黄瀬戸五寸皿

<真鱈の白子>

富山湾に雪が降ると、真鱈が旨くなります。真鱈は、炊き合わせ、鱈ちり、昆布締めと料理も多岐にわたります。寒くなると特に濃厚な味わいになるのが白子で、雲子とも呼ばれています。旨い出汁に素早く潜らせ、冬野菜と一緒に食します。生でポン酢で召し上がるのもお勧めです。

 季節のうつわは「黄瀬戸五寸皿」で、綾目手(油揚手)の小ぶりの大きさです。

黄瀬戸は、桃山時代に美濃窯で焼かれた黄色の焼物で、装飾として胆礬や鉄彩といった加飾の技法が加えられています。胆礬が表裏に現れるものを抜け胆礬と言い高く評価されています。器の表面は、失透性の釉調である油揚肌が特徴です。

鱖魚群(さけのうお むらがる)

<黒部川支流で産卵する桜鱒、婚姻色が美しい:10月下旬撮影>

12月16日から七十二侯は「鱖魚群(さけのうおむらがる)」で二十四節気「大雪」の末侯となります。鮭の群が、産卵のため自分の生まれた川に遡上する頃という意味です。宇奈月温泉を流れる黒部川の鮭の遡上は11月で終わります。

黒部川の河口から宇奈月温泉までの間に、サケが遡上するために越えなければならない堰堤があります。それは愛本堰堤です。愛本周辺は黒部川扇状地の扇頂部で、江戸時代に刎橋が懸けられたところです。黒部川下流域の最も岩が固く狭い地点です。現在の愛本堰堤は、昭和44年8月の豪雨で流失し、同48年に築造されました。ここには魚道が設けられていますが、黒部川は急流河川で流出土砂も多いため魚道が度々埋まり、鮭が宇奈月温泉周辺まで遡上できなくなります。

一方桜鱒は年々数が減少しているものの、宇奈月温泉周辺の黒部川支流で毎年確認できます。桜鱒は、富山名産の鱒ずしに使用される鱒で、春に遡上します。春の黒部川は、雪解けで水で増水し急流となって堰堤を乗り越えて流れるので、遡上が可能になります。そして夏の期間は深い淵に潜み、山の稜線が色づく10月中旬から11月初旬にかけて、黒部川支流で産卵間近の特徴である婚姻色が美しいサクラマスを見ることができます。

この時期の支流は、透明度が増し水量が少くなるので産卵の様子が、橋の上から容易に観察できます。産卵が始まるとカワガラスがやってきて、卵を啄ばみます。孵化した稚魚はヤマメで、降海型と河川残留型の2種類に分けられます。降海型のヤマメは日本海に出て3年後には桜鱒となって生まれた川に戻ってきます。黒部川では稚魚を守るため2月末まで禁漁となります。

青楽舩形向付

<香箱蟹>

富山の冬の料理に欠かせないのが香箱蟹です。香箱蟹は万頭蟹とも言って、小さいながら内子、外子には格別な旨みがあります。活蟹会席の一品です。

時を重ねた古い器は、料理を引き立てる不思議な力があり、青楽の色合いには特にうまく収まります。目で楽しめるのは器の妙技です。酒器は古九谷が欲しくなります。

季節のうつわは「青楽舩形向付」で楽弘入の作です。弘入は、1871年(明治4)に12代目吉左エ門を襲名して、1919年(大正8)に石山寺の近くに隠居します。この年は、黒部川の電源開発に取り組む高峰譲吉の東洋アルミナムと山岡順太郎の日本電力が設立された年です。

染付芙蓉手輪花向附

<香箱蟹>

香箱蟹は、「活け蟹会席」「雅膳」の一皿です。追加料理としても人気があります。津合蟹の雌で小さいため丁寧に身を抜き甲羅に盛り付けます。旨みが凝縮された味噌とオレンジ色の内子は、濃厚な味わいで地酒と最高の組み合わせになります。つぶつぶの卵は外子で特別の食感が味わえます。雪の峡谷を愛でながらの蟹三昧のシーズンとなります。

