四葉鵯花(ヨツバヒヨドリバナ) キク科

<亜高山に咲く四葉鵯花>

四葉鵯花(ヨツバヒヨドリバナ)は、宇奈月の亜高山帯の草地や林縁に生えるキク科の多年草で、別名は車葉鵯(クルマバヒヨドリ)ともいいます。

茎は直立して分岐せず高さは100cm前後になります。葉は長楕円形で3~4個が輪生して葉柄がなく鋭い鋸歯があります。茎頂の散房状花序に淡紅紫や白色の頭花を密に付けます。各頭花は管状花からなります。

和名は、葉が4個輪生し、鵯の鳴く頃に開花することに由来します。

髪剃菜(コウゾリナ) キク科

<登山道沿いの咲く髪剃菜>

髪剃菜(コウゾリナ)は、宇奈月の登山道沿いに見られるキク科の越年草です。

茎は、高さ30~70cmとなり上部で分岐し、全体に剛毛があります。。葉は倒披針形で互生し、上部の葉はだんだん小さくなって基部が広く茎を抱きます。枝の先に黄色の舌状花ばかりからなる頭花をつけます。花柄は長く総苞は長さ1cmぐらいで筒鐘状です。果実は紡錘形で赤褐色を帯び、痩果の冠毛は羽毛状です。全体に褐色の硬い毛があり、触るとザラつきます。

和名は、硬い毛を髪剃りにたとえたことに由来します。

深山唐松(ミヤマカラマツ) キンポウゲ科

<柔らかな淡緑色の葉と淡紅色の花は貴賓があります>

深山唐松(ミヤマカラマツ)は、宇奈月の深山の湿り気のある林の縁に生えるキンポウゲ科の多年草です。

細くて硬い茎は、30~80cmになります。根生葉は一株から一枚出て2回、3回3出複葉で長い柄があります。小葉は長楕円形で浅裂し質は薄く、下葉は粉白色で縁には鈍い鋸歯があり、葉先は徐々に細くなります。 茎葉は2~3枚付き、上部のものは単葉となります。

唐松草より小形で、葉柄の基部に托葉がないので見分けが付きます。花は茎頂に散房状につき、白色で希に淡紅紫色の花も見ます。

土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)

<見ごろを迎えた球紫陽花>

7月27日から七十二侯は「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」で、二十四節気「大暑」の次侯となります。溽暑(じょくしょう)とは湿気が多く、蒸し暑い状態のことを表します。梅雨の湿気を帯びた大地に、強い日差しが照りつけて蒸し暑くなる頃という意味です。例年この時期が梅雨明けとなります。

今年の梅雨明けは、もう間もなくですが連日猛暑が続いています。溽暑(じょくしょう)の日が続くと雪解けが進み、黒部奥山の雪形は日々小さくなります。その雪解け水は宇奈月ダムに湛水され、うなづき湖となります。その雪解け水が、ダム直下にある宇奈月発電所の発電機を回します。発電所から出される水は黒部川本流となり、黒部川扇状地を潤します。

富山県内では連日猛暑日が続いていますが、早朝の宇奈月温泉は冷気を含んだ川風が心地良く、爽やかに早朝ウォークができます。コースの山彦遊歩道では球紫陽花(タマアジサイ)の開花が始まりました。球状の蕾を包む苞が外れ、中から額紫陽花が現れます。
日本海側の豪雪地帯に多く見られる品種で、薄紫色の両性花は涼やかさを届けてくれます。蕾の形が和名の由来となっています。

唐松草(カラマツソウ) キンポウゲ科

<托葉があるのが唐松草>

唐松草(カラマツソウ)は、宇奈月の亜高山で谷から冷たい風が吹き上げる稜線の草原に生るキンポウゲ科の多年草です。

茎は高さが70cm前後で直立し、唐松草の仲間では大型で、無毛で蝋のような感触です。 葉は、3出羽状複葉で3~4回分かれています。小葉は倒卵形で3浅裂し、葉質は薄く裏面は緑白色で短い葉柄があります。 イタドリの繁みの中で、葉に陽光が当たると美しい柔らな萌黄色が浮かび上がります。

花は、茎の先端や枝先につく複散房状の花序につき、蕚片が広楕円形で開花後落ちます。 雄しべは多数あって花糸は白色で棍棒状に膨らみ唐松ように見えます。 これが和名の由来となっています。

