魚上氷(うおこおりをいずる)

<黒部川にそそぐ琴音の滝>

2月14日から七十二侯は「魚上氷(うおこおりをいずる)」で、二十四節気「立春」の末侯になります。春の兆しを感じて魚が動き始め、割れた氷の間から飛び出す頃という意味です。

宇奈月温泉では少し冷え込むと、夜半に雪が舞い稜線は薄っすらと雪化粧します。黒部川は渓流となって流れています。宿の対岸に小さな滝があり、長い年月をかけてほど良い大きさの滝釜が作られています。

宿の創業者と親しかった洋画家の中川一政のお気に入りの滝で、「琴音の滝」と名付けました。滝から黒部川に流れ落ちる清流の岩陰に、山女魚の稚魚が春めく時を待っています。

群れている稚魚の中に降海型の山女魚(ヤマメ)がいます。1年川で過ごした後、海へ落ちてカムチャッカ半島近あたりまで行き、3年後に大きな桜鱒となって戻ってきます。母なる黒部川で毎年見られる晩秋の風物詩です。