山鳥兜(ヤマトリカブト) キンポウゲ科

<雅楽の鳥兜に似ている>

山鳥兜(ヤマトリカブト)は、宇奈月の深山に生えるキンポウゲ科の代表的な多年草です。

地下に猛毒(アコニチン)を持った紡錘形の塊茎がある毒草で、茎の長さが1m以上になり、立ちあがって湾曲します。毒の強さは植物成分では最強で、天然の物ではフグに次ぐといわれています。全体に無毛で、葉は長い柄があり互生で切れ込みが深く、キンポウゲ科の特徴がでています。

茎の上方に円錐花序をつけ、鮮やかな青紫色は遠くからでも目立ちます。青紫の5個の萼のうち兜状の萼は肉質で、真ん中の2個は円形で内側に毛があり、下部の2個は小さくなります。和名は、花の形が舞楽で頭にかぶる鳥兜に似ている事に由来します。

花が終わると果実が、鳥の足のような形になります。鳥兜から取った毒薬をブス、ブシ、ウズとよび、河内地方に生える鳥兜をカワチブシ、京都北山に生える鳥兜を、キタヤマブシと呼んでいます。この毒を服用すると苦しみのあまり顔が歪むところから、ブスという言葉が使われたようです。

現の証拠(ゲンノショウコ) フウロウ科

<路傍に、ひっそりと咲く花>

現の証拠(ゲンノショウコ)は、宇奈月の山道の縁に自生するフウロソウ科の多年草です。

茎は地面を這うように伸び、葉柄をもった葉が対生につきます。夏から秋にかけて葉腋から花柄が伸び、茎頂は2裂し白色の可憐な花をつけます。宇奈月では白色が多く見られます。西日本では赤花、東日本、北日本では白花が多いようです。岡山県あたりが分岐になっているようです。

夏に陰干しにした茎葉を煎じて飲むと、薬効がすぐ現れることが和名の由来となっています。医薬品として認定されています。別名「医者いらず」ともよばれ、ています。下痢止めや健胃整腸薬となります。

焼締・急須形土瓶蒸

<鱧の出汁が美味しい>

秋の気配が感じると、土瓶蒸しが欲しくなります。松茸と鱧の土瓶蒸しで、秋を味わってください。

土瓶に松茸、鱧、海老、鶏肉、三つ葉、銀杏などの具と、だし汁を入れて蒸します。猪口に酢橘を絞りお召し上がりください。

季節のうつわは「焼締・急須形土瓶蒸」です。

仁清色絵秋草絵向付

<風にそよぐ宇奈月の山の秋草>

おわら風の盆が終わると、宇奈月温泉の周辺の山は秋草がそよぐようになります。今年のおわらは、コロナ禍で中止となり寂しい限りです。宇奈月平和観音像が建立されている、大原台公園の直下は、すすきの海原です。登山道には山萩の花が一面にこぼれ甘い香りが漂ってきます。

雅膳の一皿は、「仁清色絵秋草絵向付」です。秋の彩が楽しめる器です。何が盛り付けられるかは当日のお楽しみです。

盗人萩(ヌスビトハギ) マメ科

<小さな淡紅色の花を、多くつける>

盗人萩(ヌスビトハギ)は、宇奈月温泉の山の道端や藪陰に多く見られるマメ科の多年草で、萩の仲間です。

萩の花が咲くころ長い総状花序をつけ、まばらに淡紅色から白の小型蝶形花をつけます。豆果の形をしび歩く盗人の足跡に見立て、花が萩のような花なのでこの名前を付けられた様です。

盗人萩の花が咲くと、宇奈月温泉には秋風が吹きます

草牡丹(クサボタン) キンポウゲ科

<独特な淡紫色の鐘状の花>

草牡丹(クサボタン)は、宇奈月の山地に自生するキンポウゲ科の多年草で、基部が木質化し茎の高さは1mにもなります。

茎頂及び上部葉腋に集散花序がつき、全体が円錐状になります。花は淡紫色で開くと鐘状で先は丸まります。雌雄異株で雌花は雄花より小さく、花が終わり種子をつけるようになると、花全体が白髪のようになります。

