(ミヤママツムシソウ)ともいいます。

長い柄を持った根出葉があります。葉は対生し羽状に分裂し、裂片はさらに裂けるものがあります。 長い花柄の先端に、1個の淡紫色の頭花をつけます。総苞片は線形で2列に並びます。苞とは蕾を包むように葉が変形した部分で、蕾が開いてから花の基部に残ります。花序全体の基部を包む苞が総苞で、個々の総苞を総苞片といいます。

頭花の周辺にある小花は、5裂した外側の花冠裂片が長く伸びます。頭花の中心部分の小花は、筒状で等しく5裂する花冠をもちます。この花には、高山蝶がよく集まります。白馬岳一帯の宇奈月側の風衝岩屑には、淡紅色や白色の種も生育しています。

金水引(キンミズヒキ) バラ科

<ひときわ目立つ、鮮やかな黄金色>

金水引(キンミズヒキ)は、宇奈月の山路の縁などの草叢に自生するバラ科の多年草です。

葉は互生し、羽状複葉で小葉は不揃いで、大きな托葉があります。花は黄金色で茎の上で枝分かれして、総状花序を付けます。和名は水引(ミズヒキ)とよく似て、しかも黄金色であることに由来します。 ミズヒキは、タデ科で金水引はバラ科なので、全く種類が異なります。

9月下旬ごろ花が終わり種子になります。 その種子には鉤状のとげがあり、これが動物の体につき広範囲にわたり分布されます。 金水引は、別名龍牙草と呼ばれ、漢方では口内炎や下痢止めに効くとされます。

宇奈月の樹林内では、小形の朝鮮水引も自生します。

蕗雪ノ下(フキユキノシタ)  ユキノシタ科

<雪解け水のしぶきがかかる沢沿を好む>

蕗雪ノ下(フキユキノシタ)は、宇奈月の深山の雪解け水が流れる沢に生えるユキノシタ科の多年草です。

根葉は多数出て、長柄ほぼ円形で、基部が心形で縁に不ぞろいの尖った鋸歯が並びます。 花茎には疎らに微毛があり、それに水しぶきによる水滴が一面につき美しく輝いています。 花は円錐状の小花で花茎に多く付きます。

亜高山帯では、同種の黒雲草(クロクモソウ)が見られ、花の咲き方がよく似ています。

犬芥子(イヌガラシ)  アブラナ科

<小さな花は犬辛子>

犬芥子(イヌガラシ)は、宇奈月の山路の縁に自生するアブラナ科の多年草です。

秋に種子から発芽して、冬には根出葉が地表にロゼット状に広がります。葉は、長い楕円形で羽状に分裂し、縁に粗い鋸歯があります。花は総状花序につき、花柄のある小さな黄色の花を咲かせます。果実は円柱状の線形の莢(サヤ)になり、熟すと裂開して種子を出します。

和名は、芥子に似ているが食べられない、まがいもという意味に由来します。役に立たない雑草にはイヌという名前がよくつけられます。イヌトウバナ、イヌガンピ、イヌゴマ、イヌタデ、イヌナズナ等があります。

紅葉唐松(モミジカラマツ) キンポウゲ科

<深山の落葉樹林内に咲く紅葉唐松>

宇奈月の亜高山帯の湿った谷筋に生える、キンポウゲ科の多年草です。

地下茎を出して繁殖しますので群生します。根出葉はい1~3個で長い柄がり、葉身は円形から半円形で7~9裂し複雑な形になります。上部の茎葉は小形で柄が短くなっています。茎の先に散房花序に花をつけ、花弁はありません。

葉が紅葉手になっているのと、白色の花糸を唐松に見立てたのが名前の由来です。

山蛍袋(ヤマホタルブクロ) キキョウ科

<長野県側は山蛍袋>

山蛍袋(ヤマホタルブクロ)は、黒部峡谷・日電歩道の切り立った崖沿いに自生しているキキョウ科の多年草です。

宇奈月温泉周辺では白色の蛍袋(ホタルブクロ)が道路沿や山道の日陰になるところで自生しています。 蛍袋は萼と萼の間に上に反り返った付属片がありますが、山蛍袋は付属片がなくすっきりとした萼です。 花は色つきのものが多く、釣鐘型で先端部が5裂しています。 小雨に濡れた花は下向きなので、昆虫達の絶好の雨宿りの場所になります。

国道148号線を糸魚川から白馬方面へ走ると、花の色が白色から淡紅色に変わるのが観察できます。

赤花(アカバナ) アカバナ科

<小さな花なので目立たない>

赤花は、宇奈月の山路の縁や水湿地に生えるアカバナ科の多年草で、根茎から地下茎を伸ばします。

茎は、稜がなく円柱形で上部でよく分枝し、高さ20~70cmになります。葉は対生し、短い葉柄があるか無柄でしばしば茎を抱きます。葉身は、卵状披針形で基部はやや心形で、縁にあらい鋸歯があります。

茎頂に、白色や淡紅紫色の可憐な小花をつけます。花弁が4個あり、小さいながらも先端が浅く2裂になってます。和名は、茎、葉、果実のすべてが紅葉する草紅葉に由来します。