浅葱交趾渕銀箔長角皿

<夏色の器>

立秋に入っても暑が続いています。真鯛の薄造りを柑橘の香りと酸味で爽やかにいただきます。川風に乗って河鹿の鳴き声が聞こえてきます。蝉しぐれも幾分かは和らいできました。

季節のうつわは「浅葱交趾渕銀箔長角皿」で、トルコブルーの器です。
浅葱色とは、蓼藍で染めた明るい青緑色のことで、古くから伝わる日本の伝統色です。浅葱と付く様々な派生色があります。水浅葱、花浅葱、錆浅葱、鴇浅葱、薄浅葱等で、和の色は実に豊富です。銀箔から波がしらをイメージできます。

赤花(アカバナ) アカバナ科

<小さな花なので目立たない>

赤花は、宇奈月の山路の縁や水湿地に生えるアカバナ科の多年草で、根茎から地下茎を伸ばします。

茎は、稜がなく円柱形で上部でよく分枝し、高さ20~70cmになります。葉は対生し、短い葉柄があるか無柄でしばしば茎を抱きます。葉身は、卵状披針形で基部はやや心形で、縁にあらい鋸歯があります。

茎頂に、白色や淡紅紫色の可憐な小花をつけます。花弁が4個あり、小さいながらも先端が浅く2裂になってます。和名は、茎、葉、果実のすべてが紅葉する草紅葉に由来します。 

球紫陽花(タマアジサイ) ユキノシタ科

<苞が外れて中から紫陽花が現れる>

球紫陽花(タマアジサイ)は、宇奈月の湿った林内に群生するユキノシタ科の落葉低木です。 

若枝はよく分岐して淡緑色で毛があります。 苞が落ちると数個の枝が出て散房状に淡紫色の花をつけます。周りには4~5個の蕚が発達した白い装飾化をつけます。 中央には小さな両性化が密集します。

和名は、新梢の先に付く蕾が総苞に包まれて球状であることに由来します。宇奈月の山では紫陽花の仲間のが多く見られます。 球紫陽花(タマアジサイ)は葉が対生しているのに対し、蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)は葉が互生しているので見分けがつきます。 この他に蔓紫陽花(ツルアジサイ)、草紫陽花(クサアジサイ)などが見られます。

涼風至(すずかぜ いたる)

<甘い香りを漂わせる葛の花>

8月7日から二十四節気は「立秋」に入ります。まだまだ猛暑日が続きますが、暦の上では秋を迎えます。 宇奈月では日中、厳しい暑さが続くきすが早朝には、涼やかな川風の気配が感じられるようになります。立秋以降の暑さは残暑となり、手紙の時候の挨拶は「残暑見舞い」となります。今年も酷暑日は、お盆頃まで続きそうです。

七十二侯は「涼風至(すずかぜいたる)」で、二十四節気「立秋」の初侯となります。季節は少しずつ秋に向かい、涼しげな風が吹く頃という意味です。毎朝行っているウォーキングのコースの山彦遊歩道には、葛の花弁がたくさん落ちています。遊歩道沿いに自生している暖香梅や、黒文字の枝の間から落花しています。

葛は、様々な樹木に絡みつき赤紫色の花を開花させ、その甘い香りを周辺に漂わせます。しかも暑さに強い植物なので、植生の範囲を拡大していきます。そんな葛の葉陰から、集く虫の音が聞けるのも間近です。

銀彩波絵帆掛舟形向付

<帆掛け舟をかたどった向付>

魚津港では大形の富山海老が水揚げされています。富山海老は紅白の縞模様がある深海性のエビです。孵化して2~3歳が雄で4歳以降は雌になり、沢山の卵を腹肢で抱え込みます。産卵期は3~5月で、赤い体に色鮮やかなコバルトブルーの卵は美しく映えます。漁は小型底引き網やかご縄で行われます。

