染付魚藻文五寸皿

<春の味覚・桜鱒とアスパラ>

生地の漁港に桜鱒が水揚げされています。脂が乘っていて美味です。一旦、冷凍をかけてお造りとしてお出しします。ちり酢で召し上がっていただきます。延楽・雅膳の一皿です。

季節のうつわは「染付魚藻文五寸皿」です。魚藻文とは、水中植物が揺れ動く水辺に、魚が泳ぐ姿を描いた文様のことです。中国元・明代に多く作られました。魚の中国語音が「余」に通じ富や豊かさを表し、「藻」は魚が隠れる場所で安全な家をを表すので、吉祥文となります。

蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

<相倉集落・田植えで忙しくなる頃>

5月21日から二十四節気は「小満」に入ります。小満とは陽気盛んにして万物の生長する気が天地に満ち始める頃で、立夏から数えて15日目となります。七十二侯は「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」で二十四節気「小満」の初侯になります。蚕が桑の葉を盛んに食べて成長する頃という意味です。

越中五箇山では古くから養蚕が盛んで、合掌造りの家屋の内部は養蚕の為の様々な工夫がなされています。茅葺の建物が田圃の水面に映り込む頃でもあります。日一日と夏めき、麦の収穫や田植えの準備で農家は忙しくなります。この時期に吹く少し強い南風を青嵐(あおあらし)と呼び、雨を翠雨、緑雨、青雨など天候を色で表わすくらいに森羅万象は色付いてきます。

この季節は異常乾燥に見舞われる頃でもあります。昭和21年5月21日、宇奈月温泉街の建設会社の作業所付近から出火し、折しもフェーン現象による強風で火が瞬く間に八方に飛ばされ、温泉街のほとんどを焼失するという大火災が起きました。そこから復興して今日の宇奈月温泉があります。それ以来5月21日は、「宇奈月温泉大火記念日」として消防訓練が行われ、宇奈月神社では火鎮祭が行われます。

黄交趾菖蒲形向付

<越中宮崎産・岩モズク>

越中宮崎産の岩水雲(イワモズク)が旬を迎えました。宮崎漁港は、富山県朝日町で新潟県境に位置します。

一般の水雲(モズク)は、ホンダワラ等の藻につきますが、岩水雲(イワモズク)は、岩礁につきます。太くて歯ごたえがあるので口いっぱいに磯の香りが広がります。 合わせる地酒は朝日町の林酒造の「大吟醸黒部峡」がお薦めです。 ふくよかで切れのいいお酒です。

季節のうつわは「黄交趾菖蒲形向付」です。 宇奈月公園の黄色の花菖蒲が咲き始めます。

朴の木(ホオノキ) モクレン科

<大形で芳香がある>

朴の木(ホオノキ)は、宇奈月の山や平地に生えるモクレン科の落葉高木です。栃の木とよく間違えられ、高さ20mを越える高木は、樹皮が灰白色でまばらに分岐します。

大形の長楕円形の葉は、枝先の新しく伸びた部分に集まって互生しますが、束生しているので輪生状にも見えます。芳香のある葉は殺菌作用があるためおにぎり、お餅、ちらし寿し等、食物を包むのに用いられました。また肉厚の葉は、落ち葉になった後も火に強いので味噌や他の食材を載せて焼く器代わりにも使われています。

花は大形で芳香があり、輪生状の葉の真ん中に1個だけつけます。栃の木に蔓性の植物がよく寄生するのに対し、朴の木にほとんど見られないのは、他の植物を排除する物質を分泌する、他感作用を示すためだと考えられます。

雪椿(ユキツバキ) ツバキ科

<落葉樹林内で開花する雪椿>

雪椿は、宇奈月の山地の落葉樹林内に、群落をつくって自生するツバキ科の常緑小高木です。本州の日本海側の多雪地帯に多く分布し、ツバキの亜種として取り扱われています。

宇奈月では5月ごろ、僧ヶ岳登山道の樹林内で多く見られ、樹形は降り積もった雪に押されて直立できず、背が低く分枝が盛んに行われます。花は平開 するので藪椿と見分けがつきます。木々を覆う雪が解けると赤い花を付け、残雪の白に美しく映えます。

丸葉青梻(マルバアオダモ) モクセイ科

<白い細かな花をつける丸葉青梻(アオダモ)>

丸葉青梻は、宇奈月の低山で見られるモクレン科の落葉高木で、高さが5mから15mになります。

樹皮は灰色で若枝には腺毛があります。葉は長柄の奇数葉状複葉で対生します。新梢に円錐花序をつけ、白色線形の4弁の小花を多くつける。葉は名前に反して丸くなく縁に鋸歯がほとんどないので、鋸歯のある青梻と見分けがつきます。

青梻は国産バットに利用されます。富山県南砺市のバット生産量は全国の4割を占めます。

透割山椒(すかしわりざんしょう)

<常滑焼>

黒部の山々の山菜は、春の香りを届けてくれます。深山の雪渓の雪の消え際は、常に春で、山野草や山菜が芽を出します。雅膳の一皿は、才巻海老と山菜の和え物です。

季節のうつわは「透割山椒」です。常滑焼で、四代山田常山の作品です。常滑焼は、日本六古窯の一つで、平安時代の後期に誕生しました。知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使っています。作品は、詫びた風韻と自然釉の味わいが見事な焼き締めで、料理が映えて使いやすい器です。

織部糸巻角皿

<織部角皿>

富山湾に蜃気楼が現れる頃になると、桜鱒が遡上の準備を始めます。富山湾の沖合には、生まれた黒部川を目指して南下してきた桜鱒が定置網にかかります。雅膳の一皿は桜鱒の木の芽焼きです。

桜鱒は、雪融水で川が増水すると宇奈月周辺まで遡上し、産卵までの間は深い淵に潜んでいます。外気温が下がり、山々が色付いてくると産卵を始めます。

季節のうつわは「織部糸巻角皿」です。掻き落としの溝には、織部釉が溜まり緑色に発色します。瑞々しい黒部の新緑に合った器です。