秋の酒菜を彩りよく竹籠に盛り込みました。黒部の山の珍味と富山湾の海の珍味を盛沢山に取り揃えました。
秋の酒といえば「ひやおろし」です。黒部峡のひやおろしがおすすめです。新酒に火入れをして、ひと夏、蔵の中で寝かすとコクのある味わいになります。ぬる燗でゆっくりと味わって下さい。
季節の器は、 「横笛型珍味入」と「兎丸型珍味入」です。秋の夜長をお付き合いします。
2024年9月
秋の麒麟草(アキノキリンソウ) キク科
秋の麒麟草(アキノキリンソウ)は、宇奈月の登山道沿いに群生する、キク科の多年草です。低山地から亜高山へと開花が移り、標高が高くなるに従って小形化してきます。
茎の高さは、40~80cmで直立し、細くて強いです。葉は披針形で互生します。茎頂に散房又は総状に、多数の黄色の頭花を付けます。総苞は筒状で総苞片は4列です。和名の由来は、秋に咲く麒麟草のようであるところからきています。
金彩乱菊蓋向
和食は世界文化遺産に登録されてから、海外のお客様から注目を集めています。料理に使われる食材や器に対する期待も、年々高まります。器も、染付を中心に磁彩、陶彩、赤絵などが人気があります。とりわけ金彩は人気が高いです。
雅膳の一皿は「金彩乱菊蓋向」です。菊の花びらを金彩で施してあります。とても華やかな器です。重陽の節句は菊を食します。
立薊(タチアザミ) キク科
立薊(タチアザミ)は、宇奈月の日当たりのよい林縁に生える、キク科の多年草です。北海道や本州の日本海側に広く分布します。
茎の高さは、1~2mになる大形の薊です。茎葉は長楕円形で、基部は半ば茎を抱いて互生しています。
茎の上部で、分岐した枝先に淡紅紫色の頭花を上向きに1~3個開きます。頭状花序は筒状花のみで構成されています。
山母子(ヤマハハコ) キク科
山母子(ヤマハハコ)は、宇奈月の亜高山に生えるキク科の多年草で、雌雄異株です。
茎は、高さ30~70cmとなり、白い綿毛で覆われています。葉は細長い披針形で互生し、葉の裏には白色か淡褐色の綿毛が密生します。
花は8~9月に開花し、白色の筒状花からなる頭状花が、散房状に集まります。白い花弁に見えるところは総苞片で、小花は淡黄色です。
伊羅保割山椒
9月1日に紅津和井蟹が解禁となり、市場を赤く染めています。その一角に並べられているのが毛蟹です。富山湾の毛蟹は、刺し網や底引きでかかります。味噌は格別の旨味がありますが、漁獲量が少ないので高価で取引されます。
季節の器は、「伊羅保割山椒」で番浦史郎の作品です。山椒は春に小さな黄緑色の花が多数開花します。雄花は希少価値の花山椒として食用にされ、雌花は実山椒として使われます。その果皮は芳香を有します。果実は初め緑色ですが秋になると赤く熟し、裂開して中から黒い光沢が持った球形の種子が出てきます。その裂開した形が割山椒の器です。小鉢や珍味入れによく使われます。
色絵白菊向付
9月9日は、重陽の節句です。重陽の節句は平安の初めに中国より伝わりました。古来中国では、奇数は縁起が良い陽数で、陽数の最大値である9が重なる9月9日を「重陽」と呼び、節句の1つとしました。
菊は、仙境に咲く霊薬として、邪気を払い長寿の効能があるといわれていました。別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊を身近に感じる日でもあります。
9月7日から二十四節気の白露に入り、秋めいてまいりました。富山湾の魚介類が一段と身がしまり、味も濃くなります。匠膳のお造りです。
季節の器は、「色絵白菊向付」です。菊を愛でる「観菊の宴」もいいかもしれません。お酒は、ひやおろしのぬるめの燗がおすすめです。
釣舟草(ツリフネソウ) ツリフネソウ科
釣船草(ツリフネソウ)は、宇奈月の山中の木陰の湿った所に自生するツリフネソウ科の一年草です。
茎は、多汁質で瑞々しく直立してよく分岐し帯赤色で節が太くなります。 葉は、広皮針形で先は尖り細かい鋸歯がつきます。 夏から秋に茎の上部から細長い花序が伸び総状花序となり、それぞれ数個の花を付けます。 赤紫色の花は小花柄をもち基部には小さな苞をつけます。 花の形が船がぶら下がっているような形なのでこの名前がつきました。
果実は、触ると勢いよく飛び1年草の種族を増やす工夫がなされています。 秋の朝露に濡れた紅紫色の花は、静まりかえる深山にひときわ艶やかな色彩を呈しています。
色絵菊絵小判形向付
重陽の節句には、菊を愛でる器を使います。双方に描かれた大輪の菊花は宴に華を添えます。揚げ物は蓮餅です。
季節のうつわは「色絵菊絵小判形向付」です。菊をあしらった器は数多くありますが、どれも美しく収まります。
田村草(タムラソウ) キク科
田村草(タムラソウ)は、宇奈月の亜高山の草地に自生するキク科の多年草です。
茎は直立し、大きいもので高さ150cmになります。葉は羽状で切れ込みが深く、刺がありません。9月から10月にかけて、茎や枝の先に薊に似た頭花を付けます。頭花は紅紫色の多数の筒状花からなり、くびれた花床から広がる形は実に美しく、秋の山野草の中では最もすっきりとした容姿です。
宇奈月の山地では一時数が少なくなりましたが、周りのイタドリやヨモギなどの大形の草を除去しながら日当たりを確保することで、数が少しずつ増えています。秋の草原にはなくてはならない山野草です。