雪割草(ユキワリソウ) サクラソウ科

<雪が消えると可憐な花を咲かす>

雪割草(ユキワリソウ)は、宇奈月の高山の岩場に生育するサクラソウ科の多年草です。

葉は楕円形で根生し、表面は緑色でしわが多く、ふちには波状のゆるい鋸歯があり、やや裏側に曲がります。花茎は高さ5~15cmになり、その先に3~20個の淡い紅紫色の花をつけます。苞は線形になり、基部は袋状に膨らみません。

白山小桜(ハクサンコザクラ) サクラソウ科

<清水岳の湿地帯を彩る白山小桜>

白山小桜(ハクサンコザクラ)は、宇奈月の高山帯に自生する超小形のサクラソウ科の多年草です。主に日本海側の高山帯に分布し、雪渓周辺や湿地帯などの湿った場所に群生します。

葉は、根葉のみで大小不揃いの尖った鋸歯があります。花は5弁花ですが、ハート型に深く切れ込んでいるので、10弁花のように見えます。桃色の花は桜に似て白山に多く見られることが、和名の由来となっています。花は、大桜草と似ていますが葉の形で見分けがつきます。白山小桜の葉はやや丸みを帯び不揃いな鋸歯があります。大桜草の葉は紅葉手となっています。

宇奈月の名座、旭岳、清水岳周辺の湿地帯で群生が見られます。

駒草(コマクサ) ケシ科

<複雑な葉の構造で大気中の水滴を受ける>

駒草(コマクサ)は、宇奈月の高山帯の風衝岩屑斜面などの砂礫地に自生するケシ科の多年草です。他の植物が生育できないような環境なので、根を1mぐらいに伸ばし単独の大群落を作ります。清水岳(2603m)の山頂付近のガレ場で見ることができます。

風衝地とは山頂や尾根で強風が吹きつける地帯のことで、絶えず強風にさらされているため土はなくて、小石や岩が多い地帯です。冬期は雪が風に飛ばされ地表は凍結し、極寒の大地になります。この過酷な自然条件に耐えて生育するのが、コマクサ等の一部の高山植物です。

葉は根生葉で細かく複雑に裂けて白い粉を帯び、パセリのように見えます。終裂片は幅1mmほどの線形となります。この複雑な葉の構造が、濃霧を伴った強風が過ぎ去った後に多くの水滴を付着することができます。花茎は10~15cmで淡紅色の花をつけます。花弁は4個で外側と内側に2個づつつきます。外側の花弁は下部が大きく膨らんで、先が反り返ります。

和名は、花の形が馬の顔に似ていることに由来します。自然条件の厳しい環境のもとで育つ可憐な花なので「高山植物の女王」とも呼ばれています。

延根千鳥(ノビネチドリ) ラン科

<可憐な花を穂状に咲かせる>

延根千鳥(ノビネチドリ)は、宇奈月の亜高山帯の樹林下の湿った所に自生するラン科の多年草です。

茎は太く円柱形で直立し、30~60cmになります。葉は互生し葉身は長楕円形で、先は尖り縁は波状に縮れ3~5筋の葉脈がはっきりと目立ちます。花期は7月で淡紅色の花を穂状に多数つけ、苞は花と同じ長さです。側花弁は萼片より短く、唇弁はそれよりもやや長く、楔状広卵形で先端が3裂します。

和名は、根茎が伸びることに由来します。

蕎麦菜(ソバナ) キキョウ科

<僧ケ岳・登山道に咲く蕎麦菜>

蕎麦菜(ソバナ)は、宇奈月の山路の則面に、小さな釣鐘の形をした赤紫色の花をつけるキキョウ科の多年草です。 僧ヶ岳登山道でよく見かけます。

葉は、広被針形で互生し、若葉は山菜として食用になります。 茎の切り口から白い粘りのある汁が出て、これが蕎麦をゆでる時の臭いと似ていることが、名前の由来となっています。

