染付葡萄文皿

<古さを感じさせない図案>

富山湾の底物の真鯛が美味しくなります。器を変えると料理の表情も変わります。雅膳の強肴は、真鯛の昆布締めです。富山県は昆布の消費量は日本一で、様々な料理に使用します。新鮮な魚を昆布で〆る事は、一般家庭で普通に行われていました。

季節のうつわは「染付葡萄文皿」です。葡萄文は葡萄の実や葉、蔓を意匠化したもので古くは奈良時代に登場します。実が多いことから多産の象徴とされ、吉祥文として好まれました。近世の葡萄文には栗鼠を加えて描かれることが多くなります。

陶磁器においては、鼠志野や志野織部に葡萄文が見られ、伊万里焼にも葡萄文や葡萄栗鼠文が多く見られます。柿右衛門様式の色絵にも葡萄栗鼠文が見られます。実りの秋は、器も多彩です。

半七写竜田川向付

<蒸アワビでひやおろし>

二十四節気の秋分に入ると、寒さが少しづつ増してきます。暑さ寒さも彼岸までとはよく言ったものです。秋の夜長はひやおろしをゆっくり飲むに限ります。柔らかな蒸し鮑をあてに、ぬるめの燗で深まる秋を、旅先の宿で味わって下さい。秋の星空を眺めながら、お部屋の露天風呂で温まるのも秋の夜長の過ごし方です。

季節の器は「半七写竜田川向付」で、白井半七の写しです。紅葉は、立山の室堂平(標高2500m)あたりから少しずつ下へ下へと降りてきます。宇奈月温泉(標高224m)周辺は、11月10日前後が見ごろとなります。

一閑高台皿

<深まりゆく秋をめでる>

虫の音が秋の深まりを感じさせます。十五夜の月は中秋の名月で芋名月ともいいます。

現在の新暦は、旧暦と1~2ケ月のずれがあるため、9月7日~10月8日の間で、満月が出る日を十五夜としています。今年は9月29日です。

雅膳の秋の前菜です。季節の器は、「一閑高台皿」で、十五夜の月に見立てました。

黄瀬戸五寸皿

<黒部奥山のきのこ>

 秋の味覚きのこが美味しい季節となりました。雅膳の一皿は、きのこ霙(みぞれ)和えです。えのき、ぶなしめじ、なめこ、黒トリュフです。

季節のうつわは「黄瀬戸五寸皿」です。 山の味覚は土物が合います。黄瀬戸は文字通り光沢の強い灰釉である古瀬戸系黄瀬戸と、しっとりと潤いのある油揚げ肌を呈する釉中に、黄土を混ぜた黄瀬戸に大別されます。

織部十文字形小鉢

<フクラギは福が来る魚です>

富山湾の定置網にフクラギが入るようになりました。福来魚(フクラギ)は、鰤の幼魚で体長は30~40cm、体重は500~1,000グラム位のものを指します。漢字表記でもわかるように、かつては大漁で港がにぎわったことから福が来る魚として地元民がこよなく愛してきた魚です。漁期が比較的長く、寒鰤のシーズンより一足早い9~11月に盛漁期を迎えます。脂が少なく癖がないので、お造り、揚げ物、焼き物、味噌漬等、様々な料理の仕方で美味しく味わえます。雅膳の一皿は、福来魚(フクラギ)の南蛮漬けです。

季節のうつわは、「織部十文字形小鉢」です。珍味を入れるのに猪口や小鉢を使います。山海の珍味によってお酒が進みます。

赤七宝切込皿

<のど黒の塩焼き>

秋の気配が感じられるようになると、のど黒は旨味のある脂がのって美味しくなります。地元の生地漁港や魚津漁港には形のいい大物が並びます。のど黒のしゃぶしゃぶも絶品ですが、塩焼きは外せません。角のないまろやかな塩味で、料理に深みが増す岩塩を添えて味わってください。

季節のうつわは、「赤七宝切込皿」です。朱一色で七宝を図案化しています。縁起のいい吉相文で、朱の濃淡が存在感を与える皿です。

横笛型、兎丸型・珍味入れ

<秋の旬彩>

 秋の酒菜を彩りよく竹籠に盛り込みました。黒部の山の珍味と富山湾の海の珍味を盛沢山に取り揃えました。

秋の酒といえば「ひやおろし」です。黒部峡のひやおろしがおすすめです。新酒に火入れをして、ひと夏、蔵の中で寝かすとコクのある味わいになります。ぬる燗でゆっくりと味わって下さい。

季節の器は、 「横笛型珍味入」と「兎丸型珍味入」です。秋の夜長をお付き合いします。

金彩乱菊蓋向

<菊の花弁は金彩一色>

和食は世界文化遺産に登録されてから、海外のお客様から注目を集めています。料理に使われる食材や器に対する期待も、年々高まります。器も、染付を中心に磁彩、陶彩、赤絵などが人気があります。とりわけ金彩は人気が高いです。

雅膳の一皿は「金彩乱菊蓋向」です。菊の花びらを金彩で施してあります。とても華やかな器です。重陽の節句は菊を食します。

伊羅保割山椒

<秋になると山椒の実が割れます>

9月1日に紅津和井蟹が解禁となり、市場を赤く染めています。その一角に並べられているのが毛蟹です。富山湾の毛蟹は、刺し網や底引きでかかります。味噌は格別の旨味がありますが、漁獲量が少ないので高価で取引されます。

季節の器は、「伊羅保割山椒」で番浦史郎の作品です。山椒は春に小さな黄緑色の花が多数開花します。雄花は希少価値の花山椒として食用にされ、雌花は実山椒として使われます。その果皮は芳香を有します。果実は初め緑色ですが秋になると赤く熟し、裂開して中から黒い光沢が持った球形の種子が出てきます。その裂開した形が割山椒の器です。小鉢や珍味入れによく使われます。

色絵白菊向付

<重陽のお造り>

9月9日は、重陽の節句です。重陽の節句は平安の初めに中国より伝わりました。古来中国では、奇数は縁起が良い陽数で、陽数の最大値である9が重なる9月9日を「重陽」と呼び、節句の1つとしました。

菊は、仙境に咲く霊薬として、邪気を払い長寿の効能があるといわれていました。別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊を身近に感じる日でもあります。

9月7日から二十四節気の白露に入り、秋めいてまいりました。富山湾の魚介類が一段と身がしまり、味も濃くなります。匠膳のお造りです。

季節の器は、「色絵白菊向付」です。菊を愛でる「観菊の宴」もいいかもしれません。お酒は、ひやおろしのぬるめの燗がおすすめです。