網目色絵小花六寸皿

<のど黒・焼霜>

冬型の気圧配置になると気温が急激に下がります。富山湾の底引き網漁が最盛期を迎えます。魚は脂が乗り、最もおいしくいただける季節となりました。のど黒の脂は身と皮の間についているので、焼霜にします。皮を焼くことにより独特の薫香が出て美味しくなります。

季節の器は、「網目色絵小花六寸皿」です。網目文は線描きで網の目を描いた文様です。

網目の描き方は緩やかに波打つものを基本としますが、横幅の間隔の狭まったもの、結び目のあるもの、二重線のもの、網目に魚文や桜や菊の花文を散らしたものなど様々なバリエーションがあります。これらの文様は17世紀前半から伊万里焼に現れます。

金盞香(きんせんかさく)

<雲に包まれる黒部峡谷>

11月17日から七十二侯は、「金盞香(きんせんかさく)」で二十四節気「立冬」の末侯になります。金盞香が咲き始める頃という意味です。金盞香とは水仙のことで、別名「雪中花」と呼ばれています。

五弁の花びらの真ん中にある副花冠が、金色の盃を表す「金盞(きんせん)」に似ているところから、金盞香と命名されました。水仙の花が咲くと、上品な香りが漂い始め、あたりの空気を清浄にしてくれます。

宇奈月温泉では、冷たい時雨が降ったりやんだりを繰り返しながら、一雨ごとに冬へと近づいていきます。雨上がりに発生する雲が山を覆い、その切れ間から深紅に染まった木々が現れてきます。

天候が回復に向かうと、雲が山の斜面を這い上がり稜線へと続きます。雨上がりの黒部峡谷は、錦秋の深まりを一段と幻想的に見せます。北から冷気が入ってくると山の稜線は雪化粧をし、黒部三段染めとなります。

染付捻文向付

<永寿ならではの美しさ>

白海老はあまりにも小さいため、一般のお醤油だと海老の甘さが負けてしまいます。延楽では特製の出し汁を使います。白海老の甘さを最大限引き出し、地酒に合う旨味です。

季節の器は、「染付捻文向付」で、九谷の名工「矢口永寿」の作品です。呉須の点描で捻文を表しています。永寿の染付は、色合いが美しく優しさがあります。永寿は、明治37年(1904)に京都より永楽保全の門下である滝口加全などの陶工を招き、永寿窯を開業します。仁清、乾山、染付、祥瑞などの作品を多く残しています。

楽双鶴平向付

<内子は格別>

香箱蟹(こうばこがに)は、富山湾で獲れる雌の津合蟹(ずわいがに)です。茶色のつぶつぶの卵は外子で、味噌の部分のオレンジ色の内子は、濃厚な味で格別の旨みがあります。漁期は1月10日までの短期間です。

季節のうつわは「楽双鶴平向付」です。内子、外子の紅色が映える器で、お祝膳の席にも使われます。

渕色絵線輪花

<真鯛香煎揚>

黒部沖合では、1本釣りで底物の真鯛、のど黒、鬼鮋(オニカサゴ)などが釣れます。真鯛は、漁獲量の80%は定置網、残りは刺網や底引網で獲られます。真鯛の美味しい時期の到来です。会席の揚げ物は真鯛の香煎揚げです。

季節のうつわは「渕色絵線輪花」です。複数の色彩を使った線輪花です。

灰釉割山椒向付

<新鮮な白子>

富山湾に冷たい北風が吹くようになると、真鱈が美味しくなります。新鮮な白子はポン酢で食すと格別な旨味があります。雲のように見えるので雲子と呼んでいます。身は昆布で〆て真子をまぶします。鱈の子付として地元では食されています。

季節の器は、「灰釉割山椒向付」です。灰釉(かいゆう)は植物の灰を加えた釉です。植物の灰にはアルカリ金属が含まれ、これが高温になると素地の中の長石を溶かしてガラス化します。色は黄緑色や白濁色になります。

地始凍(ちはじめてこおる)

<深まりゆく黒部の秋>

11月12日から七十二侯は「地始凍(ちはじめてこおる)」で、二十四節気の「立冬」の次侯となります。陽気が弱まって日ごとに冷え込みが増し、大地が凍り始める頃という意味です。

冷たい時雨が降ったりやんだりを繰り返し、ひと雨毎に冬へと近づいていきます。黒部峡谷の紅葉はまだまだ見ごろで、色濃い黄金色と深紅の照り葉が美しく輝いています。

宇奈月温泉散策コースの一つである「やまびこ遊歩道」は、様々な木々の落ち葉が折り重ねっているので気持ちよく歩けます。柑橘系の香りを漂わせるクスノキ科の壇香梅や、大葉黒文字の落ち葉は黄金色に輝いています。春にはいち早く花を咲かせる樹木達です。

色絵龍田川八寸皿

<雅膳秋の焼き物>

秋の雅膳の焼き物は、目鯛の西京焼きです。焼舞茸と唐墨を添えてあります。秋の深まりを味わってください。黒部の山々は極彩色に染まりました。

季節のうつわは「色絵龍田川八寸皿」です。器でも秋の深まりを味わえます。

寒椿蒔絵吸物椀

<吸物・蟹真丈>

津合蟹(ズワイガニ)漁は、11月7日から解禁となりました。今年も延楽の活蟹料理を求めて、全国から沢山のお客様がお越しになります。 活蟹会席の吸物は蟹真丈です。極上の出汁と蟹の旨味を味わう至福の一時です。

季節の器は、「寒椿蒔絵吸物椀」で、寒椿をあしらったお椀です。初雪に寒椿が合います。雪化粧した枝の間から赤色の花があらわれます。

山茶始開(つばきはじめてひらく)

<湯鏡に映る錦繍の峡谷>

11月7日から二十四節気は「立冬」に入ります。暦の上では冬の到来ですが、宇奈月温泉周辺の紅葉が最も美しく映える頃です。

七十二侯は「山茶始開(つばきはじめてひらく)」で、二十四節気「立冬」の初侯となります。太陽の気配が弱くなり、木枯らし1号が吹くのもこの頃です。他の草花が枯れてしまう中、鮮やかな濃紅な山茶花が咲き始める頃です。

奥黒部の山々は新雪で白さを増し、宇奈月温泉の山々の稜線は薄っすらと雪化粧。黒部の三段染めを楽しめる頃を迎えます。延楽の総檜露天風呂「華の湯」の湯鏡に、錦繍の峡谷が色濃く映り込みます。山が紅に染まると北西からの強い風が吹くようになり、本格的な冬の到来です。

富山湾では冬の味覚、津合蟹(ズワイガニ)漁が6日から解禁となりました。漁はこれから年末にかけてピークとなり、雄が3月20日まで、雌は1月20日まで漁期となります。

湯量豊富で肌に優しいお湯と津合蟹は、冬の宇奈月温泉の最高の取り合わせです。