霎時施(こさめ ときどきふる)

<黒部川扇状地から後立山連峰を望む>

10月28日から七十二侯は「霎時施(こさめときどきふる)」で、二十四節気「霜降」の次侯となります。霎(こさめ)は、小雨ではなく通り雨で時雨(しぐれ)のことです。一雨毎に気温が下がり、冬が近づく頃という意味です。一雨毎に気温が一度下がるので「一雨一度」とはよく言ったものです。

秋晴れの下、黒部川河川敷から上流を望むと初冠雪を戴いた後立山連峰が白く輝いています。富山県と長野県の境をなしている連山です。左から白馬岳(2932m)、旭岳(2867m)、清水岳(2603m)の名座で、さらには五竜岳(2814m)、鹿島槍ヶ岳(2889m)と連なっています。いずれも黒部川を育む名座です。

秋時雨は、冬支度を始める合図で、黒部川の支流ではサクラマスの産卵が始まっています。黒部峡谷鉄道の最終駅である標高600mの欅平付近は、今が紅葉真っ盛りです。黒部峡谷の紅葉前線は、宇奈月温泉へと約10日間かけて降りてきます。山間の出湯を取り囲むは山々は、いよいよ錦繡の時を迎えます。

吊花(ツリバナ) ニシキギ科

<色鮮やかな蒴果>

吊花(ツリバナ)は、宇奈月の山地の樹林内に生える、ニシキギ科の大形の落葉低木です。

全株無毛で、樹皮は灰色になり、本年枝は丸く細くて緑柴色です。葉は短柄で単葉で対生し、長楕円形で縁には細かい鋸歯があります。

5~6月、葉腋に柄のある集散花序をつけ、十数個の小花をまばらに下垂して開きます。花は淡緑色で5数性です。10月、球形の蒴果は紅色に熟し5裂します。

色絵龍絵向付

<色絵の向付に秋野菜>

黒部の山々が紅に染まる頃、秋野菜が美味しくなります。茸や甘味を含んだ根菜類を優しい出汁で炊きあげます。深まりゆく黒部の秋をお楽しみください。

季節のうつわは「色絵龍絵向付」です。すっきりとした色合いの赤絵は、三浦竹軒の作品です。

洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ) ヤマゴボウ科

<大形の多年草で帰化植物>

洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)は、宇奈月の路傍の生える、ヤマゴボウ科の大形の多年草で、北米産の帰化植物です。

明治年間に日本に入り、各地に繁殖しています。茎は直立して高さ1~2mとなり、丈夫で分岐し、茎は紅紫色を呈します。葉は互生して、長楕円状披針形で鋸歯はありません。7~9月、柄のある総状花序をだし、白色の小さい花を咲かせます。

10月、花穂は垂れ、果実は葡萄の房状になり、艶のある黒色になります。

蔓苦草(ツルニガクサ) シソ科

<道端のやや湿った土地に生える>

蔓苦草(ツルニガクサ)は、宇奈月の山野の林縁などに生えるシソ科の多年草です。

根茎は細長く地中を這います。茎は高さ20~80cmでシソ科特有の四角形で細かい毛があります。葉は対生し、長い柄があり長卵形で先は尖り、基部は細くなり縁には粗い鋸歯があります。

8~10月、上部の葉腋から総状花序を出し、小さな唇形花を多数つけます。

霜始降(しもはじめてふる)

<昭和天皇 御製>

10月23日から二十四節気は「霜降」となります。秋は深まり暖が欲しくなる頃、里山には霜が降ります。「霜降」が過ぎれば立冬となるので、今は秋から冬への変わり目で、これからが黒部峡谷の紅葉が見ごろとなります。大陸からの寒気が入ると気温が急激に下がり、雨が雪に変わって立山連峰、後立山連峰の名座が白く輝くようになります。

七十二侯は「霜始降(しもはじめてふる)」で、二十四節気「霜降」の初侯となります。延楽から対峙する山の稜線は、朝夕の冷気で紅葉が始まり、黒部川支流の弥太蔵谷では、サクラマスの産卵が始まります。

昭和33年10月21日、昭和天皇が延楽で宿泊されたときに詠まれた御製が残されています。

(御製 宇奈月の宿より黒部川を望む)
くれないに 染め始めたる 山あいを
  流るる水の 清くもあるかな
 
 侍従 入江相政 謹書

宿の部屋から眺める黒部の山々は色付き始め、峡谷を流れる水はますます清く透明度増してきます。今も昔も変わらぬ黒部峡谷の美しさです。

水玉草(ミズタマソウ) アカバナ科

<小さな可憐な花をつける>

水玉草(ミズタマソウ)は、宇奈月の山の木陰に生える、アカバナ科の多年草です。

茎は直立し、高さ20~60cmぐらいになります。葉は対生し小さな葉柄があり、葉身は広披針形でまばらに低い鋸歯があり、先はとがっています。
9月から10月頃、茎の先や上部の葉腋に、総状花序を出し小さな白色を帯びた花をつけます。

水玉のように小さな可憐な花なので、見過ごしてしまいます。

薬師草(ヤクシソウ) キク科

<花は鮮やかな黄色で固まって咲く>

薬師草(ヤクシソウ)は、宇奈月の日当たりのよい山野の路傍や草地に生える、キク科の多年草です。

茎はよく分枝して高さ30cm~120cmになります。初期には根出葉がありますが、花時には無くなり、茎葉だけになります。茎葉は互生し倒卵形で縁に浅い鋸歯があり、基部は後方に丸く張り出し、茎を抱きます。

夏から秋にかけて、枝先や上部の葉腋に、黄色の頭花を数個ずつ付けます。

背高泡立草(セイタカアワダチソウ) キク科

<群生する外来種>

背高泡立草(セイタカアワダチソウ)は、宇奈月の荒れ地や堤などで大群生する、北米原産のキク科の大型多年草です。

茎は高さ2m位にもなり、葉は披針形で互生しています。秋になると茎頂が分岐して、大型の円錐花序になり黄色の小頭花を多数つけます。

日本へは蜜源植物として導入されました。

犬塔花(イヌトウバナ) シソ科

<小花をたくさんつける>

犬塔花(イヌトウバナ)は、宇奈月の山の木陰や路傍に生える、シソ科の多年草です。

茎は、シソ科特有の方形で長さが30cm前後です。葉は、狭卵型でやや薄く、縁には鋸歯があり対生しています。夏から秋にかけて茎の先に花穂を作り、輪生状に淡紅紫色を帯びた小花を付けます。萼は筒状で、先は2唇に分かれ、上唇は3裂、下唇は細く2裂になります。