銀彩波絵帆掛舟形向付

<帆掛け舟をかたどった向付>

魚津港では大形の富山海老が水揚げされています。富山海老は紅白の縞模様がある深海性のエビです。孵化して2~3歳が雄で4歳以降は雌になり、沢山の卵を腹肢で抱え込みます。産卵期は3~5月で、赤い体に色鮮やかなコバルトブルーの卵は美しく映えます。漁は小型底引き網やかご縄で行われます。

雅膳の一皿で富山海老と赤いかの強肴です。延楽特製の煎り酒でお召し上がりください。季節のうつわは「銀彩波絵帆掛舟形向付」で、波はシンプルに銀彩で描いています。

牡丹蔓(ボタンヅル) キンポウゲ科

<次から次へと花が開いてくる>

牡丹蔓(ボタンヅル)は、宇奈月の山路の側面に多く見られるキンポウゲ科の落葉藤本です。藤本(トウホン)とは蔓(ツル)のことで、細長く伸びて他物に絡みついたり地面を這う茎をいいます。

葉が牡丹の葉に似て、つる性であることが和名の由来となっています。牡丹形の葉はキンポウゲ科の植物によく見られます。切れ込みが深い葉はキンポウゲ科の特徴です。牡丹蔓は低木に絡みつき、木全体を覆ってしまうので開花時には雪化粧のように見えます。

宇奈月の山々では、つる性の植物が目立つようになりました。葛、蔓紫陽花、岩絡、等の蔓性の植物が増えています。その原因は、山の手入れが行き届かなくなったのと、蔓の若芽を食べる小動物が少なくなったからです。

渕金十二曲硝子向付

<延楽・雅の膳の冷物>

匠膳の一皿、車海老と翡翠茄子です。富山湾の夏の味覚の一つとして車海老があります。旬の車海老と黒部の名水が育んだ長茄子を合わせます。茄子をゼラチンで固めると翡翠のような模様と色合いになります。彩に夏野菜を使い旨みのある出汁で合わせます。

季節の器は、「渕金十二曲硝子向付」です。

弟切草(オトギリソウ) オトギリソウ科

<儚い一日花>

弟切草(オトギリソウ)は、宇奈月の日当たりのよい山野や道端に自生するオトギリソウ科の無毛の多年草です。朝露に濡れ、緑鮮やかな葉には、銀色に輝く水玉がいくつも光っています。

茎は円柱形で、葉は広披針形で対生し基部は茎を抱き、葉身には黒い小油点が散在します。枝先は2出葉集散状花序となり、小さな黄色い一日花を次から次へと開花させます。

花言葉は秘密と復讐で、秘伝の薬の秘密を漏らした弟を、兄が切ってしまうという民話から命名されています。古来、薬草として珍重されたので、薬師草や青薬とも呼ばれています。全草を天日干ししたものを生薬では小連翹(しょうれんぎょう)と呼び、鎮痛効果や神経痛や痛風の痛みに効く入浴剤として使われます。

園芸品種の錦糸梅(キンシバイ)や美容柳(ビョウヤナギ)もオトギリソウ科です。河原撫子や水引などと生けると夏の風情を楽しむことができます

九蓋草(クガイソウ) ゴマノハグサ科

<山の斜面に群生する九蓋草>

九蓋草(クガイソウ)は、宇奈月の低山から亜高山の斜面に自生するゴマノハグサ科の多年草です。7月から8月頃、川の崖渕や亜高山の斜面に多く見られます。

茎は根際から直立し、長いもので1メートル近くあり直ぐに目に付きます。茎頂に長い総状花序をつけ、多くの小花が密集します。花冠は筒状で花糸が紫色なので、花穂全体が薄紫色に見えます。

葉は楕円形で、先は尖り細かな鋸歯があり輪生しています。輪生葉は、5枚、7枚と奇数が多く、何節も付くことから九蓋草と名付けられました。

青い蕎麦菜や、淡紅色の越路下野草とともに、爽やかな高原の風に揺れながら、天然の花壇を作っています。

染付木ノ葉形平皿

<富山湾の岩牡蠣>

雅膳の強肴は、富山湾の夏の旬「岩牡蠣」です。富山湾には、ミネラルを多く含んだ雪解け水が急流河川によって注がれます。河口の沖合ではその伏流水が湧き出し海水温下げて、岩牡蠣の産卵を遅らせます。9月に産卵期に入るので8月の岩牡蛎は、グリコーゲンやミネラルをたっぷりと蓄えて、クリーミーな味になります。特性のタレで味わってください。

