黄瀬戸角向付

<油揚肌の表面>

積雪が多くなると、野菜を雪の下の土に埋めて保存します。寒さで根菜類の甘みが増します。冬野菜の含め煮です。

季節のうつわは「黄瀬戸角向付」です。表千家家元・惺斎好みで、隅切りになっています。黄瀬戸は、桃山時代に美濃で作られた黄色の焼き物です。

加藤唐九郎は、黄瀬戸を平安時代から近現代まで続く灰釉陶全体として捉え、古い順に瓷器手、ぐい吞み手、菖蒲手、菊皿手と分類しました。

菖蒲手が最盛期(桃山時代)の黄瀬戸で、油揚肌や胆礬や鉄彩による加飾の技法が加えられます。ぐい吞み手は、菖蒲手よりも古くて厚手で、彩調も光沢もあります。菊皿手は最も新しく、江戸期から現代まで続きます。唐九郎は、古窯跡から出土する陶片と語りながら、分類をしたのではないでしょうか。

水沢腹堅(さわみずこおりつめる)

<冷たさを増す黒部川>

1月25日から七十二侯は、「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」で二十四節気「大寒」の次侯となります。沢に氷が厚く張りつめるほど寒い頃と言う意味です。水はいよいよ冷たさを増し、1年の内で最も寒い時期となります。この頃は大陸からの強い寒気が入りやすく、記録的な大雪や最低気温をもたらします。

寒の内に汲んだ水は、「寒の水」と呼ばれ細菌が少ないのでお酒を仕込むのには最適です。寒仕込みの酒は、きめ細やかですっきりとした味わいに仕上がります。大吟醸はこの時期を選んで仕込まれ、3か月を経て出荷されます。日本酒の仕込みが、最盛期を迎える時期となります。

この時期は、厳しい寒さの中にも太陽は少しづつ力強さを増し、三寒四温を繰り返しながら季節は確実に春に向かっていきます。生き物たちは敏感に春の気配を感じ取り、目覚めの準備を始めています。