緑釉筏長角皿

<鰈の西京焼き>

初夏は、鰈が美味しくなります。さっぱりとした西京焼きがお勧めです。富山湾で獲れるカレイの仲間にはヒレグロ、アカガレイ、マコガレイなどがあります。ヒレグロやアカガレイは水深200m前後に生息するので、底引き網やごち網で漁獲されます。マコガレイは比較的浅いところに生息し、お刺身がお勧めです。

季節のうつわは「緑釉筏長角皿」です。紐状の粘土を束ねて筏状にします。緑釉の濃淡は宇奈月の青山に相応しく、合わせて涼しさも感じさせます。

玉川杜鵑(タマガワホトトギス) ユリ科

<草叢の中に生えるホトトギス>

玉川杜鵑草(タマガワホトトギス)は、宇奈月の深山の湿り気のある木陰に自生するユリ科の多年草です。 萌黄色の葉と黄色の花のコントラストが美しく、宇奈月僧ヶ岳登山道の落葉樹林縁で見かけます。

葉は、広楕円形で先が尖り、基部は茎を抱き、葉脈がはっきりしています。7~8月、茎頂に散房花序を出し黄色の花をつけます。花柄には腺毛が密生し花の内側に紫紅色の小斑点があります。杜鵑の胸のあたりの模様に似ているところから和名が付けられました。

冠の玉川の由来は、京都木津川支流の玉川で、 玉川堤は、山吹の名所として知られ、奈良線の玉水駅の近くにあります。 古くは奈良時代に遡り、橘諸兄がこの近くに邸を構え、万葉集に山吹を数多く詠っています。平安時代には歌枕の地となり、玉川と言えば山吹を連想するようになりました。 黄金色を山吹に見立て、玉川を連想して和名を付けるところは、日本人の自然を愛しむ心の現れです。

浅葱交趾渕銀波向付

<富山湾産の黒鮑>

梅雨が明けると富山湾のアワビ漁が本格化します。主な漁場は滑川から以東で、特に魚津、入善、朝日の転石地帯に多く、潜水で漁獲されます。富山湾の東側は、早月川、片貝川、黒部川などによって運ばれた巨大な石が沈んでいます。雅膳の一品は、蒸しアワビです。

季節のうつわは「浅葱交趾渕銀波向付」です。海の色を思わせる浅葱色は、料理を爽やかに引き立てます。

鵯花(ヒヨドリバナ) キク科

<アサギマダラが好む鵯花>

鵯花(ヒヨドリバナ)は、宇奈月の山路や日当たりの良い草原などに生えるキク科の多年草です。

茎は高さ1mから2mと大きく全体にざらつきがあり、紫色の細点があります。葉は対生し、卵状長楕円形で縁に鋸歯があります。初夏、茎頂に白色、稀に帯紫色の多数の頭花を散房状につけます。鵯の鳴くころに開花するのでこの名前が付きました。アサギマダラが好む花です。

アサギマダラは、浅葱色(青緑色)が美しい蝶で、春から夏の初めにかけて本州の1000m以上の涼しい高原地帯で繁殖します。鵯花に集まるのはほとんどがオスです。オスは性フェロモン分泌のために、そこに含まれる毒性のピロジジンアルカロイドの摂取が必要と言われています。

移動中に白いタオルを振りかざすとよく集まってくる面白い習性を持っています。この習性を利用して一時的に捕獲をして、翅のマーキングを見てどこから飛んできたのか調べます。秋には南下を始める興味深い蝶です。

花乳茸挿(ハナチダケサシ) ユキノシタ科

<赤升麻よりも小型>

花乳茸刺(ハナチダケサシ)は、宇奈月の深山の樹林の縁に生えるユキノシタ科の多年草です。

本州の中部地方の山地や亜高山の樹林内に分布する日本固有種です。分類上は赤升麻(アカショウマ)の変種とされ、茎が赤いという赤升麻の特徴が良く出ています。葉は、赤升麻同様互生し3回3出複葉で、小葉は卵型で縁には重鋸歯があります。茎先によく枝分かれした円錐花序を出し、白色の小花を数多くつけます。その甘い臭いに誘われて多くの虫達が群がります。

チダケとは茸のことで、傷をつけると白い乳液が出るので乳茸とよばれています。和名は、茸を本種の茎にさして持ち帰ったことが由来となっています。