色絵白菊向付

<重陽のお造り>

9月9日は、重陽の節句です。重陽の節句は平安の初めに中国より伝わりました。古来中国では、奇数は縁起が良い陽数で、陽数の最大値である9が重なる9月9日を「重陽」と呼び、節句の1つとしました。

菊は、仙境に咲く霊薬として、邪気を払い長寿の効能があるといわれていました。別名「菊の節句」とも呼ばれ、菊を身近に感じる日でもあります。

9月7日から二十四節気の白露に入り、秋めいてまいりました。富山湾の魚介類が一段と身がしまり、味も濃くなります。匠膳のお造りです。

季節の器は、「色絵白菊向付」です。菊を愛でる「観菊の宴」もいいかもしれません。お酒は、ひやおろしのぬるめの燗がおすすめです。

釣舟草(ツリフネソウ) ツリフネソウ科

<深山に咲く、赤紫色の艶やかな花>

釣船草(ツリフネソウ)は、宇奈月の山中の木陰の湿った所に自生するツリフネソウ科の一年草です。

茎は、多汁質で瑞々しく直立してよく分岐し帯赤色で節が太くなります。 葉は、広皮針形で先は尖り細かい鋸歯がつきます。 夏から秋に茎の上部から細長い花序が伸び総状花序となり、それぞれ数個の花を付けます。 赤紫色の花は小花柄をもち基部には小さな苞をつけます。 花の形が船がぶら下がっているような形なのでこの名前がつきました。

果実は、触ると勢いよく飛び1年草の種族を増やす工夫がなされています。 秋の朝露に濡れた紅紫色の花は、静まりかえる深山にひときわ艶やかな色彩を呈しています。

色絵菊絵小判形向付

<重陽の節句の器>

重陽の節句には、菊を愛でる器を使います。双方に描かれた大輪の菊花は宴に華を添えます。揚げ物は蓮餅です。

季節のうつわは「色絵菊絵小判形向付」です。菊をあしらった器は数多くありますが、どれも美しく収まります。

田村草(タムラソウ) キク科

<秋の草原には欠かせない花です>

田村草(タムラソウ)は、宇奈月の亜高山の草地に自生するキク科の多年草です。

茎は直立し、大きいもので高さ150cmになります。葉は羽状で切れ込みが深く、刺がありません。9月から10月にかけて、茎や枝の先に薊に似た頭花を付けます。頭花は紅紫色の多数の筒状花からなり、くびれた花床から広がる形は実に美しく、秋の山野草の中では最もすっきりとした容姿です。

宇奈月の山地では一時数が少なくなりましたが、周りのイタドリやヨモギなどの大形の草を除去しながら日当たりを確保することで、数が少しずつ増えています。秋の草原にはなくてはならない山野草です。

草露白(くさのつゆしろし)

<朝夕の川風が冷を含むようになる>

9月7日から二十四節気は「白露」となります。白は日本人にとって雪を連想させますが、日本文化に深くかかわっている中国伝来の五行説では、白は秋の色とされています。「白露」は、秋が本格的に到来し、草花に露がつくようになるという意味です。朝晩の気温差が大きくなると露が降り、ようやく残暑も終わりとなります。江戸時代の暦の解説書である暦便覧には「陰気ようやく重なり露凝って白し」とあります。

七十二侯は「草露白(くさのつゆしろし)」で、「白露」の初侯となります。夜間に空気中の水蒸気が冷却され、草に降りた露が白く光って見える頃という意味です。早朝、山道を行くと草露に足下が濡れます。行き会いの空は鰯雲に覆われ、冷たさを含む黒部の川風に一段と秋の訪れを感じます。黒部川扇状地では実りの季節を迎えます。夏の陽ざしを受けて大きく成長し色づいた稲が、収穫の時を待っています。

黄交趾菊花高台皿

<菊葉の刻印>

重陽の節句が近づくと、菊の器が必要となります。菊花の色も多くありますが中でも黄色が一番趣があります。花の中心に見たてて海老の揚げ物を。雅膳の滞在料理です。

季節のうつわは、「黄交趾菊花高台皿」です。交趾焼のうち黄釉が基調になっているのが黄交趾です。

秋桐(アキギリ) シソ科

<深山の林内にひっそりと咲いています>

秋桐(アキギリ)は、宇奈月の山林内に自生するシソ科の多年草です。

茎は基部が少し張って立ち上がり、高さが30~50cm前後になります。葉は対生して葉柄があり、葉身は三角状の鉾型で先が尖り、基部は少し左右に張り出しています。

花は青紫色で、茎の先に短い総状花序をだし、数個ずつ輪状に咲きます。額は1cmぐらいの筒状唇形です。花冠は基部が筒状で先は大きく2唇に開き、下唇は広くて3裂する。

和名の由来は、春に咲く桐花に似て秋に咲くので秋桐と名付けられました。

山鳥兜(ヤマトリカブト) キンポウゲ科

<雅楽の鳥兜に似ている>

山鳥兜(ヤマトリカブト)は、宇奈月の深山に生えるキンポウゲ科の代表的な多年草です。

地下に猛毒(アコニチン)を持った紡錘形の塊茎がある毒草で、茎の長さが1m以上になり、立ちあがって湾曲します。毒の強さは植物成分では最強で、天然の物ではフグに次ぐといわれています。全体に無毛で、葉は長い柄があり互生で切れ込みが深く、キンポウゲ科の特徴がでています。

茎の上方に円錐花序をつけ、鮮やかな青紫色は遠くからでも目立ちます。青紫の5個の萼のうち兜状の萼は肉質で、真ん中の2個は円形で内側に毛があり、下部の2個は小さくなります。和名は、花の形が舞楽で頭にかぶる鳥兜に似ている事に由来します。

花が終わると果実が、鳥の足のような形になります。鳥兜から取った毒薬をブス、ブシ、ウズとよび、河内地方に生える鳥兜をカワチブシ、京都北山に生える鳥兜を、キタヤマブシと呼んでいます。この毒を服用すると苦しみのあまり顔が歪むところから、ブスという言葉が使われたようです。

現の証拠(ゲンノショウコ) フウロウ科

<路傍に、ひっそりと咲く花>

現の証拠(ゲンノショウコ)は、宇奈月の山道の縁に自生するフウロソウ科の多年草です。

茎は地面を這うように伸び、葉柄をもった葉が対生につきます。夏から秋にかけて葉腋から花柄が伸び、茎頂は2裂し白色の可憐な花をつけます。宇奈月では白色が多く見られます。西日本では赤花、東日本、北日本では白花が多いようです。岡山県あたりが分岐になっているようです。

夏に陰干しにした茎葉を煎じて飲むと、薬効がすぐ現れることが和名の由来となっています。医薬品として認定されています。別名「医者いらず」ともよばれ、ています。下痢止めや健胃整腸薬となります。

焼締・急須形土瓶蒸

<鱧の出汁が美味しい>

秋の気配が感じると、土瓶蒸しが欲しくなります。松茸と鱧の土瓶蒸しで、秋を味わってください。

土瓶に松茸、鱧、海老、鶏肉、三つ葉、銀杏などの具と、だし汁を入れて蒸します。猪口に酢橘を絞りお召し上がりください。

季節の器は、「焼締・急須形土瓶蒸」です。