色絵祥瑞輪花皿

<のど黒・煮付>

富山湾は、蟹漁の最盛期を迎えています。厳しい寒さが続く中、春の気配がかすかにあらわれるのど黒は、脂がのって旨味が増します。お造りや焼き物、シャブシャブも絶品ですが、甘く焚き上げた煮付けもお勧めです。

季節のうつわは「色絵祥瑞輪花皿」です。三浦竹泉の作で、色絵祥瑞で祥瑞赤絵とも言います。

色絵祥瑞は、南京赤絵の一様式で、中国明時代末期の崇禎年間頃に景徳鎮の民窯で、日本の茶人の注文によって焼かれた磁器です。主に皿、鉢が中心をなし懐石道具として珍重されました。この作品は、皿の見込みに兎や鳥を丸紋に納め、余白には祥瑞ならではの幾何学模様を大胆に区割りして緻密に描き込んであります。皿の縁を輪花形に作り、口紅と呼ばれる縁銹を施してあります。

祥瑞菊形向付

<祥瑞向付>

延楽の雅膳の一皿は「祥瑞菊形向付」で、永楽妙全の作品です。見込みは菊形に浅くかたどってあります。細かく丁寧に正確に文様を入れるのが妙全の特徴です。大正3年に三井高棟より「妙全」の号を受けます。

祥瑞の魅力の一つは、明るくて鮮烈な青である発色の良いコバルトブルーにあります。古染付も同様に青の発色に魅了されます。古染付と祥瑞の違いは何か。一つは、制作された時代の違いだと言われています。古染付は、中国で天啓年間(1621年~27年)を中心に作られ、祥瑞は崇禎年間(1628年~44年)を中心に作られました。

祥瑞は、発色が古染付よりも良く緻密な文様が特徴です。例えば幾何学文を細かく描き、丸文や繋文、螺旋状のねじり文にする独特の文様が特徴です。さらには吉祥文字や宝尽くし文、花鳥文など、祥瑞にふさわしいおめでたい文様が多くあります。今日残っている古い祥瑞は当初、茶人の注文品として中国で製作されました。謎の多い祥瑞です。

祥瑞や古染付の名品を多く所蔵しているのが、諏訪湖畔にあるサンリツ服部美術館です。東洋陶磁の中心になっている作品は、服部時計店三代目社長の服部正次の岳父である塩原又策のコレクションです。塩原又策は第一三共製薬の創業者で、茶人でもあり美術収集家でもありました。恩人である高峰譲吉の計画に従って大正8年(1919)、三共(株)の本社内に東洋アルミナム株式会社を立ち上げます。そしてアルミ精錬に必要な電力を得るため、黒部川の電源開発を進めていきます。工事作業員の福利厚生のため大正12年(1923)に黒薙から宇奈月の地に温泉が引かれます。宇奈月温泉の誕生です。今年で開湯101年目となります。

亀甲松竹梅蒔絵吸物椀

<亀甲仕上げ>

お椀全体に蒔絵を施してあると、周りが華やかになります。お椀も季節に合わせて使いたいものです。漆は年代を重ねると堅固になります。

雅膳の季節のうつわは「亀甲松竹梅蒔絵吸物椀」です。京塗りの吸い物椀です。

赤絵花鳥長方皿

<のどぐろ若狭焼>

匠膳の焼き物は、のど黒の若狭焼です。照り地を掛けてじっくり焼きます。 のど黒は、脂がのった美味しい魚で地元では魚神(ギョシン)ともいいます。 仕入れの関係で甘鯛に変更になる場合もあります。

季節のうつわは「赤絵花鳥長方皿」です。赤絵とは、釉薬をつけて本焼きした陶磁器に上絵具で文様や図案を描き、赤絵窯で焼き付ける加飾法及びその陶磁器のことです。赤絵染付の語から赤絵となりました。色絵、錦手、五彩とも呼びます。

