
秋風が吹くと真鯛は脂が乗り美味しくなります。新鮮な真鯛を薄く引いて昆布締めにします。純米吟醸のぬる燗に合う肴です。秋の夜長はぬる燗に限ります。
季節のうつわは「南京交趾長角向付」です。交趾とは現在のベトナム国の南部の古い地方名です。交趾焼とは中国河南省で焼かれた三彩陶磁の日本名で、磁胎と陶胎があります。この内、陶胎の三彩は桃山時代の美濃焼の黄瀬戸や楽焼のモデルとなり、磁胎の素三彩は江戸後期の永楽保全、偕楽園焼、長与焼の重要なモデルとなっています。
秋風が吹くと真鯛は脂が乗り美味しくなります。新鮮な真鯛を薄く引いて昆布締めにします。純米吟醸のぬる燗に合う肴です。秋の夜長はぬる燗に限ります。
季節のうつわは「南京交趾長角向付」です。交趾とは現在のベトナム国の南部の古い地方名です。交趾焼とは中国河南省で焼かれた三彩陶磁の日本名で、磁胎と陶胎があります。この内、陶胎の三彩は桃山時代の美濃焼の黄瀬戸や楽焼のモデルとなり、磁胎の素三彩は江戸後期の永楽保全、偕楽園焼、長与焼の重要なモデルとなっています。
10月18日から七十二侯は、「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」で二十四節気「寒露」の末侯となります。夜は肌寒くなり、朝夕の露が冷たく感じられるようになります。「秋の日はつるべ落とし」という言葉の如く、太陽があっという間に沈んで日が短くなると、蟋蟀(きりぎりす)が戸口で鳴くようになります。昔はコオロギのことをキリギリスと呼んでいました。
一雨ごとに秋の深まりが感じられ、黒部の山々の稜線は紅に染まりつつあります。17日の富山県内は上空に寒気が流れ込み、北アルプスの名座は雪化粧しました。黒部の流れる水は透明度が増し、サケの遡上が始まります。サクラマスは皐月の頃に遡上して、今は深い淵に潜んでいます。外気温が下がると支流へ移動して産卵の頃合いを窺っています。
寒露に入ると部屋の室礼も変わります。お軸は塩﨑逸陵の「秋草の図」です。塩﨑逸陵は、富山県高岡市出身の日本画家で東京美術学校(東京藝術大学)に学びます。川端玉章、寺崎広業に師事し、気品あふれる花鳥画や人物画を描きました。芸術家の足跡が延楽に残されています。まさに旅館ならではの文化です。
雌待宵草(メマツヨイグサ)は、宇奈月の日当たりの良い草地に生える、アカバナ科の北米原産の帰化植物です。
根出葉は細長く鋸歯があり、茎上の葉はやや小さく広披針形です。葉腋に単生し、花弁は4個で黄色で変異が大きです。花弁と花弁の間に隙間があるものがアレチマツヨイグサで、隙間のないものはメマツグサです。
川緑(カワミドリ)は、黒部川や宇奈月谷の川岸の法面などの湿りがちな草地に生える、シソ科の多年草です。
茎は、シソ科特有の方形で、全体に薄荷に似た強い香気があります。葉は広卵形で、鋸歯があり対生しています。枝の先に10cm前後の花穂を作り、淡紅紫色の花を密に付けます。萼は筒状で花冠は二唇形で、上唇は直立し下唇は開出して3裂します。
焼き魚を、華やかな面の余白部分に小さく載せます。金彩に縁どられた花と秋草に包まれた一品は、料理の流れを楽しくします。のど黒は、脂がのって美味しくなるころです。雅膳の一皿です。
季節のうつわは「仁清色絵菊絵七寸皿」です。秋を華やかに彩る器です。
秋の野罌粟(アキノノゲシ)は、宇奈月の日当たりのよい、至る所に生えるキク科の一年草または越年草です。
茎の高さが、200cmにもなる大形で、茎葉は深く羽裂して互生し、茎を切ると白い乳液が出ます。茎の上部は分岐して円錐花序となり、淡黄色の頭花を上向きに多数開く。総苞は円柱状で瘦果が成熟すると、その下部が膨れてきます。
野紺菊(ノコンギク)は、宇奈月の山野や路傍に生えるキク科の多年草で、地下茎を出して増えます。野菊の一種である嫁菜によく似ていて、地方によっては変種もあるので見分けるのが困難です。
茎は、よく分岐して真直ぐ伸びます。葉は長楕円形で互生し、両面に短毛を密生してざらつきます。この点が、ほぼ無毛の嫁菜との違いです。茎の先端の花序はゆるい散房状で、頭花の周辺の舌状花は細長く紫色から淡紫色の野菊です。
御蓼(オンタデ)は、宇奈月の亜高山帯から高山帯にかけて分布する、タデ科の多年草です。
根茎の各節から芽を出し、中空の太い茎を伸ばし、高さが30~100cmになります。 葉は単葉で互生します。
夏から秋にかけて、上部の葉腋から花穂が伸び、総状花序となり円錐状になります。雌株の果実は、痩果で3個の翼があり、紅色を帯びます。
10月13日から七十二侯は「菊花開(きくのはなひらく)」で、二十四節気の「寒露」の次侯にあたります。菊が咲き始める頃という意味です。各地で菊祭りが開かれ、朝晩の冷え込みが肌で感じられるようになり、金木犀の香りが漂い始めます。
立山黒部の紅葉前線は、9月中旬の立山室堂平(2450m)付近から次第に高度を下げ、今は黒部平(1828m)付近が紅葉の見ごろです。「秋の日はつるべ落とし」と言うくらいに驚くほど日が短くなり、太陽はあっという間に沈み夜空には冴え冴えと月や星が輝く頃でもあります。
清少納言は、枕草子で「秋は夕暮れ 夕日のさして山の端いと近うなりたるに 鳥の寝どころへ行くとて 三つ四つ二つ三つなど 飛びいそぐさえあはれなり まいて雁などの連ねたるが いとちいさく見ゆるはいとおかし 日入り果てて 風の音虫の音など はた言ふべきにあらず 」と綴っています。山間の出湯に身を委ね、夕暮れ時の虫や風の音を聞きながら、枕草子の風情に触れてみるのも旅ならではの楽しみ方です。
秋が深まるとひやおろしが美味しくなります。肴は、白海老の昆布締のお造りです。白海老は1匹1匹をむき身にし、昆布で締めます。昆布の風味が白海老に伝わる繊細な味わいのお造りです。生姜醤油、煎り酒でお召し上がりください。合わせるお酒は、富山市岩瀬の桝田酒造店の満寿泉LE(リミテッドエディション)山田錦ひやおろしです。バランスが良く、すっきりとした飲み口でのびやかで瑞々しい味わいのひやおろしです。
季節のうつわは「油滴天目向附」です。油滴釉薬の結晶が作り出す千変万化の景色は、宇宙を想像させます。満天の星のような輝きをお楽しみください。