三葉躑躅(ミツバツツジ) ツツジ科

<黒部峡谷の断崖に咲く三葉躑躅>

三葉躑躅(ミツバツツジ)は、黒部峡谷の岩場や痩せた尾根に自生するツツジ科の落葉低木です。

4月から5月にかけて峡谷や山の岩場を美しく彩ります。 枝は車状に出て、枝先の混芽から2、3個の紅赤色の花を付け、葉は後にでます。花冠は、深く5裂し雄蕊は5個なのに対して、一般の躑躅は10本なので見分けがつきやすいです。 花が終ると枝先に3枚の葉が輪生するところからこの名が付きました。

早朝ウォークのコースの中で、山彦鉄橋を渡りきると岩場の上部で花を見かけます。新緑の中に紅をさす色合いは、春ならではの光景です。

春虎の尾(ハルトラノオ) タデ科

<樹林内に可憐な花をつける春虎の尾>

春虎の尾(ハルトラノオ)は、宇奈月の湿った落葉樹林内に自生するタデ科の多年草です。

花は、高さ10cm位の花茎の先に密な花穂をつくり、白色でわずかに淡紅色をおびています。和名は、 花穂を虎の尾に見立て春早く咲くところに由来します。 地下茎は、横に這って所々膨らみ、根出葉は長楕円形で長い柄があります。花茎の基部の葉はやや心形型です。

宇奈月の樹林内で、かたくりの群落の中にまとまって咲いているのをよく見かけます。この山野草も初夏には姿を消してしまうスプリング・エフェメラルの一種です。

紫華鬘(ムラサキケマン) ケシ科

<儚く消える花です>

紫華蔓(ムラサキケマン)は、宇奈月の林道沿いの林縁や藪陰に多く見られるケシ科の越年草です。茎は柔らかく多汁質で紅色をおびています。 葉は根生し、2回3出複葉で柔らかくて先端には鋸歯があります。 瑞々しい薄い葉は、裏から光を当てると美しく萌葱色に浮かびます。

落葉樹の葉が成長し、その葉で陽光が遮られるとすぐに消えていく儚い春の植物で、スプリング・エフェメラルです。根にしっかりと栄養を蓄えますので、来春も美しい花をを咲かせます。 美しい花ですが、全草にプロトピンというアルカロイドを含む有害植物なので注意が必要です。

山延胡索(ヤマエンゴサク) ケシ科

<春の妖精のような花>

山延胡索(ヤマエンゴサク)は、宇奈月の落葉樹林や林縁の適湿地に開花するケシ科キケマン属の多年草です。

全体に毛が無く10cm前後の繊細な山野草です。葉は、2個互生し3出羽状複葉で柔らかく、切れ込みが入り緑色が最も美しい葉です。花は茎の上部に総状花序につき、淡い青紫色や濃い赤紫色まで様々な色のものがあります。花の長さは2cm位で、筒状で先が唇形に開きます。

 淡い色と姿から「水色の妖精」とも呼ばれています。 宇奈月温泉の原野では、菊咲一華の隣で咲いているのが見られます。 春の山野草をめでる季節の到来です。

羽団扇楓(ハウチワカエデ) カエデ科

<花が最も美しい楓>

羽団扇楓(ハウチワカエテ)は、宇奈月の山地に生えるカエデ科の落葉高木です。

葉は大型で祖鋸歯があり7裂し天狗の団扇に似た形をしていて、名前の由来となっています。花は、一つの株に単性花と両性花が混ざり合っている雌雄雑居性で、葉よりわずかに早く開きます。若枝の先に紫紅色の散房状花序を下げ、柔らかな萌黄色の新葉とのコントラストが美しく映えます。実は翼果となり回転しながら落下します。花、若葉、紅葉とも美しいので「名月楓」とも呼ばれています。

黒部の山々には多くの種類の楓が見られます。 楓とは似ても似つかぬ葉の一葉楓、薄緑の花の板屋楓、樹が緑色の瓜肌楓、小型の小羽団扇楓、葉の切れ込みの深い、いろは紅葉、少し切れ込みの浅い山紅葉、葉が大きくて切れ込みの浅い大紅葉、等等まだまだあります。秋には深紅や黄色に色づき黒部峡谷の紅葉の美しさを造り出しています。

津合蟹(焼蟹)

板前が焼く

雪を纏った立山連峰が、富山湾越しにくっきりと見える頃、津合蟹漁が間近となります。富山湾の冬の味覚は、何といっても津合蟹と寒鰤です。とりわけ津合蟹は、蟹味噌が濃厚で加えて身の甘みと旨味が特徴です。お造り、蒸蟹、蟹ちり、焼蟹等、多彩な料理が楽しめます。富山県より西の地域では11月6日が解禁となり、3月20日まで漁がおこなわれます。         

