浅葱交趾渕銀波向付

<富山湾産の黒鮑>

梅雨が明けると富山湾のアワビ漁が本格化します。主な漁場は滑川から以東で、特に魚津、入善、朝日の転石地帯に多く、潜水で漁獲されます。富山湾の東側は、早月川、片貝川、黒部川などによって運ばれた巨大な石が沈んでいます。雅膳の一品は、蒸しアワビです。

季節のうつわは「浅葱交趾渕銀波向付」です。海の色を思わせる浅葱色は、料理を爽やかに引き立てます。

色絵瓢箪絵六寸皿

<もっとも使いやすい六寸皿>

のど黒会席の一皿は、のど黒西京焼きです。上質な脂がのって地酒とよく合います。合わせるお酒は千代鶴酒造の純米生原酒「恵田」です。酒米は、地元で品種改良された酒造好適米「富の香」が使用され、深みのある味わいとなっています。

季節のうつわは「色絵瓢箪絵六寸皿」です。瓢箪は、「三つで三拍(三瓢)子揃って縁起が良い、六つで無病(六瓢)息災」などといわれ、健康長寿と家内円満をもたらす吉祥意匠として器によく使われます。大暑に入ると瓢箪の棚は、暑い日差しを遮ってくれます。

浅葱交趾波刻筒向付

<強肴は貝寄せ>

延楽雅膳の強肴は、富山湾の梅貝や蒸鮑の貝寄せです。バイは地元で最も食べられる貝で、エゾバイ科の巻貝です。富山湾に生息する種類は、オオエッチュウバイ、カガバイ、ツバイ、エゾボラモドキです。水深200~1000mの深海に生息します。従って漁獲方法としては、籠の中に餌を入れて行う籠網業業です。

季節のうつわは「浅葱交趾波刻筒向付」で、海の色と波を表しています。夏は浅葱交趾の色合いが映えます。合わせる地酒は、滑川市の千代鶴酒造の特別純米酒「恵田」です。館主が3年間低温熟成させた、希少価値のある「恵田」もあります。

江戸切子霰紋蓋向

<カットが美しい霰紋>

梅雨が明けると、夏野菜の収穫が本格的なる。雅膳の一皿は、特製の出汁と野菜本来の旨味を生かした夏野菜の含め煮です。

季節のうつわは「江戸切子霰紋蓋向」です。霰紋は、地面に降る霰を図案化したもので、古くから多用された紋です。この他に細かいカット交差の魚子紋、麻の葉図案の糸麻の葉紋、麻の葉紋、さらには矢来紋、雲の巣紋、底菊紋、七宝紋、市松紋、菊繋ぎ紋など様々な紋が作られました。江戸切子の風情と技が現代に継承されています。

仁清色絵団扇形小鉢

<料理に夏の風物詩は外せない>

蛍が宇奈月公園の小川で、飛び交うようになりました。黒部川の川風が涼やかに感じられる季節です。黒部川の河原から河鹿の鳴き声も心地よく伝わってきます。器と料理で涼を表現します。

季節のうつわは「仁清色絵団扇形小鉢」です。見ているだけで川風が感じられます。

染付木ノ葉形平皿

<栄螺のもろみと辛子和え>

富山湾の夏の味覚に栄螺(サザエ)の壺焼きがあります。栄螺を出汁で含め煮にして、もろみと和辛子を和えます。サザエの旨みに出汁ともろみが合わさり、和辛子の辛味が残暑の暑気を払ってくれます。滞在料理の一皿です。

合わせる地酒は、富山市岩瀬の桝田酒造の「満寿泉大吟醸」です。北前船の寄港地として栄えた、港町に佇む歴史ある酒蔵です。

季節のうつわは、「染付木ノ葉形平皿」です。白磁に染付の藍青色が涼やかさを感じさせます。

江戸切子八角籠目紋蓋向

<カットが美しい八角籠目紋>

黒部川河口近くに生地漁港があります。ここにでは大物ののど黒が多く集まります。脂の乘ったのど黒のしゃぶしゃぶは通年で食すことができます。お造りもお勧めです。脂が多いので、炙りにすると、より美味しくいただけます。合わせる地酒は、勝駒純米酒です。

季節のうつわは「江戸切子八角籠目紋蓋向」です。八角籠目紋は竹籠の八角網目を連続させた図案です。魔除けとして使われた文様です。江戸切子には下町の職人の技が詰まっています。

色絵波絵蓋向

<初夏の器>

延楽雅膳の一皿は、鮑と夏野菜の含め煮です。日一日と暑さが増し夏野菜が旨くなります。夏野菜に出汁を絡ませると更に旨くなります。柔らかな煮鮑は、よく合います。

季節のうつわは「色絵波絵蓋向」です。夏にふさわしい器で、波をモチーフにした図案を加飾したものの一つです。蓋物の他に小鉢、皿、向付、など波の絵付けがされているものが多くあり、作家や産地によって表現が違います。

江戸時代から波、千鳥、流水など琳派で使用された図案が使われ、その他に身近な植物、昆虫に至るまであらゆるものをデザイン化して器に取り入れています。現在ではその写しを見ることができます。料理と器の妙は、奥深い味わいです。

色絵山水十二角足付皿

<艶やかな色絵>

雅膳の一皿は、赤烏賊と牡丹海老の昆布締めです。軽く昆布で締めてありますので締め具合が絶妙です。季節のうつわは「色絵山水十二角足付皿」で、初代宮永東山の作品です。造形と色合いが優麗な作品です。

宮永東山は、明治元年加賀で生まれドイツ語、フランス語を学んだ後、東京美術学校で教鞭をとります。明治30年、農商務省に入省し2年後にパリ博に派遣され2年間滞欧し、各国の美術工芸を視察して帰朝します。明治42年に京都伏見の深草で陶窯します。大正8年に荒川豊蔵が加わります。黒部川電源開発を提唱した高峰譲吉が、アルミ精錬会社を立ち上げた年です。翌年から黒部川の電源開発が始まります。

豊蔵は、昭和2年に北大路魯山人が主宰する鎌倉星岡窯に移るまで、東山窯で本格的に陶業を修め、大正12年には工場長となります。宇奈月の台地に木管で黒薙から引湯された年です。宇奈月温泉誕生の年で99年前の事です。

鎚目足付アルミ長皿

<夏の前菜>

夏の前菜は、夏野菜で飾ります。硝子の器の他にアルミの器を使う場合があります。硝子もアルミも涼やかに感じられます。季節の器は、「鎚目足付アルミ長皿」です。

槌目とは、板材の表面に金槌などで槌の跡を打ち付けて模様をつけます。打ち付ける槌の大きさや力の加減によって槌目は変わります。アルミ本来の輝きと鎚目に反射するきらびやかな美しさから、器にも使われるようになりました。