大雨時行(たいうときどきにふる)

<雪解け水が流れ込むうなづき湖>

8月2日から七十二侯は「大雨時行(たいうときどきにふる)」で、二十四節気「大暑」の末侯となります。宇奈月は連日、猛暑が続いています。これから暑さが最高潮を迎え、蝉の声が温泉街に響き渡り、強烈な日差しの日がしばらく続きます。暦の上では夏の終わりとなります。

高温多湿な季節風により黒部の山々には薄暗い雨雲が立ち込め、今にも激しい雨が襲ってくるようです。 入道雲が湧き上がるようになれば夕立の合図で、その大雨が大地を洗い流し、しばし夕暮れの涼を与えてくれます。先人たちはこの時期に降る大雨を「滝落とし」「篠突く雨」「銀竹」と情緒のある呼び方をしていました。近頃は異常気象により、その大雨がゲリラ豪雨になる場合があります。

黒部峡谷では、涼を求めてお客様で賑わう頃です。トロッコ電車は始発の宇奈月駅を出ると赤い新山彦鉄橋を渡ります。そして急カーブの2番トンネルと3番トンネルを抜けるとエメラルドグリーンの「うなづき湖」が見えてきます。 2001年に竣工した宇奈月ダムによって湛水されてできた湖です。 黒部峡谷には谷や沢多く存在し、八千八谷と呼ばれています。そこから供給される豊富な雪解け水は、黒部川の流れとなります。湖には雪解け水が満面に湛えられ、涼を含んだ爽やかな川風の源となります。

緑切子苧環形向付

<涼やかなガラスの向付>

二十四節気「大暑」に入ると、暑さが最高潮を迎え、蝉の声が対岸の木々の茂みから伝わってきます。雅膳の冷鉢は葛素麺です。白海老の甘みも加わり涼やかな一皿です。

季節の器は、「緑切子苧環形向付」です。苧環(おだまき)は、白馬一帯に見られる高山植物です。宇奈月側にも多く見られます。

夏海老根(ナツエビネ) ラン科

<樹林内に開く妖精>

夏海老根(ナツエビネ)は、宇奈月の渓谷や沢の周辺などやや湿った落葉樹林内に自生するラン科の多年草です。

ラン科の植物の地上茎の一部が肥大化し貯蔵器官となったものを偽球茎といいます。園芸分野でいうバルブのことです。夏海老根は、この偽球茎は球形になります。葉は、3~5枚が束生し、長さ10~20cmの広披針形で、表面は縦じわが多く先端は鋭尖頭です。

花茎は長さ20~40cmで、1、2個の苞葉があります。花径の上部に総状花序が付き、10~20個の花がまばらに並び、下方から開花していきます。苞は長さ1、2cmの披針形で、萼片は長さ5~20mmです。上部に位置する背萼片は狭卵形、中心の側萼片は斜卵形で、ともに先端はとがり反曲します。その下の側花弁は萼片よりやや短い線形で、先端はとがります。唇弁は心状広卵形で、萼片と同長で3深裂し、中裂片の縁は細波状に縮れ、先端は突出します。

和名は、夏に開花する海老根であることに由来します。