朴の木(ホオノキ) モクレン科

<大形で芳香がある>

朴の木(ホオノキ)は、宇奈月の山や平地に生えるモクレン科の落葉高木です。
高さ20mを越える高木は、樹皮が灰白色でまばらに分岐します。

大形の長楕円形の葉は、枝先の新しく伸びた部分に集まって互生しますが、束生しているので輪生状にも見えます。
芳香のある葉は殺菌作用があるため、おにぎりやお餅、ちらし寿し等、食物を包むのに用いられました。また肉厚の葉は、落ち葉になった後も火に強いので味噌や他の食材を載せて焼く器代わりにも使われています。

花は大形で芳香があり、輪生状の葉の真ん中に1個だけつけます。
栃の木に蔓性の植物がよく寄生するのに対し、朴の木にほとんど見られないのは、他の植物を排除する物質を分泌する他感作用を示すためだと考えられます。

雪椿(ユキツバキ) ツバキ科

<落葉樹林内で開花する雪椿>

雪椿は、宇奈月の山地の落葉樹林内に、群落をつくって自生するツバキ科の常緑小高木です。本州の日本海側の多雪地帯に多く分布し、ツバキの亜種として取り扱われています。

宇奈月では5月ごろ、僧ヶ岳登山道の樹林内で多く見られ、樹形は降り積もった雪に押されて直立できず、背が低く分枝が盛んに行われます。
花は平開 するので藪椿と見分けがつきます。
木々を覆う雪が解けると赤い花を付け、残雪の白に美しく映えます。

丸葉青梻(マルバアオダモ) モクセイ科

<白い細かな花をつける丸葉青梻(アオダモ)>

丸葉青梻は、宇奈月の低山で見られるモクレン科の落葉高木で、高さが5mから15mになります。

樹皮は灰色で若枝には腺毛があります。葉は長柄の奇数葉状複葉で対生します。新梢に円錐花序をつけ、白色線形の4弁の小花を多くつける。葉は名前に反して丸くなく縁に鋸歯がほとんどないので、鋸歯のある青梻と見分けがつきます。

青梻は国産バットに利用されます。富山県南砺市のバット生産量は全国の4割を占めます。

桐(キリ) キリ科

<桐は古くから家紋に使われています>

桐は、宇奈月の山地に生える落葉高木で、高さが8mから15mにもなります。
古い時代に中国から入ってきて、材は軽くて美しく良質なので各地で栽培されました。
主に和箪笥や琴、下駄など用途が広く身近な木材です。

葉は、対生し大型の広卵形で、粘り気のある毛が密生します。樹皮は灰白色です。
枝先に淡紫色の花を円錐状に多数つけます。
花は長さ5から6cm筒状鐘形で秋には果実を付けます。

桐は意匠化され、「五七桐花紋」「五三桐花紋」として家紋に使われています。
桐は鳳凰の宿る木として神聖視され、菊のご紋に次ぐ高貴な紋章とされました。
五七桐花紋は日本国政府の紋章として、五三桐花紋は皇宮警察本部や法務省で使われています。

栃の木(トチノキ) トチノキ科

<宇奈月の深山に聳えるように成長する栃の木>

栃の木は、黒部峡谷沿いや温泉街の近くの宇奈月谷沿いに、多く見られるトチノキ科の直幹性の落葉高木で、高さ30mにもなります。宇奈月栃の森は、江戸時代に加賀藩によって植林され、大切に守られてきました。栃の実は、飢饉の際の大切な食料になるので伐採を禁止されてきました。

陽射しを遮る大きな葉は、5個から7個の奇数の葉が掌状に集まった複葉です。中央の葉が最も大きく最大で40cm位になり、端になるに従って小さくなっていきます。 枝先に直立する15cmから25cmの円錐花序を作り、その枝側に径1.5cm位の花を多数つけます。花弁は4個で白色で中央は淡紅色を帯びます。秋には丸い実ができて落下します。その殻の中に栗に似た赤褐色の種子があり、地元では栃餅や栃粥として食べます。渋に含まれるアクを取るのに、真竹を焼いた灰を使います。

朴の木と栃の木を、見分けるには葉を調べます。朴の葉は、枝先の新しく伸びた部分に集まって互生しますが、束生しているので輪生状に見えます。栃の葉は 掌状なので違いが判ります。

仁清色絵藤絵向付

<甘い香りの山藤>

宇奈月の山々に藤の花が下がるようになりました。
花に近づくと甘い香りが、漂い初夏の訪れです。
涼やかな夏野菜が出てきました。それぞれ優しく含め煮にしてあります。

季節のうつわは「仁清色絵藤絵向付」です。
藤の花が美しく描かれています。

谷空木(タニウツギ) スイカズラ科

<田植えの時期に花開く谷空木>

谷空木(タニウツギ)は宇奈月の日当たりのよい山野に生えるスイカズラ科の落葉低木です。 地元では田植えの時期に咲き始めるので、田植え花ともいいます。

葉は対生して長楕円形で、葉脈がはっきりして縁には鋸歯があります。 5月初旬、新枝の先や葉腋に散房花序を出して複数の花をつけます。 花冠は淡紅色の筒状鐘型で、上部がしだいに膨らんで先は5裂しています。

織部糸巻角皿

<織部角皿>

富山湾に蜃気楼が現れる頃になると、桜鱒が遡上の準備を始めます。
富山湾の沖合には、生まれた黒部川を目指して南下してきた桜鱒が定置網にかかります。雅膳の一皿は桜鱒の木の芽焼きです。

桜鱒は、雪融水で川が増水すると宇奈月周辺まで遡上し、産卵までの間は深い淵に潜んでいます。外気温が下がり、山々が色付いてくると産卵を始めます。

季節のうつわは「織部糸巻角皿」です。
掻き落としの溝には、織部釉が溜まり緑色に発色します。
瑞々しい黒部の新緑に合った器です。

雪笹(ユキザサ) ユリ科

<群生を作ることが多い雪笹>

雪笹(ユキザサ)は、宇奈月の落葉樹林に生えるユリ科の多年草です。

葉は卵状楕円形で互生し、裏に粗毛があります。花は、やや斜上した頂部に円錐花序を付け、純白の小さな花が多数斜めから横向きに開きます。秋になると赤い実を付け、虫食いの照り葉と共にお茶花として用いられます。

葉の形を笹に見立て、花は雪に葉を笹に見立てたことが和名の由来となっています。小振りの下蕪の花器に、単独で生けても美しく貴賓があります。

垣通(かきどおし) シソ科

<草むらに可憐に開花するカキドオシ>

垣通(カキドオシ)は、宇奈月の山道の草叢に生える蔓性のシソ科の多年草です。

花は、淡紫色で小さな唇形花で1個から3個つけます。 茎葉はシソ科特有の香りがあり、細い毛がつています。花が終わると 節から根を出してしっかりと固定して、蔓を伸ばして増えていきます。

茎がよく伸びて垣の間を通って増えることから、和名の由来となっている。