檀香梅(ダンコウバイ) クスノキ科

<葉が芽吹く前に花をつける>

檀香梅(ダンコウバイ)は、宇奈月の山地に生えるクスノキ科クロモジ属の落葉低木で、成木は樹高3mから6mにもなります。葉は互生し長さ5cmから15cmの卵円形で、基部は幅広く先端で浅く三裂し折るとクスヌキ科特有の芳香があります。

出葉前の3月末頃から開花する春を告げる花です。前年枝の葉腋に散形花序を付け、各花序に無数の黄色い花を付けます。枝や葉と同様に芳香があります。花はやがて緑色の球形の果実になり、秋に赤紫色に熟し種子に強い芳香を含ませます。名前の由来となっている檀香は白檀(ビャクダン)のことです。

芍(シャク) セリ科

<外側の2枚の花弁が大きい>

杓(シャク)は、宇奈月の山地の湿ったところに生えるセリ科の多年草です。

茎は細く、全体に繊細な感じで直立し、上部で分岐して高さは70cmから150cmになります。葉は互生し、長い柄があり2回3出羽状複葉です。小葉は披針形で先端は鋭く尖り、細裂して裏面葉脈上に毛があります。

花期は4月から5月で、茎頂か分岐した先端に複数形花序を付けます。花は5弁花で白色、花序の外側の花の2弁花が大きいのが特徴です。

大型のセリ科の中で、春に花が咲くのはシャクとハナウドだけです。

越の小貝母(コシノコバイモ) ユリ科

<落ち葉の間から顔を出す、越の小梅母>

越の小貝母(コシノコバイモ)は、宇奈月の日陰の山の斜面に生えるユリ科の多年草で日本固有種です。雪解けの斜面で見かける花で、周辺には菊咲一華も見られます。

宇奈月で自生しているものは、やや小さく茎の長さは5cmから10cmぐらいで直立に伸ばし、上部に細長い無柄の葉を対生させ、さらにその上に小さな葉を3個輪生させます。茎頂に淡黄色の広鍾形の花が下向きに一輪つきます。

分布は、越の国(山形県南部から敦賀まで)の日本海側で、これが名前の由来となっています。この可憐な花は、立山や白馬岳に見られるクロユリに一番近い植物で、学名はFritillaria。これはサイコロを入れる筒の意味です。海外でも花の形から命名される事はよくあります。

貝母(バイモ)とはアミガサユリの鱗茎を乾燥させた生薬で、漢方処方に用いられます。これらのユリ科の植物はバイモ属として分類されています。

山榛の木(ヤマハンノキ) カバノキ科

<うなづき湖畔に多く見られる>

山榛の木(ヤマハンノキ)は宇奈月の沢筋やうなづきダム湖周辺に自生するカバノキ科の落葉高木です。

高さは、約15mにもなり、葉は互生し単葉、有柄で葉裏には毛がありません。毛が多くある物は、毛山榛の木で見分けが難しいです。葉身は広楕円形で縁に浅い欠刻状の重鋸歯があります。

花は、3月から4月に葉が開く前に咲かせます。雄花序は枝先の葉腋に尾状花序を2から4個つけ、雌花序はその下に3から5個付け、秋には紫褐色で楕円形の球果を付けます。冬には熟し松かさ状の果穂になります。

猩猩袴(ショウジョウバカマ) ユリ科

<長い葉を袴に見立てた猩々袴>

猩猩袴(ショウジョウバカマ)は、宇奈月の落葉樹林内の湿り気の多い斜面や湿原に生えるユリ科の常緑多年草です。宇奈月の亜高山の湿地帯ではやや小ぶりのものを見ることができます。

花は、花茎の上方に半開で淡紅色の六弁花を複数付けます。葉は倒披針形で根茎上にロゼット状につきます。

猩猩とは頭の毛が赤く猿のような顔をした中国の伝説上の動物です。和名は、赤い花を猩猩に見立て、ロゼット状に広がる長い葉を袴に見立てて付けられました。まさに宇奈月の早春賦です。

深山片喰(ミヤマカタバミ) カタバミ科 

<宇奈月の樹林内で静かに開く深山片喰>

深山片喰(ミヤマカタバミ)は、宇奈月の山地の林内や林縁に群生するカタバミ科の多年草です。

地下茎は太く古い葉柄基部に包まれています。茎は分枝せずに長い花柄の先に白い花を1個つけ、花弁は5枚で、古くから家紋として使われています。陽が当たらないと花は開きません。葉は、混生して長い葉柄があり3出掌状複葉で、小葉は広倒心形です。夜はしぼんでしまいます。

菊咲一華(キクザキイチゲ) キンポウゲ科

<赤みがかった葉で、白花の菊咲一華>

宇奈月の原野の雪が融け始めると、先ず開花するのは菊咲一華(キクザキイチゲ)で、キンポウゲ科の多年草です。宇奈月では白や淡紫色の花が多く、まれに淡紅色も見られます。

暖かくなると花が開き、夜や雨の時は気温が下がるので花を閉じます。上部に三枚の苞葉が輪生し、深く切れ込んだ葉はキンポウゲ科の特徴が出ています。多雪地の山地で普通に見られる可憐な花です。落葉樹林内でもよく見かけます。菊に似た花を一輪つけるところから和名の由来となっています。

深山黄華鬘(ミヤマキケマン) ケシ科

<林道沿いに咲く深山黄華鬘>

深山黄華鬘(ミヤマキケマン)は、宇奈月の山の林縁や林道沿いに一般的に見られるケシ科の越年草で、アルカロイド類を含む有毒植物です。

茎は株から叢生し、全体無毛で多汁質です。葉は柔らかく2回羽状に細裂します。花は長さ4~10cm程の総状花序にやや密につきます。黄色の花は、横に長い筒形で先が唇状に少し開き、一方向を向き横向きに咲きます。 果実は線形で数珠状にくびれます。

華鬘とは仏殿の内陣を飾る荘厳具です。それを飾るため金箔で装飾された花々が吊るされています。その様相から命名されています。赤紫の紫華鬘(ムラサキケマン)は、時期を遅らせて咲き始めます 。

姫青木(ヒメアオキ) ガリア科

<秋には赤く熟した実をつける>

姫青木(ヒメアオキ)は、宇奈月の山地の雑木林内に自生する、ガリア科の常緑低木です。青木の日本海側多雪地帯の変種で、一回り小さいです。

高さは、1mほどで幹は積雪に押され横ばいし、葉がつく部分で斜めに立ち上がります。葉は長楕円形で、葉の縁に粗い鋸歯があります。雌雄異株で、花期は3月から4月にかけて目立たない、小さな褐色の花をつけます。果実は卵型で、秋に赤く熟し翌年の開花のころまでついています。

姫踊子草(ヒメオドリコソウ) シソ科

<群生する姫踊子草>

姫踊子草は、宇奈月温泉街の道ばたに群生し、普通に見られる越年草で帰化植物です。

茎は、シソ科の特徴である方形で直立し、短い毛があります。葉は対生し、茎の下部では長い柄があって円心形です。上部は卵円形で葉柄が短く密に詰まり、赤紫色になることが多いです。花冠は、淡紅色で唇の先が2裂する二唇系で、葉の脇から放射線状に外側に向かって開きます。

これとよく似ているシソ科のホトケノザは、葉の形が半円形で蓮台のようになっていますので、容易に見分けがつきます。