日本における赤絵の始まりは、1647年頃、酒井田柿右衛門が中国人に学んで習得しました。そして赤を中心に豊かな色彩を表現できる技法が編み出されました。

日本の愛陶家は、中国陶磁を宋時代の宋赤絵、明時代の古赤絵、万歴赤絵、天啓赤絵、呉須赤絵、明末清初の南京赤絵と色々と呼び分けてきました。赤絵は何故か、朝鮮半島では試みられることがありませんでした。

1720年代、マイセン窯で白磁胎赤絵が焼かれるようになりました。モデルとなったのが日本から輸入されていた柿右衛門様式の色絵磁器です。

乾山写雪笹小判形向付

<雲子天婦羅>

富山湾に雪が降りだすと、真鱈が美味しくなります。特に真鱈の白子は新鮮なうちにポン酢でいただきます。白子は、色が白く雲を連想させるので雲子とやばれています。アツアツの天婦羅は格別です。地酒も進みます。

季節のうつわは「乾山写雪笹小判形向付」です。乾山の「銹絵雪笹向付」が本歌で、仁阿弥道八や魯山人にも受け継がれました。笹に舞い降りる雪を白化粧で見事に表しています。

高麗鶴形蓋物

<祝膳の器>

お正月や祝膳などに使う器に鶴、亀、松竹梅などを模ったりする器があります。中には蓋物も多くあります。雅膳の祝膳の一皿に「高麗鶴形蓋物」があります。白磁の蓋物に鶴の造形がしてあります。純白で清楚な器です。

仁清色絵梅絵五寸皿

<白梅図>

香箱蟹は、資源保護のため1月10日で漁が終了となります。暖かい地方から梅の開花が届く頃、禁漁となります。

季節のうつわは「仁清色絵梅絵五寸皿」です。香箱蟹は華やかな色絵があいます。色絵とは上絵付け陶磁の総称で、赤絵、錦手ともいい、中国では五彩とも言います。今日のいう色絵の概念は、大正から昭和の間に用いられ始めたようです。

色絵透雪笹小鉢

<蟹味噌と身抜き>

雪がしんしんと降り積もる宇奈月温泉。温泉につかりながらの雪見は、最高のおもてなしです。

1月5日から二十四節気の「小寒」に入ります。寒の内の富山湾の旬味は、ますます旨味が増してきます。その日の仕入れにより、蟹味噌、真鱈の白子、とらふぐの湯引き、車鯛の肝、寒カワハギの肝、鮟鱇の肝等々。雅膳の一皿です。あわせる地酒は、純米吟醸「勝駒」がお薦めです。

季節のうつは「色絵透雪笹小鉢」です。 笹に雪が積もる姿は様々に文様化され、特に正月のうつわに取り入れられ冬の美しい形の一つとされています。乾山写しによく見られます。

黄瀬戸片口中皿

<油揚げ肌の片口>>

富山湾を代表する冬の味覚の寒鰤は、小寒に入ると定置網に入ってきます。昨年11月26日に「寒鰤宣言」が出されてから、豊漁が続き漁業市場も活況を呈しています。この時期は脂が乗り、特に腹身は上質な脂が乗り、大根おろしを添えて食すると格別です。

季節のうつわは「黄瀬戸片口中皿」で、加藤作助の作品です。しっとりと潤いのある油揚げ肌の黄瀬戸の器にあいます。

乾山写笹鉢向付

<香箱蟹>

香箱蟹は、「活け蟹会席」「雅膳」の一皿です。追加料理としても人気があります。香箱蟹は、津合蟹の雌で型が小さいために、丁寧に身を抜き甲羅に盛り付けます。つぶつぶの茶色の卵は、外子で特別の食感が味わえます。旨みが凝縮された味噌と、オレンジ色の内子は濃厚な味わいで、地酒と最高の組み合わせとなります。

雪の峡谷を愛でながらの蟹三昧。富山湾では香箱蟹は1月10日まで、雄の津和井蟹は3月20日まで漁が行われます。これから本格的な蟹シーズンとなります。

季節の器は、「乾山写笹鉢向付」です。寒の内でも緑を残す笹の葉は、乾山の銹絵雪笹紋で知られています。雪の縁取りで雪笹として図案化された向付もあります。