灰釉四方平向付

<灰釉陶器>

1年の内で最も寒さが厳しい大寒。この寒の内に獲れる富山湾の寒鰤は格別です。お造り、焼き物、鰤大根とその料理は、多彩です。出汁のきいたとろみに春野菜との取り合わせは、未だ遠い早春の香りがします。

季節のうつわは「灰釉四方平向付」です。
灰釉独特の味わいと貫入の美しさが味わえる優しい器です。

灰釉とは、草木の灰を原料として長石、陶石、粘土などを配合した高火度釉です。釉の主成分になる原料の長石、石炭、カオリン、珪石のうち、石炭と珪石を植物の灰に求めたものをいいます。焼成すると溶融してガラス質の釉となります。中国では殷代に作られ後に青磁の釉へと成熟します。

さらには灰釉から黒釉や白釉が作られました。日本では平安時代の9世紀に、愛知県の猿投窯が中国の越州窯青磁を手本に灰釉を開発し、さらに古瀬戸などへ発展します。桃山時代には陶技も進歩し、灰釉は美しい釉として茶人の評価を得ます。江戸時代には民窯の定番となり、大正末年には民芸という美術として人々の認知を得ます。

土灰に長石を混ぜた灰釉は、還元焼成で透明性の緑色を呈し、酸化炎で透明性の褐色を帯びます。これは原料に含まれる鉄分による呈色です。また灰釉には呈色剤を加えて各種の色を表すことができます。緑の織部釉は銅呈色の灰釉のことであり、褐色の飴釉は鉄呈色の灰釉のことです。藁灰による白濁釉は海鼠釉ともいわれています。