燕万年青(ツバメオモト) ユリ科

<純白で清楚な花>

燕万年青(ツバメオモト)は、宇奈月の亜高山帯の落葉樹林内に生えるユリ科の多年草です。

葉は、倒卵状長楕円形で厚みがあり根生し、万年青によく似ているので和名の由来となっています。花茎は1本立ち上がって総状に白い花をつけます。花被片は6個で夏の終わりに濃紺の実になります。

純白で清楚な容姿は、山野草の中では最も貴賓があります。

山吹升麻(ヤマブキショウマ) バラ科

<雨上がりの白い清楚な花は、山吹升麻>

山吹升麻(ヤマブキショウマ)は宇奈月の山地林縁に生えるバラ科の多年草です。

雌雄異株で根茎は木質化し、葉は大きく2回3出状複葉に分かれ、卵型の小葉はさらに羽状に分かれています。和名は、 山吹の葉とよく似ているところに由来します。

花は、大きい円錐状総花序を作って開き、5個の花弁を付けます。 宇奈月では、赤升麻、山吹升麻、鳥足升麻の順に開花します。 

青瓷花刻小鉢

<焼鮎の煮凍り>

黒部川では鮎釣のシーズンを迎えました。雅膳の滞在料理の小附は、焼鮎の煮凍りです。焼鮎の香ばしい身を、鮎の出汁を固める涼やかな一品です。

季節の器は、「青瓷花刻小鉢」です。高麗青磁の特徴である花の象嵌が施してあります。

赤目柏(アカメガシワ) トウダイグサ科

<アカメガシワは、柏の種類ではない>

赤目柏(アカメガシワ)は、宇奈月の山野に普通にあるトウダイグサ科の落葉高木です。

春先の新芽と幼葉は、紅赤色の毛に覆われて周り新緑のなかで一際美しく映えます。成葉は紅褐色の長柄が特徴で、大きな卵円形で浅く3裂することがあり、表面は深緑色、裏面は淡緑色でよく光合成が行われています。

雌雄異株で梅雨時期に枝先に円錐花序を出して、花弁のない淡黄色の小花を穂状にたくさんつけます。果実は秋に熟し、朔果で紫黒色の種子があります。種子は高温にさらされると発芽しやすくなる特徴があるので、樹林の伐採した後や森林火災の後に一気に繁殖する先駆植物です。

名前に柏がついていますが、柏ではありません。和名は、芽が赤くカシワのように食べ物を葉に包んだり、盛り付けたことに由来します。

赤地金襴手宝相華唐草文

<宝相華唐草文が焼き付けられている>

雅膳の千代口は、蓴菜(じゅんさい)の酢の物です。ぬめりのある食感は、初夏を感じる爽やかな一品です。蓴菜は、水のきれいな沼の底に根を張り、水面に葉を浮かべるスイレン科の浮葉植物です。若い茎や葉は粘液質を分泌し、これで覆われた若芽を食材とします。

季節のうつわは「赤地金襴手宝相華唐草文」で、永楽妙全の作です。赤地金襴手とは、金彩色絵磁器のことです。赤の地釉を使い、金泥や金箔を宝相華や唐草文などに切り貼り、それを焼き付けた器です。着物の金襴に似ているところから金襴手と呼ばれるようになりました。

地釉の別によって、五彩(赤絵)に金彩を加えた、赤絵金襴手、赤を地釉に用いた赤地金襴手、瑠璃釉上に金彩を加えた瑠璃地金襴手、その他萌黄地金襴手、黄地金襴手、白地金襴手などがあります。

色絵波絵向付

<鱧の湯引き>

一年で一番日が長い夏至を過ぎると、夏に向かって暑さが増していきます。7月1日から始まる祇園祭のころに鱧は旬を迎えます。梅肉を添えて牡丹鱧でお召し上がりください。

季節の器は、「色絵波絵向付」です。夏に向かっての器です。

半夏生(はんげしょうず)

<宇奈月ダムの排砂ゲートから土砂が出される(2020年6月撮影)>

7月2日から七十二侯は、「半夏生(はんげしょうず)」で二十四節気「夏至」の末侯となります。半夏という薬草が生える頃という意味です。

半夏は、烏柄杓(からすびしゃく)のことで、サトイモ科の多年草です。花茎の頂きに仏炎苞(ぶつえんほう)をつけ、中に肉穂花序を付ける独特な形をしています。宇奈月の山で見かける座禅草、水芭蕉、蝮草なども仏炎苞を有し肉穗花序を付けています。仏炎包とは、仏像の光背の炎形に似ている苞のことで、サトイモ科の植物に多くみられます。

この頃に降る雨は、半夏雨(はんげあめ)と言われ、大雨になることがあります。梅雨前線が日本列島に停滞するこの時期に、宇奈月ダムでは増水を利用して堆積した土砂を吐き出す排砂が行われます。

7月1は北アルプス・立山の夏山開きで、夏山のシーズン到来です。立山黒部アルペンルートの室堂平(標高2450m)にある「みくりが池」周辺では、残雪と高山植物の見頃を迎えます。

山荷葉(サンカヨウ) メギ科

<爽やかな香りがする山荷葉>

山荷葉(サンカヨウ)は、宇奈月の深山の雪解けの沢の斜面に白根葵(シラネアオイ)などと一緒に自生するメギ科の多年草です。

2枚の大きな葉が特徴で、茎の中ほどにから上につき、広腎臓形で2深裂し下面に毛があります。花は散房花序に6弁の白い花を数個つけ、水に濡れると半透明になります。開花するとすがすがしい香りがして、秋には濃い青紫色の実をつけます。

織部水玉紋蓋向

<落ち着いた水玉紋>

梅雨明けが待ち遠しい日が続きます。織部釉をちらした蓋物が、爽やかさを醸し出します。今年は梅雨入りしてからまとまった雨が降っておりません。今週も曇りのち雨の日が続きます。七夕を過ぎた頃が梅雨明けとなります。

梅雨時の南風は黒南風(くろはえ)梅雨明け頃の南風は白南風(しらはえ)と呼びます。空が黒から白の変わると梅雨明けです。

雅膳の季節のうつわは「織部水玉紋蓋向」です。水玉紋が梅雨明けにふさわしく、器が落ち着いて美しく見えます。

岡虎の尾(オカトラノオ) サクラソウ科

<星形の小さな花が集まったオカトラノオ>

岡虎の尾(オカトラノオ)は、宇奈月の陽当たりのいい原野に自生するサクラソウ科の多年草です。

地中に長く地下茎を伸ばして増えていきます。葉は長楕円状披針形で、先端は尖り互生します。花は、茎の上部に一方に傾いた総状花序をつくり、多くの白い花を密に付けます。花冠は5片に裂けています。

和名は花穂を虎の尾に見立てたことに由来します。