姫青木(ヒメアオキ)は、宇奈月の山地の雑木林内に自生する、ガリア科の常緑低木です。青木の日本海側多雪地帯の変種で、一回り小さいです。
高さは、1mほどで幹は積雪に押され横ばいし、葉がつく部分で斜めに立ち上がります。葉は長楕円形で、葉の縁に粗い鋸歯があります。雌雄異株で、花期は3月から4月にかけて目立たない、小さな褐色の花をつけます。果実は卵型で、秋に赤く熟し翌年の開花のころまでついています。
宇奈月の山野草
深山片喰(ミヤマカタバミ) カタバミ科
深山片喰(ミヤマカタバミ)は、宇奈月の山地の林内や林縁に群生するカタバミ科の多年草です。
地下茎は太く古い葉柄基部に包まれています。茎は分枝せずに長い花柄の先に白い花を1個つけ、花弁は5枚で、古くから家紋として使われています。陽が当たらないと花は開きません。葉は、混生して長い葉柄があり3出掌状複葉で、小葉は広倒心形です。夜はしぼんでしまいます。
越の小貝母(コシノコバイモ) ユリ科
越の小貝母(コシノコバイモ)は、宇奈月の日陰の山の斜面に生えるユリ科の多年草で日本固有種です。雪解けの斜面で見かける花で、周辺には菊咲一華も見られます。
宇奈月で自生しているものは、やや小さく茎の長さは5cmから10cmぐらいで直立に伸ばし、上部に細長い無柄の葉を対生させ、さらにその上に小さな葉を3個輪生させます。茎頂に淡黄色の広鍾形の花が下向きに一輪つきます。
分布は、越の国(山形県南部から敦賀まで)の日本海側で、これが名前の由来となっています。この可憐な花は、立山や白馬岳に見られるクロユリに一番近い植物で、学名はFritillaria。これはサイコロを入れる筒の意味です。海外でも花の形から命名される事はよくあります。
貝母(バイモ)とはアミガサユリの鱗茎を乾燥させた生薬で、漢方処方に用いられます。これらのユリ科の植物はバイモ属として分類されています。
菊咲一華(キクザキイチゲ) キンポウゲ科
宇奈月の原野の雪が融け始めると、先ず開花するのは菊咲一華(キクザキイチゲ)で、キンポウゲ科の多年草です。宇奈月では白や淡紫色の花が多く、まれに淡紅色も見られます。
暖かくなると花が開き、夜や雨の時は気温が下がるので花を閉じます。上部に三枚の苞葉が輪生し、深く切れ込んだ葉はキンポウゲ科の特徴が出ています。多雪地の山地で普通に見られる可憐な花です。落葉樹林内でもよく見かけます。菊に似た花を一輪つけるところから和名の由来となっています。
姫踊子草(ヒメオドリコソウ) シソ科
姫踊子草は、宇奈月温泉街の道ばたに群生し、普通に見られる越年草で帰化植物です。
茎は、シソ科の特徴である方形で直立し、短い毛があります。葉は対生し、茎の下部では長い柄があって円心形です。上部は卵円形で葉柄が短く密に詰まり、赤紫色になることが多いです。花冠は、淡紅色で唇の先が2裂する二唇系で、葉の脇から放射線状に外側に向かって開きます。
これとよく似ているシソ科のホトケノザは、葉の形が半円形で蓮台のようになっていますので、容易に見分けがつきます。
丸葉満作(マルバマンサク) マンサク科
<先ず咲くマンサク>
丸葉満作(マルバマンサク)は、宇奈月の山地に生えるマンサク科の落葉低木です。日本海側に多く分布します。
残雪多い山の斜面でひっそりと細い花を咲かせます。花は、花弁が4枚で黄色く細長いひも状です。萼は、赤褐色で花全体が周りにとけ込んで見つけずらいです。雪の重みで曲げられても折れない粘りの強い材は、地元では和カンジキに用いられてきました。雪国ならではの知恵です。
和名は、春まず咲くのと葉先が丸くなっていることに由来します。ただし花の咲く頃は葉がまだ出ていなくて、葉が開く頃は花が散っているので、両方同時に観察することができない植物です。
木五倍子(キブシ) キブシ科
木五倍子(キブシ)は、早春の宇奈月谷でよく見かけるキブシ科の雌雄異株の落葉低木です。藤のような花序に黄花が付くので黄藤(キフジ)ともいいます。
前年の秋に枝の葉腋から総状花序をたらし、出葉前の下旬ごろに一面に開花します。花は鐘形で雄花は淡黄色で雌花はやや緑色を帯びています。和名は、秋に熟す緑黄色の果実を染料の原料である五倍子(フシ)の代用として使ったことに由来します。早朝、山歩きをすると木々の芽吹きに出会い、自然の息吹を感じることができます。
深山寒菅(ミヤマカンスゲ) カヤツリグサ科
深山寒菅(ミヤマカンスゲ)は、宇奈月の山地の樹林内に生えるカヤツリグサ科の多年草です。根茎はやや伸長して叢生します。 宇奈月のような多雪地では、伸長した根茎が数年分残り放射線状に株が繋がります。
葉の基部の葉鞘は、紫褐色で光沢があります。葉は幅5ミリ前後の線形で、やや柔らかく光沢のある濃緑色で縁はわずかにざらつきます。開花時期は4月から6月ごろ、小穂を直立させて上部に雄花を沢山つけます。
檀香梅(ダンコウバイ) クスノキ科
落葉樹の冬の姿は、厳寒の環境に耐えている時の姿です。冬を迎える時、一斉に葉を落とし、来るべき春に備えて瑞々しい生命の息吹を宿しています。
その象徴が冬芽です。樹木の種類により特徴が出ています。冬芽には様々な名称がつけられています。枝の先端に付いている芽は頂芽で、枝の横から出る芽が側芽です。更には葉や枝になる芽が葉芽、花の咲く芽が花芽です。冬芽の形や付き方で樹木がわかります。
檀香梅の冬芽は、魚の鱗のような芽鱗に特徴が出ています。落葉樹の中で逸早く花を咲かせます。黄色の小さな花を枝に無数に付けます。葉や枝に芳香があるので白檀(ビャクダン)の漢名の檀香が付けられています。