青楽舩形向付

<香箱蟹>

富山の冬の料理に欠かせないのが香箱蟹です。香箱蟹は万頭蟹とも言って、小さいながら内子、外子には格別な旨みがあります。活蟹会席の一品です。

時を重ねた古い器は、料理を引き立てる不思議な力があり、青楽の色合いには特にうまく収まります。目で楽しめるのは器の妙技です。酒器は古九谷が欲しくなります。

季節のうつわは「青楽舩形向付」で楽弘入の作です。弘入は、1871年(明治4)に12代目吉左エ門を襲名して、1919年(大正8)に石山寺の近くに隠居します。この年は、黒部川の電源開発に取り組む高峰譲吉の東洋アルミナムと山岡順太郎の日本電力が設立された年です。

染付芙蓉手輪花向附

<香箱蟹>

香箱蟹は、「活け蟹会席」「雅膳」の一皿です。追加料理としても人気があります。津合蟹の雌で小さいため丁寧に身を抜き甲羅に盛り付けます。旨みが凝縮された味噌とオレンジ色の内子は、濃厚な味わいで地酒と最高の組み合わせになります。つぶつぶの卵は外子で特別の食感が味わえます。雪の峡谷を愛でながらの蟹三昧のシーズンとなります。

季節のうつわは「染付芙蓉手輪花向附」です。芙蓉手は、万暦年間(1573~1620)景徳鎮民窯で焼かれた染付磁器の様式です。明清交代による混乱で、1659年にオランダ東インド会社から伊万里に大量注文が入ります。ほとんどが芙蓉手で、この輸出専用の様式は、伊万里焼の様式を大転換させる契機となります。

粉引鉄山水角大皿

<鰤鎌塩焼き>

寒鰤の美味しい季節となりました。中でも鰤鎌の塩焼きは格別です。寒鰤のえらの下の胸びれのついている部分が鎌で、旨味のある脂も含んで、特に美味しいところです。大根おろしと醤油を合わせて食します。皮は香ばしく美味で、地酒も進みます。

季節のうつわは「粉引鉄山水角大皿」です。大きい鎌なので、大ぶりの器で大胆に鉄絵が施されたものが合います。

粉引は、朝鮮時代前期の15~16世紀に焼かれた白化粧陶器の一種で、韓国でいう粉青沙器に属します。鉄絵は、朝鮮半島の技法を基に16世紀末頃から、唐津や美濃の焼物に装飾の下絵付けとして用いられました。唐津の絵唐津、美濃の絵志野や絵織部、絵瀬戸等として残っています。

熊蟄穴(くまあなにこもる)

<北陸新幹線・黒部宇奈月温泉駅から白馬岳を望む>

12月12日から七十二侯は「熊蟄穴(くまあなにこもる)」で、二十四節気の「大雪」の次侯となります。熊が厳しい冬を乗り越えるために穴にこもる頃という意味です。

例年この時期は、シベリアから寒気団が南下し北陸に雪をもたらします。本格的な降雪は、二十四節気の「冬至」に入ってからと予測されます。

北陸新幹線が、新潟県と富山県の県境のトンネルを抜けて、富山県朝日町の平野部に出るとその眺めに圧倒されます。左手には新雪に輝く北アルプス、右手には能登半島と富山湾の景色が広がります。その名座と富山湾の深海の高低差は約4千メートル。まさに初冬の絶景です。

焼締片口皿

<津合蟹の洗い>

透き通るような活蟹の身を、氷水にさらすと花が咲きます。とろけるような食感の中に濃い甘みが口いっぱいに広がります。蟹会席の一皿の蟹の洗いです。

季節のうつわは「焼締片口皿」です。荒木義隆氏の焼締めは、土肌を感じながらも造形が美しいので料理を引き立ててくれます。

仁清色絵南天絵向附

<寒鰤造り>

今が旬の寒鰤は、上質な脂がのっています。甘くて旨味のある脂は、全く臭みがなく身も引き締まり、コリコリとしています。大根おろしと醤油でいただくお造りは、富山湾の格別な冬の恵です。

季節のうつわは「仁清色絵南天絵向附」です。赤絵と緑釉に金彩が使われているので華やかにな彩りとなります。

青白瓷八面取向附

<蟹の洗い>

蟹の洗いは、透き通るような活蟹の身を、氷水にさらすと花が咲きます。とろけるような食感の中に濃い甘みが口いっぱいに広がります。蟹会席の一皿です。

季節のうつわは「青白瓷八面取向附」です。

白磁は、鉄分など不純物が少ないカオリンなどの白色粘土や陶石などの白い素地に、透明釉をかけて焼成したものです。微量の鉄分などの不純物が含まれると還元焼成すると淡い青みを帯びて発色します。これが青白瓷です。

色絵椿絵向附

<艶やかな紅白の椿の色絵>

冬型の気圧配置が強まり、寒さが増すと蕪蒸しが美味しくなります。二十四節気の「大雪」に入りました。おろした蕪を雪に見立てるのは、和食の妙です。具は、朝どれの甘鯛を使います。

季節のうつわは「色絵椿絵向附」です。 重々しい灰色の雪雲が空を塞ぐ日が多くなる頃は、色絵の器で食卓を華やかにします。

閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

<雪化粧が美しい黒部の山々>

12月7日から二十四節気は「大雪」に入ります。木々の葉はすっかり散り終え、雪の日が多くなります。七十二侯は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」で「大雪」の初侯となります。天も地も寒さで塞がれ、本格的な冬到来の頃という意味です。

宇奈月温泉を取り巻く山々は雪化粧。黒部川の水面近くの名残の紅葉が、季節の移ろいを感じさせます。季節は日一日と真冬へと向かっていきます。生き物たちは厳しく、美しい雪の世界で冬ごもりを始めます。

雪景色は、最も宇奈月温泉らしい風情を醸し出します。加えて湯量豊富な温泉と富山湾の海の幸は、芸術家達を魅了してきました。延楽にゆかりのある川合玉堂、中川一政、小杉放庵、堅山南風、榊原紫峰等の巨匠の作品が館内に展示されています。峡谷に面した延楽は、稜線の雪を愛でるのに最も適したところにあります。

仁清水玉透向附

<毛蟹の柚子釜>

富山湾では津合蟹、紅津合蟹は、冬の味覚として知られていますが、毛蟹は知られていません。あまり市場に出回らないので、馴染みがありません。秋から冬にかけてが旬です。滞在の料理として使います。

季節のうつわは「仁清水玉透向附」で、仁清の写しです。本歌は畠山記念館、MIHO MYUSEUMに所蔵されている「白釉円孔透鉢」で、シンプルでかつシャープな造形は、現代の工芸品にもひけのとらない斬新さがあります。色絵を使わずにシンプルな色合いは仁清の多才さを感じさせます。