片栗(カタクリ) ユリ科

<落葉樹林内でひっそり咲く片栗の花>

片栗(カタクリ)は、宇奈月の落葉樹林内で群生するユリ科の多年草です。雪が解けた落葉樹林内で冷たい風に揺れながらひっそりと咲いています。

「万葉集」では堅香子(カタカゴ)の花として詠われ、かつては鱗茎から片栗粉を取り出したのが名前の由来です。『物部(もののふ)の 八十少女(やそおとめ)らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花』(万葉集第十九巻4143)と大伴家持が万葉集で詠んでいます。

大伴家持は、新しい元号「令和」の出典「梅花の歌」の詠み人、大伴旅人の子供で、国司として5年間越中に赴任しています。越中の国衙が置かれていた場所は、現在の高岡市伏木古国府、浄土真宗本願寺派の古刹「雲龍山勝興寺」のあたりです。

その古刹の北側に伏木神社があり、神社の西側に「万葉寺井の址」が残されています。待ちわびた北国の春に思いを寄せる家持の目には、清水を汲みに井戸に集まる乙女たちの笑い声と、その乙女たちを象徴するように咲いている堅香子(かたくり)が重なって見えたのかもしれません。

落葉樹の葉が広がり、樹林内の陽光が弱まると片栗の姿が瞬く間に消えてしまいます。まさにスプリング・エフェメラルです。

越の小貝母(コシノコバイモ) ユリ科

<落ち葉の間から顔を出す、越の小梅母>

越の小貝母(コシノコバイモ)は、宇奈月の日陰の山の斜面に生えるユリ科の多年草で日本固有種です。早朝ウォークのコース内の雪解けの斜面で見かける花です。周辺には菊咲一華も見られます。宇奈月の自然の豊かさに驚かされます。

宇奈月で見られる物はやや小さく、茎の長さは5cmから10cmぐらいで直立に伸ばし、上部に細長い無柄の葉を対生させ、さらにその上に小さな葉を3個輪生させます。茎頂に淡黄色の広鍾形の花が下向きに一輪つきます。

分布は、越の国(山形県南部から敦賀まで)の日本海側で、これが名前の由来となっています。この可憐な花は、立山や白馬周辺に見られるクロユリに一番近い植物で学名のFritillariaは、さいころを入れる筒の意味です。花の形から命名される事は海外でもよくあります。

貝母とはアミガサユリの鱗茎を乾燥させた生薬で、漢方処方に用いられます。これらのユリ科の植物はバイモ属として分類されています。

木五倍子(キブシ) キブシ科

<早春の宇奈月谷で開花するキブシ>

木五倍子(キブシ)は、早春の宇奈月谷でよく見かけるキブシ科の雌雄異株の大形落葉低木です。藤のような花序に黄花が付くので黄藤(キフジ)ともいいます。


前年の秋に枝の葉腋から総状花序をたらし、出葉前の4月ごろに一面に開花します。花は鐘形で雄花は淡黄色で雌花はやや緑色を帯びています。


和名は、秋に熟す緑黄色の果実を染料の原料である五倍子(フシ)の代用として使ったことに由来します。朝山歩きをすると自然の息吹が感じられます。

岩団扇(イワウチワ) イワウメ科

<雪が解けた岩場に咲く岩団扇>


岩団扇(イワウチワ)は、宇奈月の深山の岩場や落葉樹林下のやや湿ったところで見られるイワウメ科の多年草です。

雪が解ける頃、葉脈から花茎が伸びて一輪の薄紅色の花をつけます。葉は円形で端は小さな鋸状で、基部が深くはハート型となっています。春山登山で岩場の上部から岩団扇の花が回転しながら落下するのを目にすることがあります。

和名は、岩場に生え葉は革質で厚く光沢があり、形が団扇に似ていることによります。宇奈月温泉では町の花として親しまれ、宇奈月音頭や宇奈月小唄にも歌われています。



丸葉満作(マルバマンサク) マンサク科

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丸葉満作(マルバマンサク)は、宇奈月の山地に生えるマンサク科の落葉低木です。日本海側に多く分布します。

残雪多い山の斜面でひっそりと細い花を咲かせます。花は、花弁が4枚で黄色く細長いひも状です。がくは赤褐色で花全体が周りにとけ込んで見つけずらいです。

雪の重みで曲げられても折れない粘りの強い材は、地元では和カンジキに用いられてきました。雪国ならではの知恵です。

和名は、春まず咲くのと葉先が丸くなっていることに由来します。ただし花の咲く頃は葉がまだ出ていなくて、葉が開く頃は花が散っているので、両方同時に観察することができない植物です。

猩猩袴(ショウジョウバカマ) ユリ科

猩猩袴(ショウジョウバカマ)は、宇奈月の落葉樹林内の湿り気の多い斜面や湿原に生えるユリ科の常緑多年草です。宇奈月の亜高山の湿地帯ではやや小ぶりのものを見ることができます。

花は、花茎の上方に半開で淡紅色の六弁花を複数付けます。葉は倒披針形で根茎上にロゼット状につきます。

猩猩とは頭の毛が赤く猿のような顔をした中国の伝説上の動物です。和名は、赤い花を猩猩に見立て、ロゼット状に広がる長い葉を袴に見立てて付けられました。まさに宇奈月の早春賦です。

菊咲一華(キクザキイチゲ) キンポウゲ科

<菊咲一華(キンポウゲ科)>

宇奈月の原野の雪が解け始めると、すぐ開花するのは菊咲一華(キクザキイチゲ)で、キンポウゲ科の多年草です。菊に似た花を一輪つけることからこの名前が付きました。

宇奈月では白や淡紫色の花が多く、まれに淡紅色も見られます。暖かくなると花が開き、夜や雨の時は気温が下がるので花を閉じます。

上部に三枚の苞葉が輪生し、深く切れ込んだ葉はキンポウゲ科の特徴が出ています。多雪地の山地で普通に見られる可憐な花です。落葉樹林内でもよく見かけます。