閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)

<雪化粧が美しい黒部の山々>

12月7日から二十四節気は「大雪」に入ります。木々の葉はすっかり散り終え、雪の日が多くなります。七十二侯は「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」で「大雪」の初侯となります。天も地も寒さで塞がれ、本格的な冬到来の頃という意味です。宇奈月温泉を取り巻く山々は雪化粧。黒部川の水面近くの名残の紅葉が、季節の移ろいを感じさせます。季節は日一日と真冬へと向かっていきます。

これからの雪景色は、最も宇奈月温泉らしい風情を醸し出します。その雪景色と湯量豊富な温泉と富山湾の海の幸は、芸術家達を魅了してきました。延楽にゆかりのある川合玉堂、中川一政、小杉放庵、堅山南風、榊原紫峰等の巨匠の作品が館内に展示されています。峡谷に面した館は、雪を愛でるのに最も適したところにあります。

鴻雁来(こうがんきたる)

<黒部川支流・弥太蔵谷>

10月8日から二十四節気は「寒露」となります。夜空に輝く星が冴える頃、秋が徐々に深まり夜は肌寒く、朝夕の露が一層冷たく感じられるようになります。七十二侯は「鴻雁来(こうがんきたる)」で、雁が北から渡ってくる頃という意味です。

これに対して半年前の七十二侯は「鴻雁北(こうがんかえる)」、雁が北に帰る頃で今年は4月10日でした。このように七十二侯は、季節の変わり目を気象変化や動物の行動変化で捉え、漢字3文字ないし4文字で表します。日本人の豊かな感性が育んだ暦といえます。

黒部川は、流れる水の透明度を増しながらサケの遡上を待っています。川沿いに設けられたやまびこ遊歩道には冷たい露に覆われた野菊が花を開き、紫式部の小さな実も色づき始めます。支流の弥太蔵谷に白鷺が現れるようになると、いよいよサクラマスの遡上が間近です。黒部峡谷も山粧う季節の到来となります。

紅花栄(べにばなさかう)

<田植の準備ができた黒部川扇状地>

5月26日から七十二候は「紅花栄(べにばなさかう)」で二十四節気「小満」の次候にあたります。紅花が色付き黄橙色から艶やかな紅色へと変わる頃です。

小満は、陽気盛んにして万物ようやく長じて保つという事なので、草木には一段と生気がみなぎり、万物が次第に色味を増してきます。特に紅花の濃厚な色合いは夏らしさを感じさせます。この時期の天候も色で表現されます。やや強い南風は青嵐、雨は翠雨、緑雨、青雨と森羅万象すべて緑緑で、その濃淡のグラデーションを楽しませてくれる季節でもあります。

禾乃登(こくのものすなわちみのる)

<おわら風の盆:坂の町を照らす西町のぼんぼり>

9月2日から七十二侯は「禾乃登(こくのものすなわちみのる)」で、二十四節気「処暑」の末侯にあたる。禾の文字は、植物の穂の形からできており豊かな実りを象徴する。稲穂が膨らんで黄金色になる頃という意味。

立春から数えて210日目にあたるこの時期は、「二百十日」と呼ばれ台風に見舞われやすい。そのため越中八尾では風害から農作物を守るため風邪鎮めの祭りが行われるようになった。それが「おわら風の盆」である。9月1日から9月3日まで各町内で洗練された踊りが披露される。普段は静かな山間の坂の町に、20万人のお客様が押しかける。哀愁を帯びた胡弓が奏でるおわらの調べが、訪れる人々を魅了する。今年は、残念ながらコロナ禍で全面中止となった。

新作おわらの代表作は、何といっても小杉放庵が詠んだ「八尾四季」である。放庵は日光出身で大正14年(1925)に東京大学安田講堂の壁画を描いたことでも知られている。昭和3年(1928)、おわらの育成に力を注いだ初代おわら保存会会長、川崎順二に招かれ、翌年詠んだ歌詞である。

<八尾四季>
ゆらぐつり橋手に手をとりて
 渡る井田川 オワラ 春の風
富山あたりかあの灯火は
 飛んでゆきたや オワラ 灯とり虫
八尾坂道わかれてくれば
  露か時雨か オワラ はらはらと
若しや来るかと窓押しあけて
 見れば立山 オワラ 雪ばかり

この八尾四季を基に若柳吉三郎が、春夏秋冬にそれぞれ異なった所作がある「四季の踊り(女踊り)」と「かかし踊り(男踊り)」を振り付ける。放庵が八尾で滞在したのは鏡町の旅館「杉風荘(さんぷうそう)」である。

放庵は、疎開のために新潟県赤倉に住居を移し、戦後もそこで暮らすようになる。春陽会を共に立ち上げた中川一政と延楽に度々訪れる。延楽には小杉放庵の足跡が数多く残っている。放庵が好んで使用した紙は半漉きの和紙で、放庵紙 と呼ばれる特注のものだった。

天地始粛(てんち はじめてさむし)

<上新町・御座敷踊り>

8月28日から七十二侯は、「天地始粛(てんち はじめてさむし)」で、二十四節気「処暑」の次侯にあたる。

粛には、鎮まるとか弱まるとか縮むという意味あり、ようやく暑さが鎮まる頃という意味。立春から数えて二百十日は9月1日にあたる。台風の多い時期でもある。実った稲穂を強風から守るために、風を鎮める祈りの踊りが行われる。越中八尾の「風の盆」である。

9月1日から9月3日までの三日三晩、哀愁を帯びた鼓弓の音色に乗って街流しが行われる。踊りは、農作業の所作で組み立てられ、八尾、上新町では町内の通りを使って大輪踊りが行われる。地元の踊り手の後ろについて所作を学のも、おわらを知る方法です。

8月20日から8月30日までの毎日、11の町内が各自持ち回りで前夜祭を行う。今年の初日は天満町で、一足早く担当の町内の街流しや輪踊りが鑑賞できて、本番とは違った情緒を味わうことができるので、お勧めである。