蕗雪ノ下(フキユキノシタ)  ユキノシタ科

<雪解け水のしぶきがかかる沢沿を好む>

蕗雪ノ下(フキユキノシタ)は、宇奈月の深山の雪解け水が流れる沢に生えるユキノシタ科の多年草です。

根葉は多数出て、長柄ほぼ円形で、基部が心形で縁に不ぞろいの尖った鋸歯が並びます。 花茎には疎らに微毛があり、それに水しぶきによる水滴が一面につき美しく輝いています。 花は円錐状の小花で花茎に多く付きます。

亜高山帯では、同種の黒雲草(クロクモソウ)が見られ、花の咲き方がよく似ています。

犬芥子(イヌガラシ)  アブラナ科

<小さな花は犬辛子>

犬芥子(イヌガラシ)は、宇奈月の山路の縁に自生するアブラナ科の多年草です。

秋に種子から発芽して、冬には根出葉が地表にロゼット状に広がります。葉は、長い楕円形で羽状に分裂し、縁に粗い鋸歯があります。花は総状花序につき、花柄のある小さな黄色の花を咲かせます。果実は円柱状の線形の莢(サヤ)になり、熟すと裂開して種子を出します。

和名は、芥子に似ているが食べられない、まがいもという意味に由来します。役に立たない雑草にはイヌという名前がよくつけられます。イヌトウバナ、イヌガンピ、イヌゴマ、イヌタデ、イヌナズナ等があります。

紅葉唐松(モミジカラマツ) キンポウゲ科

<深山の落葉樹林内に咲く紅葉唐松>

宇奈月の亜高山帯の湿った谷筋に生える、キンポウゲ科の多年草です。

地下茎を出して繁殖しますので群生します。根出葉はい1~3個で長い柄がり、葉身は円形から半円形で7~9裂し複雑な形になります。上部の茎葉は小形で柄が短くなっています。茎の先に散房花序に花をつけ、花弁はありません。

葉が紅葉手になっているのと、白色の花糸を唐松に見立てたのが名前の由来です。

山蛍袋(ヤマホタルブクロ) キキョウ科

<長野県側は山蛍袋>

山蛍袋(ヤマホタルブクロ)は、黒部峡谷・日電歩道の切り立った崖沿いに自生しているキキョウ科の多年草です。

宇奈月温泉周辺では白色の蛍袋(ホタルブクロ)が道路沿や山道の日陰になるところで自生しています。 蛍袋は萼と萼の間に上に反り返った付属片がありますが、山蛍袋は付属片がなくすっきりとした萼です。 花は色つきのものが多く、釣鐘型で先端部が5裂しています。 小雨に濡れた花は下向きなので、昆虫達の絶好の雨宿りの場所になります。

国道148号線を糸魚川から白馬方面へ走ると、花の色が白色から淡紅色に変わるのが観察できます。

赤花(アカバナ) アカバナ科

<小さな花なので目立たない>

赤花は、宇奈月の山路の縁や水湿地に生えるアカバナ科の多年草で、根茎から地下茎を伸ばします。

茎は、稜がなく円柱形で上部でよく分枝し、高さ20~70cmになります。葉は対生し、短い葉柄があるか無柄でしばしば茎を抱きます。葉身は、卵状披針形で基部はやや心形で、縁にあらい鋸歯があります。

茎頂に、白色や淡紅紫色の可憐な小花をつけます。花弁が4個あり、小さいながらも先端が浅く2裂になってます。和名は、茎、葉、果実のすべてが紅葉する草紅葉に由来します。 

球紫陽花(タマアジサイ) ユキノシタ科

<苞が外れて中から紫陽花が現れる>

球紫陽花(タマアジサイ)は、宇奈月の湿った林内に群生するユキノシタ科の落葉低木です。 

若枝はよく分岐して淡緑色で毛があります。 苞が落ちると数個の枝が出て散房状に淡紫色の花をつけます。周りには4~5個の蕚が発達した白い装飾化をつけます。 中央には小さな両性化が密集します。