蟹料理のなかでも焼蟹は、蟹の旨みを最大限引き出せる一品です。蟹足の表面を炭火で炙り、中は熱々でジューシーな状態が最高の食べ頃です。この火加減がなかなかと難しいので、焼職人が炙ります。

地酒との相性が良く、錦秋の露天風呂と合わせてお楽しみください。

禾乃登(こくのものすなわちみのる)

<おわら風の盆:坂の町を照らす西町のぼんぼり>

9月2日から七十二侯は「禾乃登(こくのものすなわちみのる)」で、二十四節気「処暑」の末侯にあたる。禾の文字は、植物の穂の形からできており豊かな実りを象徴する。稲穂が膨らんで黄金色になる頃という意味。

立春から数えて210日目にあたるこの時期は、「二百十日」と呼ばれ台風に見舞われやすい。そのため越中八尾では風害から農作物を守るため風邪鎮めの祭りが行われるようになった。それが「おわら風の盆」である。9月1日から9月3日まで各町内で洗練された踊りが披露される。普段は静かな山間の坂の町に、20万人のお客様が押しかける。哀愁を帯びた胡弓が奏でるおわらの調べが、訪れる人々を魅了する。今年は、残念ながらコロナ禍で全面中止となった。

新作おわらの代表作は、何といっても小杉放庵が詠んだ「八尾四季」である。放庵は日光出身で大正14年(1925)に東京大学安田講堂の壁画を描いたことでも知られている。昭和4年(1929)、おわらの育成に力を注いだ初代おわら保存会会長、川崎順二に招かれ、翌年詠んだ歌詞である。

<八尾四季>
ゆらぐつり橋手に手をとりて
 渡る井田川 オワラ 春の風
富山あたりかあの灯火は
 飛んでゆきたや オワラ 灯とり虫
八尾坂道わかれてくれば
  露か時雨か オワラ はらはらと
若しや来るかと窓押しあけて
 見れば立山 オワラ 雪ばかり

この八尾四季を基に若柳吉三郎が、春夏秋冬にそれぞれ異なった所作がある「四季の踊り(女踊り)」と「かかし踊り(男踊り)」を振り付ける。放庵が八尾で滞在したのは鏡町の旅館「杉風荘(さんぷうそう)」である。

放庵は、疎開のために新潟県赤倉に住居を移し、戦後もそこで暮らすようになる。春陽会を共に立ち上げた中川一政と延楽に度々訪れる。延楽には小杉放庵の足跡が数多く残っている。放庵が好んで使用した紙は半漉きの和紙で、放庵紙 と呼ばれる特注のものだった。

紅花栄(べにばなさかう)

<田植の準備ができた黒部川扇状地>

5月26日から七十二候は「紅花栄(べにばなさかう)」で二十四節気「小満」の次候にあたります。紅花が色付き黄橙色から艶やかな紅色へと変わる頃です。

小満は、陽気盛んにして万物ようやく長じて保つという事なので、草木には一段と生気がみなぎり、万物が次第に色味を増してきます。特に紅花の濃厚な色合いは夏らしさを感じさせます。この時期の天候も色で表現されます。やや強い南風は青嵐、雨は翠雨、緑雨、青雨と森羅万象すべて緑緑で、その濃淡のグラデーションを楽しませてくれる季節でもあります。

染付魚藻文五寸皿

<春の味覚・桜鱒とアスパラ>

生地の漁港に桜鱒が水揚げされています。脂が乘っていて美味です。一旦、冷凍をかけてお造りとしてお出しします。ちり酢で召し上がっていただきます。延楽・雅膳の一皿です。

季節のうつわは「染付魚藻文五寸皿」です。魚藻文とは、水中植物が揺れ動く水辺に、魚が泳ぐ姿を描いた文様のことです。中国元・明代に多く作られました。魚の中国語音が「余」に通じ富や豊かさを表し、「藻」は魚が隠れる場所で安全な家をを表すので、吉祥文となります。

透割山椒(すかしわりざんしょう)

<常滑焼>

黒部の山々の山菜は、春の香りを届けてくれます。深山の雪渓の雪の消え際は、常に春で、山野草や山菜が芽を出します。雅膳の一皿は、才巻海老と山菜の和え物です。

季節のうつわは「透割山椒」です。常滑焼で、四代山田常山の作品です。常滑焼は、日本六古窯の一つで、平安時代の後期に誕生しました。知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使っています。作品は、詫びた風韻と自然釉の味わいが見事な焼き締めで、料理が映えて使いやすい器です。