織部十字形小鉢

<織部の小鉢>

粋な小鉢に旬の魚を入れて楽しみます。
小鉢には染付、黄瀬戸、赤絵、金彩、志野、備前などいろいろとありますが、今回は織部を使いました。富山湾の細魚が美味しい時期となりました。
延楽特製の煎り酒で食します。合わせる酒は、林酒造の大吟醸「黒部峡」です。

季節のうつわは「織部十字形小鉢」です。
織部の小鉢も様々な形があります。

ホタルイカ釜揚げ

<熱々のホタルイカ>

富山湾の春の風物詩であるホタルイカは、優美な流線型で透き通った薄茶色の可憐な姿をしています。
漁は、底引網漁と違って資源に優しい定置網漁業で水揚げされます。
網を上げるときに一斉に青白く光るところが名前の所以です。
お造り、酢味噌和え、天婦羅、多彩な料理法がありますが、特にお薦めなのが釜揚げす。アツアツの脂ののったオレンジ色の内臓が格別です。
富山の地酒が一段と味を引き立ててくれます。

小蓋物染付唐草

<小さな蓋物>

お凌ぎは、空腹をしのぐため出される一品です。
もち米を使った飯蒸しで、もち米と甘鯛にゆず餡を掛けたりします。
この時期は、雲丹を使った飯蒸しです。

季節のうつわは「小蓋物染付唐草」です。
小さな蓋物ながら、宝相華唐草文が染付でしっかりと描かれています。
唐草文とは、花と葉のついた蔦が律動感のある曲線を描く文様で、中国から伝わったので「唐」を使います。唐草文には法相唐草の他に忍冬唐草、葡萄唐草、蓮華唐草、牡丹唐草などがあります。

雀始巣(すずめはじめてすくう)

<枝垂れ梅の蕾まだ堅し>

3月20日から二十四節気は「春分」となります。太陽が真東から昇り真西に沈み、太陽が春分点を通る日で、昼と夜の長さが同じになることから二十四節気では大きな節目の日とされています。寒さが薄らぎ、春の訪れが実感できるようになります。

七十二侯は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」で、二十四節気「春分」の初侯となります。雀が巣作りを始める頃という意味で、この日を境に、北半球では日脚が少しずつ長くなります。旅館の庭の枝垂れ梅が開花し始めました。これからは春の光によって自然の表情が豊かさを増してきます。

春分の日には皇室では春季皇霊祭が行われます。天皇・皇后が御出席されて皇霊殿で行われる先祖祭です。旧憲法下では国の祭日でしたが、1947年に春分の日として国民の祝日となりました。春分を中日とする前後3日ずつ7日間が春のお彼岸で、先祖供養や農事始めをする節目の時期となります。


鼠志野麦藁四方隅入向付

<春の香り・春の焚合>

真真蛸の美味しい時期になりました。春の野菜との焚合です。
木の芽が春の香りを引き立ててくれます。

季節のうつわは「鼠志野麦藁四方隅入向付」です。
鼠志野は、下地に鬼板とよばれる鉄化粧を施し、麦藁の文様を箆彫りして白く表し、志野釉(長石釉)をかけて焼きます。
掻き落とした部分は、長石釉の白色になり、鉄の成分は窯の条件などにより赤褐色または鼠色に焼き上がります。

仁清色絵遠山向付

<麓の霧で遠山が美しく見える頃>

車海老の中で20g以下のものを才巻と呼んでいます。
旨味を閉じこめる天婦羅がお勧めです。
黒部の山菜も苦みを含ませながら天婦羅で、美味しくいただけます。
山の端が霧や靄に包まれる美しい頃となりました。
黒部ならではの豊かな表情を見せてくれます。

季節のうつわは「仁清色絵遠山向付」です。
宇奈月の春が味わえます。

祥瑞写兎文六寸皿

<吉祥文の兎文>

雅膳の強肴は山海の珍味で、地酒を楽しむアテとなります。
ナマコの卵巣を干した干口子と鮑の旨煮はお酒が進みます。

季節のうつわは「祥瑞写兎文六寸皿」で、昭和初期に有田で作られたものです。
兎は神聖な動物で瑞祥な動物とされてきました。
従って兎文は吉祥文とされてきました。この器の本歌は「祥瑞兎文輪花皿」です。

染付芙蓉手高台向附

<山菜天婦羅>

雪に覆われた大地でも春の風が吹くと、山菜の芽吹きが始まります。
雪の下の蕗の薹は柔らかく、山の香りがします。
山菜の風味である苦みは、油で揚げることによって和らげます。
旬の白魚も添えると、春の香りが満載となります。

季節のうつわは「染付芙蓉手高台向附」です。
高台の器なのでお膳が華やかになります。

仁清色絵流水向付

<旬の蛤>

蛤は、ひな祭りの吸い物には欠かせません。俳句では春の季語なので、蛤の美味しい時期は各産地によって違いますが、北陸では春先です。雅膳の一皿は、蛤の酒蒸しです。

季節のうつわは「仁清色絵流水向付」です。流水紋は、厄を浄化する清らかな流水を表している吉祥文です。仁清写しなので周りが華やかになります。

菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

<ほたるいか酢味噌>

3月15日から七十二侯は、「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」で二十四節気は「啓蟄」の末侯にあたります。

厳しい冬を越したサナギが、蝶に羽化する頃という意味です。菜虫とはアブラナ科の野菜類を食べる昆虫の総称で、特に紋白蝶の幼虫の青虫のことです。菜の花が畑一面に咲き乱れ、羽化した紋白蝶が飛び始める頃という意味です。宇奈月温泉は、三寒四温を繰り返しながら寒が緩み、陽光も徐々に力強くなってきました。

富山湾では春の風物詩ホタルイカ漁がおこなわれています。朝獲れの新鮮なホタルイカを釜揚げにして山菜と酢味噌で和えます。雪融けとともに沢山の種類の山菜が出てきます。 雪の下の蕗の塔、早蕨、コゴミゼンマイ、蕗、その他菜の花、水菜、クレソンなども春の香りです。これから一段と春の彩が冴えてきます。