 和名は、牡丹とよく似た葉であることに由来します。

高麗青磁菊形向付

<紅津和井蟹と水菜のおひたし>

富山湾に秋の訪れを告げる紅津和井蟹漁が9月1日に解禁となりました。地元ではアカガニと呼ばれ翌年6月30日まで漁が続きます。生息地は、ズワイガニより深い水深500mから2400mまでの領域です。富山湾では水深1000mの海底が魚場となり、円錐台形の蟹籠を沈めて漁をします。

雅膳の一皿は、紅津和井蟹と菊菜、水菜のおひたしです。紅津合蟹の他に富山湾で獲れる毛蟹等も使う場合があります。地元の生地港、魚津港の船が漁に出るのが9月の中旬位になりそうです。

季節のうつわは「高麗青磁菊形向付」で菊形の器です。高麗青磁は、朝鮮半島の高麗時代(918年~1391年)に製作された青磁釉を施した陶磁器です。高麗独特の象嵌青磁や辰砂文様等の青磁も作られるようになりましたが、李朝時代に入ると粉青沙器が主流となります。20世紀になり、失われていた高麗時代の製法が復活し、高麗青磁が蘇ります。

越中八尾「おわら風の盆」

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立春から数えて二百十日の秋風が吹く頃、風封じと五穀豊穣を願い3日3晩踊り明かす「おわら風の盆」が始まりました。

哀調を帯びた鼓弓や三味線の音に合わせ11町で、伝統に育まれたれ優美な舞が街流しや輪踊りの形で繰り広げられます。

夜の帳がおりると、情緒ある古い町並みで勇壮な男踊りと艶やかな女性の踊りが、ぼんぼりの明かりに照らされ幽玄な世界を生み出します。

町内を流れる融雪溝の水の音と月明かり、粋芙蓉の薄紅色の彩りも「おわら」には無くてはならない風物詩です。

9月1日から9月3日まで。富山市八尾町にて実施。

男郎花(オトコエシ) オミナエシ科

<秋の風情を醸し出す花>

男郎花(オトコエシ)は、宇奈月の山野に自生するオミナエシ科の多年草です。早いもので7月初旬から咲きはじめ、10月中旬頃まで見ることができます。

株元から匍匐枝(ホフクシ)を出して増えます。茎は太く直立し、葉は対生し羽状に深裂して、頂部の葉が最も大きくなります。茎頂近くの節から枝を対生に分岐します。上部が平たい散房花序になり、白い5裂の小さな花冠を多くつけます。その形から白粟花とも呼ばれています。

宗全籠に糸ススキ、金水引、河原撫子などを取り合わせると、秋の風情が楽しめます。

芒(ススキ) イネ科

<秋の深まりを感じさせる芒>

芒・薄 (ススキ)は、宇奈月の至る所で、普通に叢生するイネ科の大型多年草です。穂を動物の尾に見立てて尾花ともいいます。

宇奈月温泉の大原台(宇奈月温泉スキー場)は、ススキの草原でかつての萱場です。 芒は、古くから屋根材として使用され、茅葺屋根が点在する日本の原風景を生み出してきました。さらには家畜の飼料にもなる貴重な植物でした。それ故、群生している原野は萱場として大切に守られてきました。 銀色に輝く芒の穂が秋風に吹かれて波打つ様は、自然を愛しむ人の心を動かします。

芒は、秋の七草のひとつで十五夜の月見には、萩とともに欠かせないお花です。 収穫物と一緒にお供えするのは、収穫物を悪霊から守り豊作を祈願する意味があります。 越中おわら「風の盆」の男踊りの中に、芒がなびく所作があります。 胡弓が奏でる哀愁をおびた旋律が、秋風に乗って坂の町に物悲しく伝わります。9月1日~3日まで富山市越中八尾で静かに繰り広げられる祈りの踊りです。今年も昨年と同様、コロナ禍により中止となりました。大変残念です。