雅膳の一皿で富山海老と赤いかの強肴です。延楽特製の煎り酒でお召し上がりください。季節のうつわは「銀彩波絵帆掛舟形向付」で、波はシンプルに銀彩で描いています。

牡丹蔓(ボタンヅル) キンポウゲ科

<次から次へと花が開いてくる>

牡丹蔓(ボタンヅル)は、宇奈月の山路の側面に多く見られるキンポウゲ科の落葉藤本です。藤本(トウホン)とは蔓(ツル)のことで、細長く伸びて他物に絡みついたり地面を這う茎をいいます。

葉が牡丹の葉に似て、つる性であることが和名の由来となっています。牡丹形の葉はキンポウゲ科の植物によく見られます。切れ込みが深い葉はキンポウゲ科の特徴です。牡丹蔓は低木に絡みつき、木全体を覆ってしまうので開花時には雪化粧のように見えます。

宇奈月の山々では、つる性の植物が目立つようになりました。葛、蔓紫陽花、岩絡、等の蔓性の植物が増えています。その原因は、山の手入れが行き届かなくなったのと、蔓の若芽を食べる小動物が少なくなったからです。

渕金十二曲硝子向付

<延楽・雅の膳の冷物>

匠膳の一皿、車海老と翡翠茄子です。富山湾の夏の味覚の一つとして車海老があります。旬の車海老と黒部の名水が育んだ長茄子を合わせます。茄子をゼラチンで固めると翡翠のような模様と色合いになります。彩に夏野菜を使い旨みのある出汁で合わせます。

季節のうつわは「渕金十二曲硝子向付」です。

弟切草(オトギリソウ) オトギリソウ科

<儚い一日花>

弟切草(オトギリソウ)は、宇奈月の日当たりのよい山野や道端に自生するオトギリソウ科の無毛の多年草です。朝露に濡れ、緑鮮やかな葉には、銀色に輝く水玉がいくつも光っています。

茎は円柱形で、葉は広披針形で対生し基部は茎を抱き、葉身には黒い小油点が散在します。枝先は2出葉集散状花序となり、小さな黄色い一日花を次から次へと開花させます。

花言葉は秘密と復讐で、秘伝の薬の秘密を漏らした弟を、兄が切ってしまうという民話から命名されています。古来、薬草として珍重されたので、薬師草や青薬とも呼ばれています。全草を天日干ししたものを生薬では小連翹(しょうれんぎょう)と呼び、鎮痛効果や神経痛や痛風の痛みに効く入浴剤として使われます。

園芸品種の錦糸梅(キンシバイ)や美容柳(ビョウヤナギ)もオトギリソウ科です。河原撫子や水引などと生けると夏の風情を楽しむことができます

九蓋草(クガイソウ) ゴマノハグサ科

<山の斜面に群生する九蓋草>

九蓋草(クガイソウ)は、宇奈月の低山から亜高山の斜面に自生するゴマノハグサ科の多年草です。7月から8月頃、川の崖渕や亜高山の斜面に多く見られます。

茎は根際から直立し、長いもので1メートル近くあり直ぐに目に付きます。茎頂に長い総状花序をつけ、多くの小花が密集します。花冠は筒状で花糸が紫色なので、花穂全体が薄紫色に見えます。

葉は楕円形で、先は尖り細かな鋸歯があり輪生しています。輪生葉は、5枚、7枚と奇数が多く、何節も付くことから九蓋草と名付けられました。

青い蕎麦菜や、淡紅色の越路下野草とともに、爽やかな高原の風に揺れながら、天然の花壇を作っています。

染付木ノ葉形平皿

<富山湾の岩牡蠣>

雅膳の強肴は、富山湾の夏の旬「岩牡蠣」です。富山湾には、ミネラルを多く含んだ雪解け水が急流河川によって注がれます。河口の沖合ではその伏流水が湧き出し海水温下げて、岩牡蠣の産卵を遅らせます。

9月に産卵期に入るので8月の岩牡蛎は、グリコーゲンやミネラルをたっぷりと蓄えて、クリーミーな味になります。特性のタレで味わってください。

季節のうつわは「染付木ノ葉形平皿」で、染付の色合いが岩牡蠣に合います。