季節のうつわは「染付木ノ葉形平皿」で、染付の色合いが岩牡蠣に合います。

金光花(キンコウカ)  ユリ科

<菖蒲のような葉です>

金光花(キンコウカ)は、宇奈月の亜高山の湿地帯に自生するユリ科の多年草です。葉は根生し、形はアヤメのような剣状線形で、先端は尖り基部は鞘状になっています。

花径の高さは20から40cmぐらいになり、葉よりも高く出ます。茎の下半部には短い葉を互生させます。茎の上端に穂のような総状花序を付け、黄色の小さな花を多数咲かせます。

花は星型に6枚の花被片花があり、下方から開花していきます。子房上位で果実は長楕円形で毒性のサポニンを含みます。

鬼下野(オニシモツケ) バラ科

<宇奈月の深山の沢沿いに自生する鬼下野>

鬼下野(オニシモツケ)は、宇奈月の亜高山の沢沿いに自生しているバラ科の大型の多年草です。北海道では平地に自生しています。

全草が、下野草(シモツケソウ)に似ていて、大形なので鬼の名がつきました。茎の高さは、1~2mになり、大形の葉は5中裂し互生します。初夏に茎頂が分枝し集散状散房花序が現れ、多数の白色の 小さな5 弁花をつけます。

開花前の多数の蕾は、緑の葉に包まれた白い鹿の子模様なので、なかなか趣があります。京鹿子(キョウカノコ)の花に似ます。

越路下野草(コシジシモツケソウ) バラ科

<宇奈月の深山に優雅に咲く越路下野草>

越路下野草(コシジシモツケソウ)は、宇奈月の亜高山のやや湿った樹林縁に自生するバラ科の多年草です。

茎は無毛で高さは30cmから大型のもので80cmぐらいになり、葉は掌状複葉で互生します。 頂小葉(複葉の先端にある対にならない一枚の小葉)は、大きく掌状に5~7に中裂します。 8月初旬、茎頂に集散花序を作り淡紅色の小さな花を無数につけます。 お茶花に使われる京鹿子は、下野草を園芸品種に改良したものです。

貴賓ある紅色のグラデーションは、蕎麦菜の紺のグラデーションと鳥足升麻の群生の白色が合わさり、宇奈月の夏山の色を作り出します。

大雨時行(たいうときどきにふる)

<雪解け水が流れ込むうなづき湖>

8月2日から七十二侯は「大雨時行(たいうときどきにふる)」で、二十四節気「大暑」の末侯となります。宇奈月は連日、猛暑が続いています。これから暑さが最高潮を迎え、蝉の声が温泉街に響き渡り、強烈な日差しの日がしばらく続きます。暦の上では夏の終わりとなります。

高温多湿な季節風により黒部の山々には薄暗い雨雲が立ち込め、今にも激しい雨が襲ってくるようです。 入道雲が湧き上がるようになれば夕立の合図で、その大雨が大地を洗い流し、しばし夕暮れの涼を与えてくれます。先人たちはこの時期に降る大雨を「滝落とし」「篠突く雨」「銀竹」と情緒のある呼び方をしていました。近頃は異常気象により、その大雨がゲリラ豪雨になる場合があります。

黒部峡谷では、涼を求めてお客様で賑わう頃です。トロッコ電車は始発の宇奈月駅を出ると赤い新山彦鉄橋を渡ります。そして急カーブの2番トンネルと3番トンネルを抜けるとエメラルドグリーンの「うなづき湖」が見えてきます。 2001年に竣工した宇奈月ダムによって湛水されてできた湖です。 黒部峡谷には谷や沢多く存在し、八千八谷と呼ばれています。そこから供給される豊富な雪解け水は、黒部川の流れとなります。湖には雪解け水が満面に湛えられ、涼を含んだ爽やかな川風の源となります。