季節のうつわは「染付芙蓉手輪花向附」です。芙蓉手は、万暦年間(1573~1620)景徳鎮民窯で焼かれた染付磁器の様式です。明清交代による混乱で、1659年にオランダ東インド会社から伊万里に大量注文が入ります。ほとんどが芙蓉手で、この輸出専用の様式は、伊万里焼の様式を大転換させる契機となります。

粉引鉄山水角大皿

<鰤鎌塩焼き>

寒鰤の美味しい季節となりました。中でも鰤鎌の塩焼きは格別です。寒鰤のえらの下の胸びれのついている部分が鎌で、旨味のある脂も含んで、特に美味しいところです。大根おろしと醤油を合わせて食します。皮は香ばしく美味で、地酒も進みます。

季節のうつわは「粉引鉄山水角大皿」です。大きい鎌なので、大ぶりの器で大胆に鉄絵が施されたものが合います。

粉引は、朝鮮時代前期の15~16世紀に焼かれた白化粧陶器の一種で、韓国でいう粉青沙器に属します。鉄絵は、朝鮮半島の技法を基に16世紀末頃から、唐津や美濃の焼物に装飾の下絵付けとして用いられました。唐津の絵唐津、美濃の絵志野や絵織部、絵瀬戸等として残っています。

熊蟄穴(くまあなにこもる)

<北陸新幹線・黒部宇奈月温泉駅から白馬岳を望む>

12月12日から七十二侯は「熊蟄穴(くまあなにこもる)」で、二十四節気の「大雪」の次侯となります。熊が厳しい冬を乗り越えるために穴にこもる頃という意味です。

例年この時期は、シベリアから寒気団が南下し北陸に雪をもたらします。本格的な降雪は、二十四節気の「冬至」に入ってからと予測されます。

北陸新幹線が、新潟県と富山県の県境のトンネルを抜けて、富山県朝日町の平野部に出るとその眺めに圧倒されます。左手には新雪に輝く北アルプス、右手には能登半島と富山湾の景色が広がります。その名座と富山湾の深海の高低差は約4千メートル。まさに初冬の絶景です。

焼締片口皿

<津合蟹の洗い>

透き通るような活蟹の身を、氷水にさらすと花が咲きます。とろけるような食感の中に濃い甘みが口いっぱいに広がります。蟹会席の一皿の蟹の洗いです。

季節のうつわは「焼締片口皿」です。荒木義隆氏の焼締めは、土肌を感じながらも造形が美しいので料理を引き立ててくれます。

仁清色絵南天絵向附

<寒鰤造り>

今が旬の寒鰤は、上質な脂がのっています。甘くて旨味のある脂は、全く臭みがなく身も引き締まり、コリコリとしています。大根おろしと醤油でいただくお造りは、富山湾の格別な冬の恵です。

季節のうつわは「仁清色絵南天絵向附」です。赤絵と緑釉に金彩が使われているので華やかにな彩りとなります。

青白瓷八面取向附

<蟹の洗い>

蟹の洗いは、透き通るような活蟹の身を、氷水にさらすと花が咲きます。とろけるような食感の中に濃い甘みが口いっぱいに広がります。蟹会席の一皿です。

季節のうつわは「青白瓷八面取向附」です。

白磁は、鉄分など不純物が少ないカオリンなどの白色粘土や陶石などの白い素地に、透明釉をかけて焼成したものです。微量の鉄分などの不純物が含まれると還元焼成すると淡い青みを帯びて発色します。これが青白瓷です。

色絵椿絵向附

<艶やかな紅白の椿の色絵>

冬型の気圧配置が強まり、寒さが増すと蕪蒸しが美味しくなります。二十四節気の「大雪」に入りました。おろした蕪を雪に見立てるのは、和食の妙です。具は、朝どれの甘鯛を使います。

季節のうつわは「色絵椿絵向附」です。 重々しい灰色の雪雲が空を塞ぐ日が多くなる頃は、色絵の器で食卓を華やかにします。