和名は、新梢の先に付く蕾が総苞に包まれて球状であることに由来します。宇奈月の山では紫陽花の仲間のが多く見られます。 球紫陽花(タマアジサイ)は葉が対生しているのに対し、蝦夷紫陽花(エゾアジサイ)は葉が互生しているので見分けがつきます。 この他に蔓紫陽花(ツルアジサイ)、草紫陽花(クサアジサイ)などが見られます。

牡丹蔓(ボタンヅル) キンポウゲ科

<次から次へと花が開いてくる>

牡丹蔓(ボタンヅル)は、宇奈月の山路の側面に多く見られるキンポウゲ科の落葉藤本です。藤本(トウホン)とは蔓(ツル)のことで、細長く伸びて他物に絡みついたり地面を這う茎をいいます。

葉が牡丹の葉に似て、つる性であることが和名の由来となっています。牡丹形の葉はキンポウゲ科の植物によく見られます。切れ込みが深い葉はキンポウゲ科の特徴です。牡丹蔓は低木に絡みつき、木全体を覆ってしまうので開花時には雪化粧のように見えます。

宇奈月の山々では、つる性の植物が目立つようになりました。葛、蔓紫陽花、岩絡、等の蔓性の植物が増えています。その原因は、山の手入れが行き届かなくなったのと、蔓の若芽を食べる小動物が少なくなったからです。

弟切草(オトギリソウ) オトギリソウ科

<儚い一日花>

弟切草(オトギリソウ)は、宇奈月の日当たりのよい山野や道端に自生するオトギリソウ科の無毛の多年草です。朝露に濡れ、緑鮮やかな葉には、銀色に輝く水玉がいくつも光っています。

茎は円柱形で、葉は広披針形で対生し基部は茎を抱き、葉身には黒い小油点が散在します。枝先は2出葉集散状花序となり、小さな黄色い一日花を次から次へと開花させます。

花言葉は秘密と復讐で、秘伝の薬の秘密を漏らした弟を、兄が切ってしまうという民話から命名されています。古来、薬草として珍重されたので、薬師草や青薬とも呼ばれています。全草を天日干ししたものを生薬では小連翹(しょうれんぎょう)と呼び、鎮痛効果や神経痛や痛風の痛みに効く入浴剤として使われます。

園芸品種の錦糸梅(キンシバイ)や美容柳(ビョウヤナギ)もオトギリソウ科です。河原撫子や水引などと生けると夏の風情を楽しむことができます

九蓋草(クガイソウ) ゴマノハグサ科

<山の斜面に群生する九蓋草>

九蓋草(クガイソウ)は、宇奈月の低山から亜高山の斜面に自生するゴマノハグサ科の多年草です。7月から8月頃、川の崖渕や亜高山の斜面に多く見られます。

茎は根際から直立し、長いもので1メートル近くあり直ぐに目に付きます。茎頂に長い総状花序をつけ、多くの小花が密集します。花冠は筒状で花糸が紫色なので、花穂全体が薄紫色に見えます。

葉は楕円形で、先は尖り細かな鋸歯があり輪生しています。輪生葉は、5枚、7枚と奇数が多く、何節も付くことから九蓋草と名付けられました。

青い蕎麦菜や、淡紅色の越路下野草とともに、爽やかな高原の風に揺れながら、天然の花壇を作っています。

金光花(キンコウカ)  ユリ科

<菖蒲のような葉です>

金光花(キンコウカ)は、宇奈月の亜高山の湿地帯に自生するユリ科の多年草です。葉は根生し、形はアヤメのような剣状線形で、先端は尖り基部は鞘状になっています。

花径の高さは20から40cmぐらいになり、葉よりも高く出ます。茎の下半部には短い葉を互生させます。茎の上端に穂のような総状花序を付け、黄色の小さな花を多数咲かせます。

花は星型に6枚の花被片花があり、下方から開花していきます。子房上位で果実は長楕円形で毒性のサポニンを含みます。