花は、茎頂の疎らな円錐花序に下向きにつけます。花冠は青紫色の漏斗状鐘型で先が5裂し、その先がやや反り返ります。標高が高くなるにつれ、形も大きくなり色も濃くなります。宇奈月の初夏の山野を彩る花です。

昼顔(ヒルガオ) ヒルガオ科

<草叢に咲く昼顔>

昼顔(ヒルガオ)は、宇奈月の山路沿いの草叢に生える、ヒルガオ科の多年草です。蔓性なので他の草や低木に絡みついて伸び、漏斗状の淡紅色花を咲かせます。

その貴賓ある整った形と色合いからフランスでは「日中の美女」と称され、ジョゼフ・ケッセルの小説の題材にもなり映画化されました。あのカトリーヌ・ドノーブ主演の「昼顔」です。

名前の通り、夏の強い日差しの中でも日中に花開します。宇奈月温泉スノーパークでは、ススキやヨモギに絡みついて伸びています。

素馨(ソケイ) モクセイ科

<芳香がある白い花>

素馨(ソケイ)は、宇奈月の日陰の岩場の斜面に生える半蔓性のモクセイ科の常緑低木です。

原産はカシミールの山地でシルクロードで経て中国に入り、江戸末期に清国から日本に入りました。モクセイ科の木は、芳香があるので香水の原料に使われました。和名は蔓茉莉(ツルマツリ)でジャスミンの仲間です。

葉は、奇数羽状複葉で羽状楕円形の小葉を2から4対つけます。花は、茎頂もしくは上部葉腋から集散花序をだし白色の小花をまばらにつけます。花冠の下部は細い筒状になり上部は4裂または5裂して星状に平開します。

初夏の香りを楽しむのに適した花です。

蝦夷紫陽花(エゾアジサイ) ユキノシタ科

<雨に濡れて美し輝く>

蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)は、宇奈月の山中に生えるユキノシタ科の落葉低木です。

 北海道から北陸にかけての日本海側に多く見られます。原種の山紫陽花が、豪雪に埋もれ越冬する間に変化したのではと考えられています。

 葉には、葉柄があり対生し、大きな楕円形で縁には鋸歯があります。先梢に多数の青紫色の両性花を開かせ、 周りには額片が大型化した装飾化をつけます。 場所によっては、紅色の仲間も見られます。

和名は、 北海道で多く分布することに由来します。

靭草(ウツボグサ) シソ科

<直立した茎の先に紫色の肉穂花序をつける>

靭草(ウツボグサ)は、宇奈月の日当たりのよい山野の草地に生えるシソ科の多年草です。

茎は、20cmから30cmで基部から葉を付けた短い匍匐茎を地表に伸ばします。匍匐茎とは地上に伏して細長く伸び、その先に芽を付ける茎のことで節から根や芽を出して繁殖します。

葉は、長楕円状披針形で対生し小さな柄があり、茎はシソ科特有の四角形です。花は、直立した茎の先に肉穂花序を出し円柱状の花穂につきます。花穂は、扁心形の苞に包まれ萼は、二唇形で上唇は一部切り取られたような切形で短い3歯があり、下唇は鋭く2裂しています。花冠は紫色で筒状二唇形で、上唇は兜状、下唇が3裂して開出しています。

和名は、花序の形を矢を入れる靫(ウツボ)に見立てたこに由来します。 夏に枯れても残るので夏枯草(カコウソウ)とも呼ばれ、生薬となります。宇奈月の高山帯では、小型の立山靫草が見られます。

燕万年青(ツバメオモト) ユリ科

<純白で清楚な花>

燕万年青(ツバメオモト)は、宇奈月の亜高山帯の落葉樹林内に生えるユリ科の多年草です。

葉は、倒卵状長楕円形で厚みがあり根生し、万年青によく似ているので和名の由来となっています。花茎は1本立ち上がって総状に白い花をつけます。花被片は6個で夏の終わりに濃紺の実になります。

純白で清楚な容姿は、山野草の中では最も貴賓があります。