渕金線南京形硝子小鉢

<梅雨時期は硝子の器>

6月6日から二十四節気は芒種に入ります。越中宮崎産の岩水雲(イワモズク)の旨みが増してきます。太くて歯ごたえがあり、独特の粘りがあります。特製の酢と合わせてお召し上がりください。

 合わせる酒は、林酒造(朝日町)の純米吟醸「林」がお薦めです。大吟醸黒部峡とは一味違う麹の香りが楽しめます。

季節の器は、「渕金線南金形硝子小鉢」です。 硝子の器が合う季節に入ります。

蛍袋(ホタルブクロ) キキョウ科

<下向きに咲く蛍袋>

蛍袋(ホタルブクロ)は、宇奈月の山路沿いの草叢に自生するキキョウ科の多年草です。

全体に毛が生えていて、根茎は短いですが、長い匍匐枝を横に出して増えていきます。茎は分岐することなく伸びて、茎葉は長卵形で互生し、縁に不揃いな鋸歯があります。

梅雨の時期に、茎頂と上部葉腋に白色の大型鐘状花で下向きに開くので、虫達がよく雨宿りします。花の内面に紫斑があり、先が5裂で、緑色の蕚も5裂ですが、その上部だけが反り返ります。

宇奈月ではほとんどが白花ですが、山を越えた長野県では赤紫色の山蛍袋(ヤマホタルブクロ)が多く、蕚の上部は反り返りません。

七竈(ナナカマド) バラ科

<黒部峡谷の新緑を飾るナナカマド>

七竃(ナナカマド)は、宇奈月の亜高山帯に自生する、バラ科の落葉小高木です。黒部峡谷・欅平周辺や、僧ケ岳登山道沿いなどに見られます。

葉は、奇数羽状複葉で互生し、小葉は5~7対の披針形で鋭い鋸歯があります。初夏には新しい枝の先に大きな複散房花序をつけ、花は5弁の白い花で、朝もやの中で際立っています。秋には葉が真っ赤に紅葉し、葉が落ちた後の赤い実はルビーのように美しく輝きます。

材は堅く、七回竃に入れても燃え切らないところから、あるいは炭を作る竃で、7日間も焼かなければならないという事が和名の由来となっています。神社では燃えにくいところから、落雷除けの神木として植えられました。

宇奈月温泉では、街路樹として園芸品種の物が植えられています。秋には実を啄みに、鳥たちがやってきます。

熊苺(クマイチゴ) バラ科

<花弁と花弁の間が離れている>

熊苺(クマイチゴ)は、宇奈月の日当たりのよい山地の荒れ地などの生える、バラ科の落葉低木です。杉林を伐採した翌年によく生えます。

茎や枝は赤紫色で無毛ですが、棘が直角に横に出ます。葉は広卵形で掌状に3~5裂し互生します。縁には不揃いな重鋸歯があり、質はやや厚く裏面脈上には細い毛と棘があります。葉柄にも棘と軟毛があります。

花は5花弁白色で細く、花弁と花弁の間に隙間があります。果実は多数の核果が集まった集合体で、完熟すると赤色から黒くなり、食べることができます。核果の先は尖っています。

矢車草(ヤグルマソウ) ユキノシタ科

<ひときわ目立つ大形の花で、群落を作る>

矢車草(ヤグルマソウ)は、宇奈月の深山の湿り気のある場所に自生するユキノシタ科の大形の多年草です。しばしば大きな群落を作り、 高さが1m近くになるのでよく目立ちます。

根出葉は50cmぐらいの葉柄があり、5枚の小葉からなる掌状複葉です。葉身は倒卵形で3~5裂し中央の裂片は先が尖り、両側に不整鋸歯が付きます。和名は、小葉の構成が端午の節句の鯉幟に添える矢車に似ていることに由来します。

6月頃、先端に円錐花序をつけます。花弁は無く、花弁に見える蕚裂片が長卵形で5~7個あり、緑白色から白色に変わります。

長く伸びた基部に集散円錐花序をつけ、その甘い香りで多くの虫たちを集めます。

蟷螂生(かまきりしょうず)

<新緑と清流が美しく映える黒部峡谷>

6月6日から二十四節気は「芒種(ぼうしゅ)」となります。「芒」とは、稲や麦などのイネ科植物の小穂を構成する頴(えい)の先端にある針状の突起のことです。芒種とは、芒を持つ植物の種を蒔く時期と言う意味です。

七十二侯は「螳螂生(かまきりしょうず)」で、二十四節気「芒種」の初侯となります。蟷螂は、秋に粘液を泡立てて作る卵鞘の中に多数の卵を産み付けます。その気泡に包まれた卵鞘の中の卵が孵化して幼虫になる頃です。梅の実が黄色く熟す頃でもあり、いよいよ梅雨入りとなります。旧暦では5月にあたり「五月雨(さみだれ)」は、本来梅雨を指していました。「五月晴れ」も同様、梅雨の晴れ間を指す言葉でした。

黒部峡谷の木々の葉は雨に濡れ、緑が一段と美しく輝きを増します。新緑の峡谷を探勝するには、いい季節となります。

白糸草(シライトソウ) ユリ科

<木陰で、清楚に咲く白い花は、白糸草>

白糸草は、宇奈月の山地の木陰や渓流沿いの岩場などに生えるユリ科の多年草です。

倒披針形の根出葉をロゼット状に叢生します。20cmから50cmに伸びた花径には線状披針形の小葉を多くつけ、上部は穂状花序となり、多くの白色小花が芳香を漂わせて清らかに美しく咲かせます。

花穂全体に、白い糸状の花被がまっすぐ伸びているの様子から、和名がつけられました。別名、雪の筆とも呼ばれています。美しい純白に清楚さが感じられます。

青瓷花刻小鉢

<見込みに花印>

今年も黒部川に桜鱒が戻ってきました。地元では地鱒と呼んでいます。銀化した大きな体になって生まれた川に帰ってきます。木の芽焼きや押し寿司や酢の物で食します。しゃぶしゃぶも絶品です。

季節のうつわは「青瓷花刻小鉢」で、青磁の翡翠色が鱒の桜色に合います。

田虫葉(タムシバ) モクレン科

<葉よりも早く花が咲きます>

田虫葉(タムシバ)は、宇奈月の高い山に生えるモクレン科の落葉小高木です。春山の僧ケ岳登山道の標高1200m地点で、よく見かけます。その純白の花は、残雪を纏った黒部の山々と青い空によく映え、まさに北国の春です。日本海側に多く分布します。

葉は広披針形で薄い用紙質となり、下面は紛白色です。噛むと甘く芳香があるところが和名の由来となっています。コブシの近縁で、葉よりも早く花が咲きます。

瓜肌楓(ウリハダカエデ) カエデ科

<若い果実は下垂する>

瓜肌楓(ウリハダカエデ)は、宇奈月の山地のやや湿気がある谷間や疎林に生えるカエデ科の落葉高木です。

幹は直立し10m前後になります。若木の樹皮は暗緑色、平滑で白い縞模様が入って瓜の皮のようになります。和名の由来はここからきています。枝は斜生してよく伸び緑色で無毛です。

葉は大形で、扇状5角形、浅く3~5裂して縁には重鋸歯があります。花のつく枝には1対対生します。雌雄別株で5月に若枝の先に総状花序を出して淡緑色の花を多数下垂します。若い果実は、翼果でほぼ垂直に開きます。